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パブリックアートとのもっと楽しい関係

/第1回共同リサーチ:あなたの住んでいる場所の近くにあるパブリックアートVol.4

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高橋幸世 バンクーバー、カナダ
day
2008-04-18
 

<人とつながるパブリックアート>

 今回の共同リサーチで見えて来た、パブリックアートの一つの問題点に「アート作品が街の中に何の説明もなく唐突に現れたり、また一過性のお祭り騒ぎの結果として何らかのアートが設置され、地域の人々との結びつきがないために無視されたり、忘れ去られたりしていく」といったことがありました。共同リサーチに参加してくれたメンバーの一人は、こうした問題点に取り組む試みの例として、東京都墨田区向島地域で実施されている「路地琴プロジェクト」というアート・プロジェクトをレポートしてくれました。

(写真1)軒先にやってくるアート

(写真2)このアートには「使用法」の札も

 「路地琴」というのは路地に設置できる据え置き型の水琴窟のことで、特別に細工のされた瓶にひしゃくで水を注ぐと、水滴がまるで琴を奏でるような美しい音をたてるという伝統的な環境音装置とのこと。向島の路地のあちこちにこうした昔ながらの密やかな音響アート装置を設置して、音の散歩を楽しみながら向島の町並みを再発見してほしい、というのがこのプロジェクトの目的だとのことです。

(写真3)音との戯れ「路地琴」

 このムーブメントの面白いところは、一方的にこのオブジェを設置するというのではなくて、そこに住む人たちにプロジェクトの主旨をまず説明して、賛同してくれた町会や商店会、個人の参加によって設置場所を一緒に検討していくという点です。また、一つ一つの水琴窟にはその場所の歴史や日常生活を反映した図柄を採用したレリーフが取り付けられるのだそうです。

 パブリックアートの設置の段階からその地域の人々を巻き込み、アートを設置しないという選択肢も含めてアートの地域への付加価値を一緒に考えていこうとするこうした試みは、街と人とアートの関係をより深いものにしていく試みとして注目すべきものだと言えるでしょう。このような丁寧なプロセスを経て街と人とがつながっていく中で生まれるパブリックアートは、地域の人たちに守られ、愛され、育てられ、街の一部として長く息づいていくのではないでしょうか。

(写真4)路地の日常に溶け込むアート


<街の鏡としてのパブリックアート>

 今回のリサーチに参加してくれたメンバーの多くは、日頃あまり関心を持っていない「パブリックアート」というテーマに少しとまどいながらリサーチをスタートし、手探りで情報を集めたり、実際にアートのある現場に出動してじっと人々の行動を観察したり、ランチタイムに同僚にさりげなく聞いてみたり、いろんな(科学的・非科学的な)方法でパブリックアートと人との関係を探ってくれました。そうした形式も方法もまちまちなレポートから見えて来たのは、実はパブリックアートという切り口から覗く「街/人/アート」の現実でした。

 パブリックアートはその名前の通り、パブリック=公共性、民衆と関わる営みですから、設置の側面だけ見てもそこには行政やコミュニティー、地域振興や公共の利益といったものがどうしても関わってくるわけで、アート自体の芸術性という項目以外に、無数の利害や思惑が交錯してはじめてそこに現れる、特殊なアートのあり方だと言うことができます。それだからこそ、パブリックアートを透かしていろんなものが見えて来るのです。

 パブリックアートが提供する「自由な空間」はポジティブなものもネガティブなもののどちらにも開かれているので、場合によってはホームレスのねぐらになるかもしれないし、人々に愛される街の憩いの場所になるかもしれない。それはそのアートが置かれた環境、つまり「街/人/アート」のあり方次第なのです。

 あなたの身近にあるパブリックアートをちょっと観察してみると、あなたの「街/人/アート」の姿が鏡に映されたように浮かび上がるかも知れません。パブリックアートを、街のこと、コミュニティーのこと、人と人とのつながりのことなどをちょっと考えてみるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

<おわりに>

 今回の共同リサーチではパブリックアートとそれを巡る人々との関係の、ほんの小さな部分をちょっとだけつついてみるくらいのことしかできませんでした。非科学的で統計論的にも説得力の無い、手探りの第一回実験リサーチでしたが、パブリックアートという都市のツボから街と人とを再考することの可能性がここからほんの少しでも見えて来たとしたら嬉しい限りです。

 レアリゼの共同リサーチはまだ始まったばかりで、リサーチのテーマも方法も試行錯誤の段階ですが、今回集まった8名のメンバーのレポートからもいろいろな視点・観点が見えて来て、これから参加メンバーの分母がどんどん増えて、それが世界中に広がっていったら、もっともっと面白いことになるのではないか、というそんな予感を覚えた共同リサーチ第一回でした。

 今回の実験リサーチに関するご意見・感想等をぜひぜひレアリゼにお送り下さい。

(写真5)街と人とをつなぐパブリックアート


Vol.1 あなたの住んでいる場所の近くにあるパブリックアート
Vol.2 パブリックアートと人々の関係
Vol.3 パブリックアートの使い方

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