今回のリサーチは、環境や人権という視点から始まったのですが、オイルについて「健康」という側面から関心を持つメンバーも多くいました。環境と健康とを追及することは一見矛盾がなさそうですが、「パームオイル」を通じて違う側面も見えてきました。「健康」について、より広い視野を持って考える必要がありそうです。
1.オイルと健康
今回のリサーチを通じて、パームオイルが健康へ与える影響についての情報が交錯しており、人や場所によってまったく正反対のイメージが持たれていることが分かりました。
一方では、パームオイルは健康に良いというイメージがあります。これはパームオイル由来の食品がトランス脂肪酸を含まないためです。トランス脂肪酸は植物油に多く含まれる不飽和脂肪酸に水素を添加する時に副産物として生じ、マーガリンやショートニングなどに多く含まれています。これは多量に摂取すると悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らしてしまうため、動脈硬化の要因になると言われています。脂質の多い食習慣の欧米諸国ではトランス脂肪酸のリスクが広く知られるようになっており、規制や表示義務が導入されている国や地域もあります。
最近までカリフォルニア州に住んでいたメンバーによれば、当地ではトランス脂肪酸を多く含む大豆油食品を家庭やレストランから追放し、パームオイルを原料とした食品に転換させようとする大々的なキャンペーンが張られていたそうです。欧米ほど脂質を摂取しない日本では、トランス脂肪酸の弊害はまだあまり注目されていませんが、ファストフード店としては素材にこだわった路線で知られるモスフードサービスは、トランス脂肪酸を避けるため、揚げ油を切り替えました。その油にはパームオイルが使用されています。
また食品だけでなく、洗剤や化粧品でも健康面からパームオイル使用の製品を選択する人もいます。メンバーから、パームオイルが「肌に優しい」という販売戦略が消費行動に与えてきた影響も無視できないという指摘もありました。
それに対して、パームオイルは健康に悪いという認識も広がりつつあります。前回述べたように動物脂と同じくらい飽和脂肪酸の多いパームオイルには、心臓疾患などの健康リスクがあることが指摘されているのです。カナダに住むメンバーは、パームオイルは「身体によくない」というイメージを持ち、なるべく避けてきたそうです。
また、同じメンバーが教えてくれたのは「北米では以前、ココナッツオイルは体によくないが、安いのでクッキーなどに使われるという認識が一般的だったが、最近はどういうわけか、ココナッツオイルが体に良いというプロモーションが盛んに行われている」そうです。
どうやら「健康」という言葉が企業の販売プロモーション戦略として利用され、世界の消費者がそれに踊らされている面も否定できないようです。

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