Group Reaearch

back
prev_btnnext_btn
title

「もったいない」と文化~小さな自然を守るために~

/第4回共同リサーチ:世界のもったいないものVol.6

leader from from
三沢健直 松本市
day
2008-10-11
 

エコロジカル・ニューディールとは?

 日本で、「もったいない」に対して他の論理が優先されている例として典型的なのは、「要らない道路」でしょう。

 東京のメンバーが報告したのは、国立市の青柳崖線から湧き出る「ママ下湧水」です。湧水量の多さと、大都市近郊にありながら周囲を水田と雑木林に囲まれたのどかな風景が残されていることでも有名で、東京の名湧水57選にも選ばれています。

 しかし、4年程前にこの湧水の真上を通るバイパスが建設されました。現在湧水の中心にあたる部分の真上には大きな橋が架かっています。市民から反対の声が多数寄せられたため、湧水は修復工事がなされ、その周囲も公園として整備はされましたが、ひどく人工的で殺風景で味気ない場所に変わってしまいました。新たに建設された4車線の広い道路には大して交通量もなく、貴重な自然と武蔵野の原風景を壊してしまったことは非常にもったいないことです。

 地方では相変わらず車の通らない新しい道路が増えているようですが、こうした道路の建設は公共事業頼みの田舎に限らないようです。たとえば、圏央道の日の出インターとあきる野インターの間はわずか2キロしか離れておらず、本当に必要性があったのか疑問視されています。

湧水の周りの風景1

湧水の周りの風景2

湧水の真上に架かった橋

橋の下のママ下湧水

湧水上の4車線道路


 この問題を解決するために、関良基さんという研究者が“エコロジカル・ニューディール”という政策を唱えています。
(http://blog.goo.ne.jp/reforestation/e/00ef55942ad85be40a707a7e5d546684)

 これは「明らかに経済波及効果が無くなっている「道路」と「ダム」という二つの無駄な公共事業費を可能な限り削減し、浮いた予算を、持続可能な未来社会を建設するための戦略的な環境プロジェクトに重点的に振り向ける」もの。

 純粋に経済波及効果という尺度で考えてみても、道路建設より環境保護のほうが効果は大きい、という指摘が正しいとすれば、こうしたもったいない道路がいつまでも作られ続けるのは、建設業者を養うためと、一度計画するとそれを変更することの出来ない行政の硬直性によるものかもしれません。エコロジカル・ニューディールというのは、「もったいない」に対して、同じ尺度での「もったいない」を対置させる戦略ですね。

 似た問題として、土地所有権を持たない先住民族にとって聖地のような大切な場所を、政府や企業が土地所有権を盾にして強引に開発してしまう例は、世界でも数多くあります。しかし、今回の報告にはありませんが、カナダやオーストラリアのように多文化主義を掲げる国では、このような先住民の権利を保護する法律が制定され、政府や企業の開発に歯止めがかかる仕組みができています。

「もったいない」と文化

 一度壊してしまえば元に戻すのが難しい「自然」に対する畏敬の念を持つことも、このような「もったいない」ことを避ける方法の一つかもしれません。日本語の「もったいない」という言葉には、神聖なものを汚すような「忌まわしい」という意味が元々あって、そのような宗教的・文化的な感覚が薄れてきたことが、もったいないことが多くなってきた要因であり、文化な教育が必要ではないか、という意見もありました。

 確かに、カナダのメンバーからも、アイルランド移民たちが、食べ物を「もったいない」という言葉を使うときには、最初の世代の移民たちが苦労した文化的・歴史的な背景が込められているというという意見がありました。

 ただ、例えば米粒を残してご飯を食べることを「忌まわしい」と感じるような感覚は、中国などでは残っているのに対して、日本人からは薄れつつあるようです。この感覚は、文化的な教育の結果というよりも、実際に食べ物が足りないという経験の影響のほうが大きそうです。

 それに、もったいないこと自体が、宗教的・文化的な理由で行われることもあります。例えば、ドイツのデュッセルドルフから報告された、クリスマスツリーのために毎年切り出される大量のモミの木です。


 クリスマスシーズンにヨーロッパに滞在した経験のある方はご存知だと思いますが、かなりの巨木がこの日のために切られて、2週間程度で捨てられてしまいます。他の国から来た人にはかなり勿体ないと感じるものですが、キリスト教文化の人々にとっては、やめられないことなのでしょう。これは「もったいない」に対して、宗教的・文化的な論理が優先されるケースです

 ただしドイツでは、地域によっては「モミの木回収日」が定められ、地方自治体が回収してガーデン用のチップや有機肥料になったり、象のエサになったり有効活用されているそうです。家具店のIKEAでは、ツリーの回収を行っているそうです。イースターの焚き火として使うこともあるようで、これは日本の門松がどんと焼きの材料になるのに似ていますね。ちなみに、今回のリサーチで、門松の松というのは、それ専用に栽培しており、最近では中国からの輸入物もあるというミニ情報を知りました。

地域の財産=小さな自然

 先住民の権利保護と少し似ていますが、例えば樹齢何百年というような巨木は地域の人々にとって心の拠り所になることもあるので、私有地にあるからといって、権利者が勝手に切って良いものではないと思います。

 重要文化財の指定や、世界遺産、国定公園、景観保護条例など、いろんな形の保護の方法がありますが、上に挙げた泉のような小さなものは守ることができませんでした。地域の泉や巨木など、小さいけれど地域の人々にとって大切なものを保護する、より身近な制度が必要ではないでしょうか。

 読者の皆さんの身近にそんな制度があれば、コメントから教えていただければ嬉しいです。情報をお待ちしています。


Vol.1 「世界のもったいないもの」
Vol.2 食べ残しの持ち帰りがダメだって!?
Vol.3 カーシェアリング・カープーリングとは?
Vol.4 土に還る容器「生分解性プラスチック」とは
Vol.5 コミュニティガーデンという試み
Vol.7 家具や電化製品の交換(リユース)の仕組み
Vol.8 商品カタログ、ドレッシング
Vol.9 知識の伝承/価値とメディア
Vol.10 世界から消えゆく商店街

このエントリーをはてなブックマークに追加





member
クリエイティブ・コモンズ メンバー募集 メルマガ 受託型リサーチ レアリゼブックストア サポーター募集 twitter mixi face Flickr