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世界から消えゆく商店街

/第4回共同リサーチ:世界のもったいないものVol.10

leader from from
三沢健直 松本市
day
2008-12-01
 

 前回に続き、それが「もったいない」という自覚がない例として、フランス・パリ郊外のメンバーが挙げたのは消えゆく商店街です。

 理由の一つは、大型ショッピングセンターのもつ「大いなる資源の無駄」が商店街には少ないからであり、二つには、大型ショッピングセンターにはない商店街の良さがあるからです。例えば、ショッピングセンターの「もったいない」ポイントには以下のようなものがあります。

<大型ショッピングセンターの「もったいない」点>
 ・いらないものも買わせる構造になっている ⇨ 無駄な資源消費を促進
 ・土地をコンクリートで固めている ⇨ 周囲の極端な温暖化
 ・電力・水を大量に消費する
 ・大量の広告を定期的に配布する ⇨ 森林資源の消費・ゴミの増大
 ・鉄道の駅から遠いことが多いため、車の使用頻度をあげる 

 確かに、小商店や昔ながらの商店街には、こうした無駄が少ないのですが、ショッピングセンターのように、客を惹きつける魅力を磨けていないのかもしれません。しかし、ショッピングセンターの存在に負けていない好例も複数あります(例えば、東京の麻布十番商店街や、京都の有名商店街など)。ここではフランスの事例を紹介します。

フランス・オズワーラフェリエ市の商店街と朝市


:オズワーラフェリエ市は、パリ市から東に普通電車で30分ほど。森や田園地帯に囲まれた郊外で、人口は2万人ほど。

 車で15分圏内に、カルフール(Carrefour)を中心とした巨大ショッピングセンター地区がある。ここには、食料品、家具、洋服、スポーツ用品、オーガニック専門店など、全ての必要を満たすだけの大型店舗が集結していている。週末には、東京ドーム2つ分くらいの駐車場がほぼ満車になる。
 これらのショッピングセンターができてから、近隣の街では商店街が軒並み閉鎖に追い込まれているという。しかし、オズワーラフェリエの商店街は、いつでも活気がありにぎわっている。

 この差はなんだろう。
 一つには、市が積極的に環境整備や中小企業支援に取り組んでいる点がある。例えば、商店街の近くに遊歩道を設け、買い物ついでに散歩ができるようにしたり、朝市を開く広場を改装して心地よい空間にしたり、そうした工夫が見受けられる。これは、市の協力なくしてできることではない。

 もう一つには、大型ショッピングセンターにはない個人商店の良さをアピールする各店舗の努力がある。例えば、魚屋や肉屋は、価格はカルフールに比べて高いが、鮮度では絶対に引けを取らない。また流通ルートも透明で、消費者にとっては安心だ。実際にカルフールよりも商店街や朝市を利用している人に、その理由を聞いてみた。

・「市場は、買い物をしていて気持ちがいいから。カルフールは大きすぎて疲れるのよね。商店街をみんなで支えているっていう雰囲気も気に入ってるの。」(50代女性)
・「食料品は商店街で買ってるよ。カルフールよりも、商店街の方が、明らかに質がいい。」(40代男性)
・「結婚指輪をカルフールの宝石店で作ってもらったら、注文と違うデザインのものができあがってきた。直しを頼んだら、今度は裏に彫られていた結婚の日付が違ってたうえ、修理代を要求されたんだ。サービスに全く心がこもってないんだよね。それからは、少し高くても大事な買い物は個人の店ですることにしているよ。」(30代男性)

*******



 日本の商店街は長い間、大規模店舗の出店を規制する大店法に保護されていたので、努力することを怠っていた店舗もありそうです。そういう意味では、商店街だからといって必ずしも、すべて「もったいない」とは言えないかもしれません。ただし、商店街の潜在能力や可能性をも消えてしまうという意味では、やはり「もったいない」と言えそうです。
 上に挙げたフランスの例のように、サービスや商品の質の良さ、あるいはトレーサビリティの明確さなどで商店街をアピールする方法は、参考になりそうです。

浦安市のフラワー通り

 日本からは、浦安市のメンバーが、フラワー通りについて、報告してくれました。
 漁業町として栄えた浦安は、東西線の開通とともに大型スーパーマーケットに商店が吸収され、旧市街の商店街は衰退しました。現在も、フラワー通りの商店街は次々と閉店に追い込まれているそうです。
 今回メンバーは、市民団体の「ぶらり浦安ガイド」の会長である、山崎勝哉氏と、メンバーの草場聖子氏にお話をお聞きしました。

 山崎氏によると、新しく浦安市へ移住してくる人たちの中には、若い世代を含め、故郷を持たない人が多く、漁師町の面影を強く残す元町地区を、自分の故郷として盛りたてたいという機運が高まっているそうです。フラワー通りは、元町地区の中でも、かつて「浦安銀座」と呼ばれた古きよき浦安のシンボル的な場所で、特に、外から浦安市に越してきた人の中から、フラワー通りに活気を取り戻そう、漁業町としての趣を保存しようという動きがあるそうです。
 商店街にある正福寺や「どんぐりころころ」というギャラリーのオーナーが中心となって、写真展や音楽ライブなど、様々なイベントが行われています。また、2001年に開設された浦安市市民活動センターには、2008年2月現在125の市民団体が登録されていて、このうち3割弱が、「まちづくり・地域づくり」の活動に関わっているそうです。

行政との協力(BIDという仕組み/アメリカ)

 衰退した古い商店街には、しばしば「まちづくり」に関心がない大家・地主が居るケースが多いので、商店街機能を新たに創出するための行政との協力も有効かもしれません。ニューヨークのメンバーからは、BID(Business Improvement District)について、報告がありました。BIDは、日本のTMO(Town Management Organization)の参考にされた機能ですが、地権者に対して強制力を持っているところがTMOとの大きな違いです。

 BIDは、徴税権限を持っており、定められた地区内の不動産所有者やビジネスオーナーから徴収した資金を財源とします。BIDは地域者によって設立される民間団体ではありますが、市のDepartment of small business services(SBS)の強力なサポートによって成立します。権限を持つために、市長や市議会議員が参加するボードメンバーの監視に基づいて運営されます。

 主な活動は、1)衛生サービス(道の掃除や落書除去などの清掃&メンテナンス)、2)セキュリティサービス、3)マーケティングサービス(レストランガイドの作成やイベントの開催)、4)景観サービス(花や木の植え付け、ゴミ箱の購入や、木のフェンスの設置、看板や公園の修復)などの四つです。
ただし、地域ごとに特徴があり、ニューヨークのFashion District BIDではFashion Exports/New York とUS Department of Commerceと協力して、New York Fashion Internationalを設立し、その機関が輸出入をサポートし、輸出を念頭に入れた出版物も発行しています(関連サイト参照)。

 BIDの活動が上手く行けば、不動産価格の上昇などが見込めるため、まちづくりに関心のない地権者も参加することが想定されますし、ニューヨーク市だけでも40を越えるBIDがあるそうです。

 ただし、BID設立の要件には、住宅地より商業地のほうが多いこと、空き店舗が20%未満であること、が含まれています。多くの日本の商店街は、既に商業集積地として回復不能なところまで来ていると言えるのかもしれません。

 そう考えると、単に商業集積地として商店街を復活させるということではなく、冒頭で挙げたように、大量消費の古い経済活動に対抗する、持続可能なオルタナティブな経済活動を実現する最先端の場所として、新たな商店街を構築することが求められているのかもしれません。


Vol.1 「世界のもったいないもの」
Vol.2 食べ残しの持ち帰りがダメだって!?
Vol.3 カーシェアリング・カープーリングとは?
Vol.4 土に還る容器「生分解性プラスチック」とは
Vol.5 コミュニティガーデンという試み
Vol.6 「もったいない」と文化~小さな自然を守るために~
Vol.7 家具や電化製品の交換(リユース)の仕組み
Vol.8 商品カタログ、ドレッシング
Vol.9 知識の伝承/価値とメディア

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