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伝統医療と補完代替医療 

/第5回共同リサーチ:健康であるためのオプション~世界の補完代替医療~Vol.2

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三沢健直 松本市
day
2009-04-30
 

 今回のリサーチに参加したメンバーは、なんと全員が何らかの形で補完代替医療を利用した経験がありました。さらに、ヒアリングに回答してくれたメンバーの友人たちも、かなり高い確率で補完代替医療を利用しています。

 「身の回りに、西洋医学の病院施設以外に、どのようなオプションがありますか?」の質問に対して、バンクーバーのメンバーは、次のように報告しています。

 「中医学クリニック(漢方および鍼灸治療)、マッサージセラピー、指圧、カイロプラクティック、ホメオパシー。また、ホリスティックうんぬん…などという名前の下に、各種マッサージやエナジーワーク(レイキというのと同じようです)、メディテーション、食事療法、カラーセラピーなどをやっているところもあります。
 自然療法(naturopathy)クリニックというのもあちこちに。(これは解毒detoxificationや食事療法など、全般的な体の健康を指導するらしいです。鍼灸やハーブ療法などと組合わさっていることが多いようです)
また、予防という意味ではヨガが非常にさかんです。」

 一方、フランスのメンバーからは、友人たちが複数の代替医療サービスを自分なりに使い分けている様子が報告されました。
 例えば、ロンドン在住のある友人(46歳、女性)は、「ヨガ、食事療法、灸」を利用するそうですし、フランス在住の友人(34歳、女性)は、「鍼とピラテス」を利用しているそうです。またオランダ在住の別の友人(60歳、男性)は、「ホメオパシーと太極拳」を利用していているとのこと。

 もはや世界の至るところで、補完代替医療が利用されているようです。もちろん、これらの「代替医療」は、まったく玉石混交で、効果があるもの、効果が実証されていないもの、効果がないことが実証されているもの、有害で危険なものも含まれています。それにも拘らず、「代替医療」は、世界の人々の生活に、かなり浸透しているようです。

 ちなみに、2006年に京都大学大学院医学研究科健康増進・行動学の研究員が熊本県小国町町民3501人に対して行ったアンケートでは、約57%が何らかの代替医療を利用している、というデータがありました(参考サイト参照)。

 これだけ多くの人が「医療」として利用し、かつ危険も潜んでいる領域について、社会はもう少し真面目に検討する必要がありそうだと感じました。本稿では、様々な補完代替医療を単にリストアップするのではなく、その可能性や問題点について考えながら、健康と病気の新しいイメージを探っていきたいと思います。

伝統医療と補完代替医療の違い

 漢方薬や整体などの中国医術やインドのアーユルベーダなどは、西洋医学が入ってくる以前から受け継がれてきた伝統医療です。世界の補完代替医療の多くは、そのような伝統医療が、元々の地域だけでなく他の地域にも広がったものが多いようです。しかし、伝統医療は、補完代替医療と同一というわけではありません。

 今もなお世界の途上国には、現代的な医療施設が身近に存在しない、あるいは保険制度がないために高価で普通の人は利用できないという地域も多く、そこでは伝統的な医療が、補完代替医療としてではなく、主流の医療として実践されています。
 ラオスのメンバーが、一般的に利用される薬草を紹介してくれました。

 「バンソンという草は、手首・足首の捻挫に効果があり、通常は葉を焼いて患部に貼り付けると、2、3日で治ると言われています。


 バンホンジョラケと呼ばれる、上の写真の薬草は火傷の治療に使われ、濡らして患部に貼り付けます。」

 ラオスの伝統的な薬草で、多くの人が家の周りに植えているそうで、おそらくロカイの一種のようです。ロカイは漢方でも使われ、日本でも「医者いらず」の別名を持っています。

 そのような伝統的な知識の中には、確かに効能があるものと、気休めに過ぎないものが混在しています。人々は伝統医療を、他に選択肢がないから利用しているのです。

 したがって、地域に現代的医学が拡がるとともに、伝統的医療は主流の座を離れますが、完全に消滅はせず、現代的医療を補完するものとして利用されるようになります。

アーユルベーダ

 インドのアーユルベーダは、薬草とオイル・マッサージとを利用した伝統医療です。インドのメンバーが体験談を報告してくれました。

 「疲れていた時にアーユルベーダのシロダーラという、おでこに油を垂らすトリートメントと全身オイル・マッサージを受けました。リラックスはできましたが、1回しかしてもらっていないので効果の程は分かりません。ただ、長い間足にできていた小さいブツブツがこの後すっかり直ってしまいました。」

 アーユルベーダは、日本ではエステの技術のように理解する人も多いようですが、本場のインドでは伝統医療として、広く受け入れられています。アーユルベーダの施術をするためには、政府公認の大学で学ぶ必要があるなど、政府公認の医療サービスで、多くの公立病院で治療を受けられます。州によっては、大きな公立病院で保険の適用される場所もあるようです。

 メンバーによると、デリーなどの都会では富裕層・インテリ層などが利用していて、高級ホテル内のアーユルベーダ・センターなどは庶民には到底利用することができない値段だそうです。これは、一見すると上に挙げたラオスの例とは違って、数ある医療オプションの一つのように見えます。
 しかし、多くの貧しい庶民は保険も入っておらず、基本的な医療施設も医師も不足しています。インドにおけるアーユルベーダも、補完代替というより、主流医療の一つと理解して良さそうです。つまり、健康であるためのオプションがないための選択です。

 十分な医療設備のない地域で、あらゆる種類の病気に立ち向かう伝統医療は、その地域では必要な医療ですが、気休め的な治療も多く含まれるはずで、全面的に信頼するのは危険です。むしろ、健康のためのオプションの一つとして利用される場合に、その知や技の効力が本当に理解される可能性があるのでないでしょうか。


Vol.1 第5回共同リサーチ「健康であるためのオプション~世界の補完代替医療~」
Vol.3 運動療法 
Vol.4 カイロプラクティック、整体、マッサージ
Vol.5 針灸治療
Vol.6  漢方薬
Vol.7 ホメオパシー?
Vol.8 レイキ?
Vol.9 補完代替医療の特徴
Vol.10 補完代替医療の可能性(最終回)

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