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針灸治療

/第5回共同リサーチ:健康であるためのオプション~世界の補完代替医療~Vol.5

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三沢健直 松本市
day
2009-05-16
 

 前回まで、メンバーがしばしば利用する、運動療法や整体・マッサージ・カイロプラティックなどについて報告しました。今回は、針治療について報告します。

針灸治療

 日本に住むメンバーの一人は、唇に謎の炎症ができて、12の病院を廻っても解決せず、結局漢方や鍼治療を行っているそうです。メンバーの報告を引用します。

 「口腔外科や皮膚科、形成外科、ペインクリニック(麻酔科)に行ってもさっぱり原因が分からず、整体師や漢方、鍼灸院でようやく原因が分かった次第です。」
 「はっきりと申し上げますと、私自身は西洋医学に対して不信感を募らせています。今回治療して頂いている分野に関しては、西洋医学の医者と東洋医学の医者では反応が正反対です。西洋医学の医者だと、どこの医者でも「分からない、今までに見たことがない症状だけど、たぶんこうだろうからなんとなくやってみる」という感じでした。
 大学病院でも、手探りだというのが見え見えなのです。それに対し、東洋医学は体全体のバランスで考えるので、少し体に触れたり舌診(特に漢方の先生は舌の状態で体のすべてを把握する)をしたりしながら、ここをこうしたらこうなる、ということを分かりやすく解説して下さります。もちろん先生によりけりですが。」

 不安を抱えながら12もの病院を廻るのがどんな辛い気持ちだったかと考えると、少なくとも今は安心して生活できているのだから、良かったのかもしれません。ただ、客観的に考えると、人間は神ではない以上、医学で病気の原因が分からないことは何も不思議ではありません。また、それでも何とか直したいと医師が考えれば、類似の病気に効果がある薬を試行してみようと思うのも自然です。むしろ中国医学で主張される「経絡」には、科学的に根拠がないにも拘らず、病気の原因を特定したと説明するのは問題がある気もします。

 ところが、プラグマティックに考えると、別の見方もできます。このメンバーが、この先も不安を抱えながら病院を廻り続けるのと、針灸院で安心して治療を受け続けるのと、どちらが幸せなのか、ということです。12の病院を廻ったということは、既にかなりの難病であることは間違いないでしょうから、この先も簡単に治癒しない可能性が高そうです。だとすれば、今後の問題は、「病気を如何に治すか」というより、「病気と供にどのように生きていくのか」、と変わっているのではないでしょうか?

 この例から、通常医療を補完代替医療がどのように補完する可能性があるか、一つのアイディアをもらえます。それは「病気と供に、より良く生きる技術」の領域です。

 日本では、寝たきりになる人の数が非常に多いことが、以前から問題視されてきました。これは、病因を取り除くことだけを考え、その病気が治った後や、あるいは治らなかった場合の患者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)に対する意識が不足しているので、離床とリハビリテーション(運動療法)の開始が遅いことが原因とされます。

 上のケースでも、もし医師が冒頭に、医療とはどのような性質ものので、その処方にどんな選択肢があり、そのすべてを試しても治らない場合、他にどんな選択肢があるか、丁寧にメンバーに説明していれば、不安を抱えたまま12もの病因を廻ることはなかったのかもしれない、という気がするのです。

 最後に出てくる「他の選択肢」には、おそらく体質改善を主な効能とする補完代替医療が入ることになりそうです。例えば、食事療法、漢方療法、温泉療法、などなど。これらは直接病因を取り除くのではなく、健康な身体を作ることによって長期的な治癒を目指す方法です。

 現在の日本の医療では、病気が治癒しない場合の選択肢について、医師が何の指針も与えないために、患者自身が考えなければなりませんが、これは危険と隣り合わせでもあります。今回のケースで、メンバーがたどり着いた針灸治療については、神経痛や麻痺、依存症などに効果があるとされています。しかし、他の伝統医療と同様、すべての疾患に効果がある訳ではなく、気休めに過ぎない領域も少なくありません。
 
 ただし、医療崩壊が叫ばれる今日、命に関わらないすべての病気に丁寧なインフォームド・コンセントを求めるのは難しいことかもしれません。

 ところで、通常の医療のなかで、補完代替医療の研究が最も進んでいるのは、がん治療(緩和ケア)の分野のようです。病気が治らない場合にどうするか、ということを最も真剣に考えるのが、この分野で働く医師たちだからかもしれません。

問題点

 インドのメンバーの報告を引用します。
 「肩こりがひどかったので、中国で針の治療を受けました。最低でも3回は受ける必要があると言われましたが、滞在期間が短かったので1回しかできず肩こりはほとんど治りませんでした。ただし、針を刺してもらっている間は気持ちよかったです(中国の針はしばらく刺したままにして、時々ぐいぐいと刺しなおします)。」

 取りまとめ人の知人も腰痛の治療に針治療を受けましたが、「鍼を刺している間は気持ちが良いが、効果が持続せず、治癒もしなかった」と教えてくれました。

 また、一部の針灸医はカイロプラクティックと同様、「長期的な効果の論理」を利用するために、治療が長引き、結果として非常に高価になることが、本場の中国でもしばしば批判の対象となっているようです。これは、一部の代替医療に共通する問題のようです。例えば、インドのメンバーもアーユルベーダについて、次のように言っています。

 「特に、長い間わずらっていたけれども解決策が見つからなかった病気や、物理的な手術が必要でない時には試す価値があると思います。けれども、治療期間が長いのでその分費用もかさみます。」

 日本では、針灸治療は、医師の処方がある場合に保険が適用されます。しかし、ある医師に聞いたところ、実際には医師から針灸を推薦するというより、患者が針灸医の作成した推薦状を持参し医師のサインを求めることが多いようです。


Vol.1 第5回共同リサーチ「健康であるためのオプション~世界の補完代替医療~」
Vol.2 伝統医療と補完代替医療 
Vol.3 運動療法 
Vol.4 カイロプラクティック、整体、マッサージ
Vol.6  漢方薬
Vol.7 ホメオパシー?
Vol.8 レイキ?
Vol.9 補完代替医療の特徴
Vol.10 補完代替医療の可能性(最終回)

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