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レイキ?

/第5回共同リサーチ:健康であるためのオプション~世界の補完代替医療~Vol.8

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三沢健直 松本市
day
2009-06-04
 

 前回は、玉石混交の「代替医療」の中でグレーゾーンにあるものとしてホメオパシーを取上げて、その可能性について検討しました。今回は、補完代替医療と民間信仰/新興宗教との間にあると言えそうな「レイキ」を取上げます。

レイキ

 カナダの北西部で「レイキ(霊気)」を良く見かけるとの報告がありました。イギリスでもかなり広がっているようです。レイキとは、手を当てることで病気を治療するというもので、Wikipediaにリンクされているサイトに次のように書いてあります。

 「霊気とは、優れた神聖な宇宙エネルギーのことですが、レイキヒーリング(霊気療法)は、その霊気とつながることにより、触れたものなどすべてを癒すヒーリング技法です。」

 文字通り理解するなら、医療というよりも民間信仰と言ったほうが良さそうです。体調の悪い人の背中をさすったり、手を握ったりということは、古来より人々が実践してきたことですが、レイキは、そのような古来の知恵とは様子が少し異なります。

 レイキでは、背中をさするようにではなく、軽く触れるように当てるらしく、実際にヒーラーを名乗る人に聞いたところ、直接手を当てなくても効果があると言うのです。
 「治療者と患者が離れた場所にいても、同じ時間に患部に手を当ててエネルギーを送ると、症状が緩和される、患部が温まる」とのこと。

 メンバーの一人も、この「遠距離ヒーリング」を受けた経験がありました。以下に報告を引用します。

「設定した時間に自宅のベッドで横になってゆっくりしてくださいと言われたのですが、その前に食器洗いを終わらせようとしているうちに時間が来てしまいまし た。その瞬間、頭頂部がボッとガスコンロの火がついたような感覚があって「いま始まった」と明確に感じたので急いでベッドに向かったのを覚えています。その後は特に何かを感じるということもなくうとうとして時間が過ぎました。指圧を受けたときと同じで目に見えるような変化があったわけではありませんが、なんとなく体は温まっていたと思います。」

 何かの後で、決まって別の何かが起きるとき、人は、その二つの間に因果関係があると理解する傾向があります。しかし、注意深く検討してみると、因果関係の推量には、しばしば錯覚が含まれます。最初のケースで、手を当てた患部が温まったのは、患者自身の手の温度によると考えるのが自然でしょう。
 このような錯角を、心理学用語では「関連性の錯誤」と言います。詳しくは下の参考本『超常現象をなぜ信じるのか』をご一読ください。

 後のケースの、「頭に火のついたような感覚」は、心の働きによるものと考えられそうです。人の心(精神)には、とても奥深い働きがあって、腕が上がらなくなったり、風邪のような症状になったり、色んな形で体に働きかけてきますし、自分の意識を欺くことも稀ではありません。人は日常的に自分の心に騙されているものです。

 このような心の働きを上手く利用して、人を暗示にかける技術というものが昔からあって、それが催眠術のような形で利用されてきました。
 この二つのケースでは、両方とも、「時間を決めて、それを待ち受ける」というシチュエーションが、意図的に作られています。これは、人が暗示にかかりやすい状況だと言えそうです。頭に火がついたような感覚というのは、暗示によるものと考えると説明がつきそうです。

 しかし、暗示や錯覚を利用しているからといって、即座に代替医療ではないとは言い切れません。心理学や精神分析の知見を基に実践されている心理療法(サイコセラピー)の中には、暗示を利用して人々の心の底に潜む問題を探し出し、解決に導く方法があります。*

 取りまとめ人も、ヒーラーを名乗る知人から実験的に遠距離ヒーリングを受けることになっていて、直前にキャンセルされてしまったのですが、あの日のことを思い出してみると、遠くにいる誰かが自分のことを祈ってくれるという感覚は、人に凄いパワーを与える可能性があると感じました。複数のレイキサイトで、「ヒーラーが何人かで同時にエネルギーを送ると効果が高い」と書いてあるのは、この励ましの効果を指しているのだと思います。

 とりわけ、「自分に価値がない」、「生きている資格がない」というような想いに囚われている人にとって、複数の人が時間を決めて自分にエネルギーを送る、という状況は、確かに効果がありそうな気もします。薬物依存症などのカウンセリングをグループで行う場合には、互いに励まし合う効果が期待されているようですし、それとも共通点があるかもしれません。

 イギリスでは、医師が承認すればレイキも各種セラピーと同様に医療保険の対象となるようなのですが、イギリスのメンバーによると、「レイキもカウンセリングの一種と理解されているように見える」とのことでした。また、カナダのメンバーによると、レイキを提供する人はマッサージや食事療法などの治療を行う人が多く、それらを心理的な効果から補完するものとして利用されているようです。

問題点

 心理療法的なセラピーの補助ツールとして、心因性の軽い症状であれば何らかの効果があるかもしれないレイキですが、社会的な副作用とも言えるような問題があります。日本で乱立し始めているレイキサイトを見ると、「糖尿病や生活習慣病に効く」などと書いてあるサイトがありますが、本気で信じた人が病院へ行かず、レイキなどで治そうとすれば、命を危険に晒すことになります。

 イギリスのメンバーによると、レイキなどの各種セラピーを医療保険の対象とする代わりに、そのような補完代替医療を施すことができる資格を設けることで、治療レベルを一定に保つようにルール化しているとのことです。一方日本では、まったく野放し状態になっていて、現状ではとても補完代替医療とは言い難い状態です。

 最近では、「あなたもすぐにレイキマスターになれる」、のようなWEBサイトが氾濫しています。誰でもレイキを使えるようになる2~3日の研修があって、費用は1日30000円~60000円程度のようですが、心理療法(サイコセラピー)の勉強をしたわけではなく、たった数日間のレイキ研修を受けた人が皆、一定のレベルの技術を身に付けられるものでしょうか?現状では、研修を主催している人のなかに、リーズナブルな霊感商法として実践している人がいたとしても、まったく区別はつきません。

 日本ではレイキが心理療法と切り離された形で広がっているために、ネットを検索しても新興宗教/民間信仰的な色彩を感じさせるサイトが多く、非合理的な思考が蔓延する様子には不安を感じざるを得ません。

 レイキのようなものが流行るのは、互いに支えあうような人間的なコミュニケーションやスキンシップが、私たちの社会から欠如していることの証左かもしれませんし、この方法で救われる人が居るからこそ、広がっているのでしょう。しかし、このような方法がもし本当に必要なのだとしても、あくまで方便として、現実を良くわきまえた宗教者や心理療法家などによって、社会的に管理された形で行われるべきではないでしょうか。

 日本では、心理療法/カウンセリングの国家資格が未だに制定されず、身近なオプションになっていませんが、その不作為の影響について考えてみることもできるかもしれません。

*催眠などの暗示を利用した心理療法が、過去の記憶を捏造してしまうケースも報告されています(偽記憶症候群)。下の参考本によると、心理療法によって想起された「幼児期の性的虐待」の記憶に基づいて親が告訴され、家庭が崩壊してしまった事例のなかで、虐待が実在しないケースのあることがアメリカで社会問題化しているそうです。(6月15日追記)


Vol.1 第5回共同リサーチ「健康であるためのオプション~世界の補完代替医療~」
Vol.2 伝統医療と補完代替医療 
Vol.3 運動療法 
Vol.4 カイロプラクティック、整体、マッサージ
Vol.5 針灸治療
Vol.6  漢方薬
Vol.7 ホメオパシー?
Vol.9 補完代替医療の特徴
Vol.10 補完代替医療の可能性(最終回)

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