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補完代替医療の可能性(最終回)

/第5回共同リサーチ:健康であるためのオプション~世界の補完代替医療~Vol.10

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三沢健直 松本市
day
2009-06-17
 

 これまで9回にわたって、補完代替医療について検討してきました。今回はそのまとめとして、補完代替医療の今後の可能性について考えます。

 補完代替医療の特徴としてホリスティック/全人的医療という言葉をご紹介しました。それは、単に伝統医療の復権や通常医療の否定ではなく、スポーツや食事、バカンスなど「人生を楽しむ」ことの中に医療を位置づけることではないでしょうか?補完代替医療は、通常の医療とバカンスを仲介するものなのかもしれません。

通常医療との統合

 これまで見てきたように、医療としてみた場合の補完代替医療には、怪しげなものや危険なものが多く潜んでいます。しかし、通常の医療で治癒しない場合に、患者が少しでも可能性を求めて補完代替医療に向かうことは止められませんし、心理的な効能も完全に否定はできないでしょう。

 しかし、どんな代替医療を選択するか、患者自身が考え、施設を探し、問題がないか判断するのは非常に労力が要りますし、危険なことでもあります。そのような場合に、人々が危険な方向に行かないように医師が指示を出す、補完代替医療への入口となる、そんな形になってくれると良いのではないでしょうか?

 理想の補完代替医療施設・サービスについてメンバーに尋ねたところ、最も多かったのは、通常の医療と補完代替医療の双方の治療を受けられる施設です。フランスと日本のメンバーから同じような提案があったので引用します。

「理想は、西洋の医療知識とそれ以外の東洋医学や民間治療知識を兼ね備え、各個々の状態に合わせてミックスして治療方法を選んでくれるスーパーなミックス医療サービス施設があればよいと思います。」

 ただし、そのためには、補完代替医療についての研究がさらに進む必要がありそうです。アメリカでは、多くの人が通常医療よりも補完代替医療を利用しているという調査結果を受け、その安全性を研究するために、アメリカ国立衛生研究所(NIH)に、アメリカ国立補完代替医療センター(NCCAM)が設置されています。現在では1億ドル以上の予算が充てられているそうです。日本でも、1998年に日本補完代替医療学会(当初は日本代替医療学会)が成立し、通常医学の医師たちが研究を行っていますので、今後の研究に期待したいです。

補完代替医療の社会的な管理

 ホメオパシーやレイキなどの疑問符のつく手法が、一部の国で健康保険の適用になっていることから、効果が保証されているとの意見がありますが、いずれも医師の診察が必要であり、針灸治療の回でも触れたように、それを持って治療的な効果があることの証明にはならないでしょう。

 むしろこれらが、通常医療の心理療法的な補完や、緩和ケアの一部として位置付けられていると理解するほうが良いのではないでしょうか?人々が代替医療を求める気持ちを止められない以上、日本のように完全に野放しにする状況より安全かもしれません。

 しかし一方では、それらの非合理的な側面にも、お墨付きを与えられたと理解する人が増えるという社会的副作用があり、難しいところです。

心理療法(サイコセラピー)

 前回挙げた精神科/心療内科と隣接する領域として、心理療法/精神療法(サイコセラピー)という分野があります。Wikipediaによると、心理学では心理療法、精神医学では精神療法と呼ぶようです。似たものとしてカウンセリングがありますが、セラピーは病的状態を治療することを指し、カウンセリングは、より軽度な心的問題の解決をサポートすることを指すようです。

 最近では、「何とかセラピー」というと、怪しげなものも少なくないのですが、本来のサイコセラピーは、心理学や精神分析の知見に基づいて行われる方法です。心理学や精神分析の一部については、科学的ではないという批判もあります。心理療法が虚偽記憶を捏造してしまう問題も指摘されていますが、基本的には合理的な思考に基づくものと言えそうです。

 しかし、日本には心理療法に関する国家資格は存在しません。今のところ財団法人「日本臨床心理士資格認定協会」が認定する「臨床心理士」が最も知名度が高く、医療機関でセラピストとして勤務するためには、臨床心理士の資格を必須とすることが多いようです。

 今日、怪しげなセラピストが急増している原因の一つに、心理療法(サイコセラピー)の国家資格が制定されていないために、民間が制定する類似の資格が乱立していることも挙げられそうです。先進国では、衛生状態や栄養の状態は改善されているため、むしろ心理的な問題を抱える人が多いはずですが、誰でもセラピストを名乗れる現在の日本の状態は、そのような多くの人を怪しげなセラピストに追いやっていると見ることもできるかもしれません。

 心理療法士(セラピスト、カウンセラー)が、今より身近な存在となって、精神科医や医師と連携をとって治療や相談に乗ってくれるような仕組みができることを期待したいものです。

予防専門施設(補完代替医療のヘルスセンター)への期待

 カナダのメンバーから、「予防と目的とする専門施設」が欲しいとの声を引用します。

「生活習慣や食事習慣、精神的なバランスなどを全人的に見渡してアドバイス(あるいは予防としての施術)してくれる場所が日本にもあればいいなと思いました。病気になってから行く場所ではなくて、定期的に訪れてライフスタイルや健康状態を相談できるような専門の、国の認定を受けた施設が、街のあちこちにあったらかなり病気を予防できそうな気がします。」

 病気になってから対応する病院ではなく、病気にならないようにする健康院のようなもの、スポーツ施設と医療の中間にあるような施設があると良いかもしれません。
 また、「補完代替医療のヘルスセンター」が欲しいとの声もありました。

 「理想の理想、夢の夢ですが、世界中のいろいろな代替医療の設備、スペシャリストが揃っていて、楽しみながら体験したり、勉強できるような場所があればいいと思います。

 実際、興味はあってもどこへ行けばいいかわからない、どのような効果があるのかはっきりしないなどで、その代替医療を始めることを躊躇している人はたくさんいると思います。そういった人に向けて勉強会や講習会、体験イベントなどがあるととりかかりやすいのではないでしょうか。

 また、そこに医者とセラピストが組んで患者と面談し、その人の趣向や希望、必要な治療にあわせてさまざまな代替療法の中からプログラムを組んで、治療に当てるというコースなどもあればいいと思います。」

「補完代替医療士」の創設

 いろんな補完代替医療を集めてヘルスセンターを作る、というアイディアとは別に、いろんな補完代替医療の技術をマスターした技術者を増やす、というアイディアもあります。
 カイロプラティック、整体、マッサージの回で述べましたが、類似の技術にも拘らず、それぞれの流派の技法に拘り、共通の評価基準もなく、技術者のレベルにばらつきが激しいのは、消費者にとって利益がありません。

 カイロプラティック、整体、各種マッサージ等のマッサージ系の技術に加え、運動療法や食事療法等のすべてを学べるような2年~4年程度の専門学校を設立し、卒業者に「補完代替医療士」の資格を与えてはどうでしょうか?

 そのような「補完代替医療士」と上述の「心理療法士」が揃えば、補完代替医療の治療施設として申し分ないでしょう。上に挙げた予防専門施設も運営できそうですし、怪しげな人々を排除して、一定の技術レベルを確保することで、通常医療との連携も可能になりそうです。

 また、日本では市民体育館や水泳プールなどの施設は比較的充実していますが、高価なジムなどを除けば、マッサージなどを受けられる場所はありません。運動もやり方を間違えるとかえって関節や筋肉を傷めることにもなりますから、「補完代替医療士」が常駐すれば、健康施設としてさらに充実すると思います。

 病気のための施設(病院)だけでなく、健康のための施設(健康院?)が身の回りに増えれば、健康のためのオプションがさらに増えて行きそうです。もちろん、そこで施術される補完代替医療は、信頼できる研究機関でよく研究され、専門機関によって安全性を十分確保された上で提供されることになります。

 第5回共同リサーチは、今回で最終回です。これを読んで、補完代替医療のヘルスセンターを作ろうと思い立った行政の方がいたら是非ご連絡ください。喜んで世界の補完代替医療についての情報をお伝えします。

 次回の共同リサーチのテーマは、「多言語教育の現状と課題」です。お楽しみに。


Vol.1 第5回共同リサーチ「健康であるためのオプション~世界の補完代替医療~」
Vol.2 伝統医療と補完代替医療 
Vol.3 運動療法 
Vol.4 カイロプラクティック、整体、マッサージ
Vol.5 針灸治療
Vol.6  漢方薬
Vol.7 ホメオパシー?
Vol.8 レイキ?
Vol.9 補完代替医療の特徴

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