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チャリティーの文化

/第7回共同リサーチ:チャリティーとは~寄付やボランティア行為を『ジブンゴト』に Vol.1

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江崎絢子 オレゴン州ポートランド市
day
2010-12-23
 

 2004年のインド洋沖津波、2005年のハリケーンカトリーナ、そして最近の例では今年1月のハイチ地震、この夏のパキスタン洪水など、大規模な自然災害は世界中で話題を呼び、チャリティー団体の活動や人道的支援にスポットライトがあたります。一方で、このような被災地支援への寄付やボランティア参加の呼びかけが盛んなのは最初のうちだけで、メディアの報道が少なくなるにつれて人々の興味も薄れていく、という声もあります。

 ハイチ地震の被害者支援に対する寄付活動について、各地のレアリゼのメンバーから次のような報告がありました。

「携帯電話のテキストメッセージで簡単にできる募金で多くの寄付が集まった。」(カナダ)
「地理的な近さもあり、メディアの反応も大きく、関心度も高かった。」(アメリカ)
「ハイチ支援関係のチャリティーを装った詐欺も現れ、問題になった。」(イギリス)

写真1:ポートランド市(アメリカ オレゴン州)のある店先に貼られていたハイチ地震被害者支援を呼びかけるサイン。「集まった寄付金はMercy Corps Internationalに送られます。」

写真2:バンクーバー市(カナダ ブリティッシュコロンビア州)で売られていたマンゴー味のジュース。「収益100%がHaiti Hope Projectに還元されます。」


 しかし、世界各地で注目を集め、ボランティア希望者の引受先が不足するほどの支援を集めたハイチ地震に比べ、2010年7月のパキスタン洪水被害者への支援活動は資金不足に悩み、多くの団体が緊急に支援の増加を求める声明を発表しました。
 日本赤十字社の2010年8月25日に発表された声明では、次のように述べられています。

 『日本では、地震に比べ洪水への寄付は集まりにくい傾向にあり、この度のパキスタン建国以来の人道危機に対する活動資金が不足しています。今回の洪水被災者は、1,700万人と、今年初めのハイチ大地震(被災者200万人以上)より多く、洪水による倒壊家屋は72万戸で、これは2004年のスマトラ島沖地震・津波災害(倒壊家屋は13カ国で47万戸)よりも大きな被害だと報告されています。』

プレスリリース【パキスタン洪水】日赤から医療チーム7名を派遣~被災者への支援が不足しています~http://www.jrc.or.jp/press/l3/Vcms3_00001757.html
*リンクはページ下部。以下同様。


 また、国際的に社会・環境問題への働きかけをする市民活動団体、Avaazは、以下の緊急アピールを発表しました。

 『パキスタンの5分の1が水面下にあり、何百万人もの人々が家を失い、緊急の支援を必要とする、恐ろしい規模の危機が起こっています。救援活動は始まっていますが、この巨大な災害に対する国際社会の反応の遅さ、少なさは無責任としか言いようがありません。国連は緊急に46億ドルの支援を求めましたが、まだその60%しかコミットされていません。

PAKISTAN FLOODS: STAND WITH THE PEOPLE! https://secure.avaaz.org/en/pakistan_relief_fund/?fp


 ハイチ地震発生後5週間のうちに The Chronicle of Philanthropyの統計対象になった48の団体が75億ドルの支援金を集めたのに比べ、パキスタン洪水発生から5週間後に行われた似た統計によると、32団体が集めた支援金の合計は25億ドルにとどまりました。

 ハイチの人口(10億人以下)の倍以上の被災者が人道支援を必要としているパキスタンの現状の酷さにも関わらず支援が少なかったのは、「死者の数」による印象だけを指標に寄付の必要度を決めてしまう支援者の心理が反映されていたようです。

New York Times(グローバルエディション)「The Special Pain of a Slow Disaster」http://www.nytimes.com/2010/11/11/giving/11AID.html?_r=2&ref=world


 「洪水被害者への支援が比較的少ない要因のひとつに、パキスタンの評判やイメージが関係する」、というレポートも見かけられました。人々がチャリティー活動に参加するきっかけには、自然災害や人道的危機に関するメディアの報道に加え、普段ニュースなどで目にする写真や記事による印象も、直接・間接的に影響しているようです。

 このことを踏まえ、今回のレアリゼ共同リサーチでは、チャリティーという選択肢や、その問題点を「ジブンゴト」として捉えるきっかけを探る目標で、以下のアンケートを実施し、国や文化によるチャリティーの捉え方の違いに関する現地情報を集めました。

アンケート:寄付・ボランティア行為に関する体験談、各国の事例

【アンケートの目的】
●信頼できる寄付先、ボランティア受け入れ先についてのいろいろな視点を学ぶ。
●短期的・長期的の両面から見る効率的な寄付・支援の仕方などに関するアドバイスや体験談を集める。
●寄付団体、ボランティア活動に関する情報のあり方、メディアの役割に関する意見を集める。 
●チャリティーという選択肢、さらにその効果や問題点を「ジブンゴト」として捉えるきっかけを探す。
レアリゼ第7回共同リサーチのアンケートは以下の通りです。(掲載のため文末など一部編集しています。)

あなたの国/コミュニティーでの寄付の現実

・あなたの周りで、定期的にチャリティー団体や非営利団体に寄付をする人はどのくらいいますか。
・あなたの地域で募金を集めている団体の主なタイプにはどのようなものがありますか。
・寄付を受け取る団体の信頼性を評価できるツールはどのようなものがありますか。
・あなたの国で、個人の寄付を奨励する税制の仕組みがある場合、それはどのようなものですか。

寄付行為に関するあなた自身の体験談、意見

・どんな手段で寄付をしましたか。
・寄付した金額はどのくらいでしたか?
・寄付した団体に期待することはありますか?また、満足、不満を感じたのはどんな時でしたか?

寄付行為に関するあなた自身の体験談、意見(寄付をした経験がない方)

・寄付をしたことがない理由について、次のうちどれがあなたの経験に一番近いと思いますか
 -信頼できる団体か判断できない。
 -寄付先が多すぎてどこにあげるのがいいのか分からない。
 -寄付をすることが 効率的な支援の仕方だと思わない。
 -しようと思ったことはあるが、実際にお金を出すには踏み切らなかった。
・これからもし寄付をするとしたら、どのような分野の活動を支援したいと思いますか。
・これからもし寄付をするとしたら、どのような指標で寄付をする団体を選びますか?

ボランティア活動について

・寄付をするかボランティアとして参加するか、選択肢があったとしたらどちらを選びますか。
・過去にボランティア活動に参加したきっかけは何でしたか。参加する活動はどのように選びましたか。
・これからもしボランティア活動に参加するとしたら、どのような活動を支援したいと思いますか。
・ボランティアを受け入れる団体の信頼性を評価できるツールはどのようなものがありますか。

メディアのあり方、影響について

・寄付先の団体やボランティア活動について、どのような媒体による情報が信頼できると思いますか。
・メディアの報道のあり方が、寄付やボランティア活動をしない理由の一つになっていると思いますか?
・どのような報道内容やメディアのあり方が、社会貢献活動を活性化させると思いますか?

問題意識について

・国際社会や地域社会の直面する様々な問題に対して、ご自身の問題意識はどのようなものだと思いますか?

(アンケート全文)
日本語:http://bit.ly/bA0zct
中国語:http://bit.ly/aD7UBj
英語:http://bit.ly/9UIUGc



 日本語、英語、中国語のアンケートあわせて集まった回答者数は60人。レアリゼのメンバーやソーシャルネットワークを通して、以下の14の国や地域からアンケートへの参加がありました。

アンケート回答者の所在地:
日本 32名 (東京都 18名、千葉県 2名、静岡県 2名、京都府 2名、愛知県 2名、 福岡県 1名、北海道 1名、埼玉県 1名、長崎県 1名、神奈川県 1名、その他 1名)、アメリカ 9名 (オレゴン州 4名、ロードアイランド州 1名、ワシントン州 2名、マサチューセッツ州 1名、ニューヨーク州 1名)、オーストラリア 4名、英国 3名、カナダ 3名、中国 2名、ルワンダ 1名、モザンビーク 1名、フィリピン 1名、ラオス 1名、レバノン 1名、台湾 1名、韓国 1名

 回答者のうち、「寄付したことがある」と答えた57名の大半が「お店や街頭」の募金箱などで直接寄付したと答えた一方で、オンラインでの寄付も半分近く(28名)が経験しているようです。チャリティー団体や活動に関する情報源も「各団体のウェブサイト」(39名)や「ニュースレター」(20名)のように、インターネットやEメールを利用したツールの使用が、「新聞記事」(30名)や「テレビ番組」(24名)と並んで使用されていることが伺えます。

ファンドレージングのいろいろ

 募金箱やオンラインでの寄付の他にも、チャリティー目的のファンドレージング(資金集め)の方法には様々なものがあます。

 「面白い企画でお金を集めているのに感心することが多々ある」という英国在住のレアリゼメンバーは、ある学校で子供達により行われた、サッカーくじについて、紹介しました。
 これは、サッカーワールドカップの優勝国を当てるくじを売り、売上金の一部をアフリカの貧しい子供達に寄付するという企画ですが、メンバーによると、「賭け事の企画が許されるのか?と驚いたが、学校公認で、お金を持って行く事も問題なく、皆で盛り上がり楽しみながらお金が集まっていた。」とのことです。

 また、英国ではマラソンやスカッシュアソン(スカッシュというスポーツをマラソンのように長時間続けてプレーする)のようなスポーツの企画で、特技を活かし、楽しみながらお金を集めるファンドレージングの例もよくあるようです。

 アメリカ、ニューヨーク州を拠点に活動する非営利団体コモン・センツ (Common Cents)は、ペニー・ハーベスト (Penny Harvest)という地元小学生が楽しみながらチャリティー活動に参加できるプログラムを行っています。

 ペニー(1セント硬貨)をハーベスト(収穫)する、というプログラムの名の通り、子供達(4歳〜14歳の児童が対象)が家で使われずに残っているペニーや近所の人から集めたペニーを学校単位で集め、「収穫」された寄付金は参加者代表が話し合って選ぶ非営利活動に送られます。

 コモンセンツは、1991年に当時4歳だったノーラ君がホームレスの男性に食べ物をあげたい、と彼のお父さんに相談したことをきっかけに立ち上げられたのです。ペニーハーベスト・プログラムを通して、子供達にチャリティー活動に参加する機会を与えると同時に、社会問題に関する教育や、募金活動のための近所の人々との交流など、様々な効果を生んでいます。

参考:
Common Centsウェブサイト www.commoncents.org
日本国際交流センター 毛受敏浩「1セントが寄付文化を育成する」http://www.jcie.org/japan/j/pdf/others/kiji/2010/kouekihoujin201004.pdf


写真3:使い勝手の悪い1セント硬貨は使われずにたまってしまうことが多い。


 また、チャリティー活動への動機に関連する、寄付の様々な方法には次のような例があります。

 一時期アメリカなどで、「流行」のファッションアイテム的ステータスを得たLIVESTRONGの黄色いリストバンドのように、寄付(商品の売り上げを通した募金)と引き換えにモノを手にする「おまけ付き寄付」は、一般的な寄付行為よりも、「ショッピング」感覚で気軽にできるチャリティーへの貢献を促すビジネス的なアプローチとも言えます。

 その逆に、寄付行為による支援とそれに伴う満足感、いい気分を友人や家族にプレゼントする「ギフト寄付」もあります。

 誕生日やアニバーサリーなど特別な日の記念に、また、贈られる人の趣味や情熱に関係するチャリティーへの寄付(例えば、犬好きの友人にアニマルシェルターへの寄付を贈るなど)を、誰かの名義で行い、その証明書(Certificate)やカードを贈ることにより、気持ちを表現するものです。

 近年では、Facebookなどのソーシャルネットワーキングサイトを通して、自分の誕生日に友達に『今年はモノのプレゼントの代わりにこの団体に寄付してください』というお願いを送る、そんな例もよく見かけられます。

参考:
「アメリカのオマケ付き寄付あれこれ」http://www.excite.co.jp/News/bit/00091213865142.html

LIVESTRONGリストバンドの購入ページ http://www.store-laf.org/wristbands.html

「Causes」による、「Birthday Wish」というプログラム。オンラインのサービスを利用して自分の誕生日に指定したチャリティーへの寄付を募るキャンペーンを作ることができる。http://birthdays.causes.com


チャリティーのいろいろ

 チャリティー活動のあり方や、チャリティーへの貢献のあり方、そしてチャリティーという概念に関する見方には、国や文化によって違いが見られます。

 例えば、レバノンに住んでいるレアリゼメンバーによると、イスラム教徒のコミュニティーでは「貧しい者への寄付」というのは「イスラム教徒の努めのひとつである」と捉えられ、税制などによる奨励ではなく、宗教的な努めとして信仰心から行われるそうです。また、同じくレバノンで、キリスト教関係や各宗派で宗教コミュニティが率先して募金活動を行うことも多いようです。

 また、仏教においても、仏教者の実践徳目の六波羅蜜(幸福を得るための六つの条件)の筆頭に「布施」(慈悲の心をもって、他人に財物などを施すこと)があり、その中に「無形の七施」というものがあります。その7つは、思いやりのある眼差し「眼施」、穏やかで相手を安心させる顔つき「和顔施」、優しくあたたかい言葉「言辞施」、身体奉仕「身施」、相手に共振できる柔らかな心「心施」、席を譲る「しょう座施」、宿を提供する「房舎施」であり、寄付行為やボランティア活動よりも幅広く、他人への思いやりを示す行動を指していることが分かります。

 宗教やコミュニティー団体だけでなく、個人のチャリティー活動の例もいくつか挙げられました。英国在住のメンバーによると、国会議員は個人資産に加え、講演料、海外視察費用などの内訳を公開することが義務づけられているそうで、企業やメディアに講演 、インタビューなどを頼まれた際、その報酬を議員が受け取るのではなく指定したチャリティ団体(例:心臓病の研究に貢献しているチャリティー団体)へ寄付するよう頼むことが多いそうです。

チャリティーの文化

 国や地域による寄付行為やボランティア活動の、生活への浸透度の違いを考える時、比較的チャリティー文化が根付いている「チャリティー大国アメリカ」、「寄付文化が浸透している米国」、といった見方が強いのですが、非営利団体や、環境・社会問題への取り組みへの支援が盛んなところと、そうでないところには、どのような違いがあるのでしょうか。

 2010年5月2日掲載のAsahi.com記事によると、日本に約4万団体ある特定非営利活動法人(NPO法人)ののうち、行政組織からの委託事業に頼る団体が多く、調査対象の1万2千団体のうち半数近く(54.5%)が、「収入のうち寄付金はゼロ」ということが分かりました。この結果に見られるような「市民とのつながりの弱さ」が個人レベルでの社会的支援活動の認識度につながっているのかも知れません。

参考:
「NPO法人、市民設立は7割 半数が寄付金収入ゼロ」 http://www.asahi.com/business/update/0502/TKY201005020084.html  


 一方で、100万以上のチャリティー団体*が存在するアメリカでは、2009年に全国で集めた寺非営利団体やチャリティー活動への募金の合計はGDPの2.2%にも及び、その7−8割が市民個人個人による寄付(遺贈も含む)によるものでした。インディアナ大学のCenter on Philanthropyによる調査によると、裕福層の寄付者のうち8割以上が「重要な需要を満たすこと」そして「社会に還元すること」を寄付をする理由として挙げました。

参考:
連邦法人所得税免税や寄付税制上の優遇措置などの対象となる免税非営利公益法人
http://www.kohokyo.or.jp/kohokyo-weblog/yougo/2009/04/c3.html

National Philanthropic Trust "Philanthropy Statistics" (「 慈善活動統計」) http://www.nptrust.org/philanthropy/philanthropy_stats.asp


 そのような利他主義的な、または貢献したいという気持ちによる動機に加え、場合によっては寄付額やタイミングの決定的要素となっているのが税制による優遇措置です。
 次回レポートでは、国による税制の違いや各地の現状から、制度のあり方と、その「チャリティー文化」への影響について考えてみます。

(とりまとめ担当:江崎絢子、むらいゆか)


Vol.2 「寄付」と「税制」の関連性
Vol.3 チャリティーの動機とコミュニケーションの重要さ
Vol.4 ボランティアという選択肢
Vol.5 寄付やボランティアとメディア

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