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「寄付」と「税制」の関連性

/第7回共同リサーチ:チャリティーとは~寄付やボランティア行為を『ジブンゴト』に Vol.2

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むらいゆか ポートランド&シアトル アメリカ西海岸
day
2011-01-05
 

 「チャリティー大国」として名高い米国では、課税期間の最終日である12月31日が近づくにつれ、税制対策の為に寄付する納税者が増加する傾向にあります。

 非営利団体を見つけるためのサーチエンジンを寄付者に提供するNetwork for Good(下リンク参照)によると、2009年12月中に同団体を通して行われた寄付金の総額は、2009年合計額の約4分の1に達し、またホリデーシーズンや年末真っ只中にある第4四半期(10月1日から12月31日)の寄付金額は2009年合計額の半分以上に達しました。

 11月末のThanksgiving(感謝祭)からクリスマス、年末にかけての「ホリデーシーズン」に、チャリティー活動への参加が多くなることを悪利用した、「ホリデー・チャリティー詐欺」(Holiday Charity Scam)に注意、という、そんな呼びかけもあるほどです。(下リンク参照)

 ホリデーシーズン中には寄付をギフトとして捧げる行為が浸透しています。例えば、1951年に設立された世界的自然保護団体である「ネイチャー・コンサーバンシー」では年間を通して寄付ギフトを提供しています。

 2010年度のホリデーシーズンでは、ブラジルの熱帯林に植木を寄付、コスタリカの珊瑚礁保護プログラム、もしくはハミングバード保護プログラム、その他13のプログラムに寄付することができ、この寄付をギフトとして贈る事が可能です。贈られた側には寄付ギフトが届いた知らせを伝えるギフトカード、同団体が発行するメンバー向けの月刊誌や年間カレンダーなどが届きます。

 受け取る側が関心のある非営利団体やプログラムへの寄付を贈る事によって、「大切な人への心温まる寄付ギフト」というアイデアが定着しつつある事実は、確実にホリデーシーズン中の総寄付額が増加する最大の理由の一つに挙げられますが、一方で12月は税制対策をを意識する傾向もあるとみられます。

 米国では「寄付行為」と「税制」は深くリンクしていると言われており、税を浮かせる為の寄付行為や金銭目的のフォスターチャイルドケアなどの報告がネット上でも数多くなされています。

 今回の共同リサーチでは、この米国の例を始めとし、日本やその他の国の「寄付」と「税制」の関連性はどこにあるのかを探るために、以下の税制に関する質問を組み込みました。

 「あなたの国で、個人の寄付を奨励する税制の仕組みがある場合、それはどのようなものですか。またそのような仕組みは、個人納税者の寄付行為にどう影響していると思いますか。」

 今回は、回答者の回答内容も踏まえながら寄付と税制の関連性について国別に纏めてみました。

日本の場合

 日本では個人が認定NPO法人や特定公益増進法人へ寄付をした場合、「特定寄付金」とみなされ、税制優遇の対象となります。

 この制度は、リサーチ終了後に決定された2011年度税制改正大綱では、大幅な改正が行われる見通しとなっていますが、以下では、リサーチ時点で施行されていた現行制度をご紹介します。

1. 所得税

 「その年に支出した特定寄付金の合計額-2千円」が寄付者の年間所得から控除されます。しかし控除できる特定寄付金は年間合計所得の40%が限度です。控除を受けるための手続きとして、まずは確定申告が必要で、申告期間は毎年2月16日から3月15日までです。しかし、特定寄付金の控除は個人申告が原則で、勤務先で実施される年間調整では寄付金控除を受ける事ができません。

2. 住民税

 地方自治体が認定する団体に対する寄付については、住民税も控除される場合があります。但し控除対象はそれぞれの都道府県・市区町村によって異なり、全国一律ではありません。所得税の確定申告の際に個人住宅税の寄付控除も一緒に申告できるようになっています。限度は年間所得の30%までとなります。
 住民税についてはお住まいの都道府県・市区町村に問い合わせることが必要です。

3. 相続税

 相続により取得した財産の一部または全部を認定NPO法人に寄付した場合は寄付した財産に相続税が課税されないようになっています。相続税の申告期限は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内 とされており、それまでに寄付された財産の相続税が非課税となります。

4. 寄付金控除の対象となるその他の特定寄付金

 認定NPO法人や特定公益増進法人への寄付以外に、以下の寄付金も所得控除の対象となります。

●国または地方公共団体への寄付金
●指定寄付金:公益目的の団体等の行う事業のうち財務大臣が指定するものに対する寄付金
●認定特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭
●政治活動に対する寄付金

*2010年(H22年)のリサーチ時の制度です。
(参考:GiveOne /下リンク参照)



 一見すると、日本では税制優遇のシステムが整っているように見受けられます。しかし、日本からの回答者からは、「個人納税者としては、税制が寄付に影響しているようには感じられない」、という意見が目立ちました。

 その理由として、たとえば、寄付金が小額である場合には税制の影響を受けない、という指摘が複数ありました。

●「税控除があるが、小額のため用途不明の国税に搾取されている。」(静岡県)
●「少ない額の寄付の場合あまり影響がない印象。」(東京都)
●「寄付額の少ない個人納税者の寄付行為にはほとんど影響しないのでは?と思います。」(長崎県)

 また以下のように、多くの納税者がサラリーマンとして働いており、還付手続が浸透していないことや、控除対象になる認定NPO法人格が少ないことから、控除システムが浸透していない、という意見が多数ありました。

●「個人納税者は、企業が納税手続きをしてくれるサラリーマンなどの場合、確定申告時期に自分で還付手続きをする必要があり、あまり根づいていないのではないかと思う。」(東京)

●「特定NPO法人格を取得している団体には、寄付金額に応じた税金の控除システムがあるが、認定NPO法人格の取得枠が小さく、また審査が厳しいのが現状であり、広い意味で浸透しているとは言い難いのではないか。ただし、働いているNGOには、市民の人からの電話問い合わせが多くその中には、税金控除を受けたいので特定NPO法人格を取得している団体を教えてほしいというものもある。」(東京)

●「認定NPO法人への寄付には、所得税・相続税・法人税の税制上の優遇措置があるというのは知っていますが、個人的に会員になっているNPOは認定外です。認定NPOの数が増えれば、多少は寄付が増えるかもしれません。」(東京)

 国税庁の認定NPO法人名簿によると、平成22年12月1日現在で控除認定されている法人数は188法人で、「国境なき医師団日本」、「国連UNHCR協会」、「スペシャルオリンピックス日本」などの大型NPO法人の名前が連なっています。

 「認定NPO法人格の取得枠が小さくまた審査が厳しい」と指摘した回答者の意見からも分かるように、寄付控除を受けるにはこの188の認定NPO法人から寄付先を選ばなくてはならなりません。

 また、一般NPO法人が認定NPO法人の資格を申請するにあたり、以下の9つの認定要件をクリアする必要があります。

1.収入金額に占める寄付金の割合が20%以上である。
2.事業活動において、共益的な活動の占める割合が50%未満である。
3.運営組織および経理が適切である。(役員のうち、一つの役員及びその役員と親族関係を有する者で構成されるグループの人数を占める割合が3分の1以下であるか、など)
4.事業活動の内容が適正である。(宗教及び政治活動は行っていないか、実績判定期間において特定非営利活動の事業費に充てた額が受入寄付金総額の70%を占めるか、など)
5.情報公開を適切に行っている。(事業報告書や役員名簿などの情報を一般に公開しているか、一般人から情報公開の請求があった場合、閲覧に応じる事ができるか、など)
6.所轄庁に対して事業報告書などを提出している。
7.法令違反、不正行為、公益に反する事実等がない。
8.所轄庁から国税庁長官に対し、法令に基づく処分または定款に違反する疑いがない旨の証明書が交付されていること。
9.設立日から1年を超える期間が経過している。

*2010年(H22年)のリサーチ時の制度です。



 しかも、この認定要件はあくまでも自己チェックシート的な役割にしか過ぎず、全てのチェック項目をクリアしている場合でも、必ずしも認定を受ける事ができるとは限らないのが実情でした。
 回答者の指摘の通り、認定NPO法人数が増えれば、寄付先の選択肢が広がり寄付文化が更に浸透するかもしれません。

 一方で、一名の回答者からは、現在の控除制度が寄付行為に繋がっているという意見もありました。

●「県単位での寄付額に応じた税金の控除。それは寄付行為の促進に役立っていると思う(反面、それだけではなく、より NPO/NGOの活動を人々が知るようになること、信頼できると思うことが、寄付金額の向上には必要だと思う)」(東 京)

 今回のアンケートでは、回答のないないケースや税制と寄付制度の関係について「知らない」という意見も目立ち、税制面では「ジブンゴト」と意識するのが難しい現状だったことがわかります。

2011年度(平成23年度)の制度改革

 さて上述しように、本リサーチ終了後の昨年12月26日の臨時閣議において決定された平成23年度税制改正大綱において、寄附金の控除制度の大幅な見直しがされることになりました。

 まず、寄附の控除制度に、所得控除方式に加えて税額控除方式が導入されます。この制度では寄附金額から2000円を引いた額の50%が、課税所得からではなく、税額から控除されます。この「税額控除制度」の導入によって、寄付金の半額程度の額が直接税額から控除されるため、小額の寄附でも控除の効果が実感できる筈です。

 さらに、厳しすぎると批判のあった認定NPO法人の要件が大幅に緩和される見通しです。年3000円以上の寄付金を年平均100人以上から集めていれば、認定NPOとして認められる予定です。

 その他にも、都道府県や市区町村が条例指定した認定NPO法人以外の、地域で活動するNPO法人への寄附金を個人住民税の寄附金税額控除の対象とすることや、信託を活用した寄附促進税制の導入も実現される見通しとなりました。
 これらは「新しい公共」を掲げる民主党政権による成果の一つと言えそうです。

米国の場合

 米国からの回答数は、日本からの回答数よりも少なかったのですが、米国の回答者は、税制との関わりについて、より身近に把握している様子が伺えました。

●「古着などの不要品を非営利団体に寄付した場合、翌年の税金申告の時に控除対象として計算できるようになっている。また、宗教関連や学校関連の寄付の場合も、レシートをもらって控除手配できるところもある。」

●「非営利団体として登録している団体への寄付のほとんどが課税対象外になる。」

 一方で、日本と同様に、一般市民が行う小規模な寄付程度では控除に影響しない、という意見もありました。

●「寄付した金額に応じて税金控除がされるが、庶民が中古車や衣服などを寄付した程度では控除が可能な金額まで届かないので、大金持ちや会社経営者を除いて、納税者のどれだけが控除を目的に寄付しているかは分からない。」

 また、活動への支援というよりも、控除を目的に寄付することへの批判もありました。

●「周りを見ると、かなりの人が『支援の本来の意味』を考慮に入れず、ただ、税金が浮くからということで寄付金を出していることがある。」

 米国財務省によると、指定非営利団体に認定されている団体に寄付した場合は、控除対象として見なされますが、項目別控除(Itemized Deduction)を使用する納税者に限られています。

 米国では定額控除(Standard Deduction)と項目別控除(Itemized Deduction)の2種類があり、どちらか金額が大きい方を控除として選択できるようになっています。
 定額控除とは、納税者の婚姻状態や子供の有無、夫婦合算申告をするか否かなどで一定額が決められており、例えば2009年度の未婚者の定額控除額は5,700ドルに設定されています。つまり、税法上での合法居住者であれば何もしなくても一定額の控除額が約束されている仕組みになっています。

 寄付金は後者の項目別控除に含まれ、その他にも項目別控除には医療費、住宅ローン利子、州税、固定資産税、盗難損失控除など様々なものが対象になります。

 上でも触れたように、定額控除と項目別控除のどちらか金額が大きい方を選択します。つまり控除目的で寄付をしている場合、寄付額を含めた項目別控除が定額控除額を上回らない限り無意味ということになります。

 例えば12月頭の時点で、年間の医療費が5600ドルに達したとします。定額控除額が5700ドルの場合、あと100ドルで項目別控除額が定額控除額に達します。このような場合には100ドル以上の寄付をして項目別控除額を定額控除額を上回るようにし、項目別控除額を控除として選択して税額を低くする方法も取る事ができます。

 しかし婚姻状態や子供の有無によって定額控除額は異なりますし、項目別控除の対象となる支払額も毎年変化します。したがって寄付金が控除可能になるか、さらに控除可能な寄付金の額も毎年異なることになります。控除が常に納税者の寄付インセンティブになるとは、一概には言えないでしょう。

 また米国発の金融危機から発生した景気後退の影響で、現在米国は1兆3千億ドルの国家財政赤字を抱えており、今後の景気回復策の一環として寄付金税額控除額の縮小に踏み切る案も出ています。
(Tax Write-Offs For Charity Donations To Be Axed? /下リンク参照)

 米国で寄付を税制対策の一つのツールとしてみなすには、日ごろから節税対策に取り組むなどして、税制と自らへの課税について十分な知識を有していることが不可欠と言えるでしょう。

 最後に、日本と米国以外からの回答を紹介します。

英国の場合

●「確かではないのですが、寄付をした金額は免税になるという話で、寄付を勧められたことはあります。」
●「チャリティー団体に寄付すると税額控除がある。」

オーストラリアの場合

●「個人で(税務署のリストに載っている団体に)寄付をすると年度末のタックスリターン申請のときにその金額と団体を書くことで、その分の税金が優遇されるようです。」

●「認定を受けた団体への2ドル以上の寄付は税金還付の対象となる。また、寄付した金額と同額を政府が上乗せするマッチング補助制度もある。企業もマッチング制度を取り入れているところがあり、従業員が給与天引きで寄付した分と同額を寄付している(この場合は税金還付申告はでき ないが、税引前に寄付できるため実質的に所得税を低くできる)。」

●「納税申告を出す時、寄付した合計の半分ぐらい(かな?)で自分が払う所得税が減る。」

カナダの場合

●「寄付金によっては、税控除の対象になると記載されているものもある。Canadian Charity として政府に登録された慈善団体に対する寄付金が税控除の対象になるらしい。その他の寄付金がどうなるのかは、よく分からない。」

●「カナダでは確定申告の際に寄付団体と金額を書くことが出来、その寄付団体が公認である場合に限り、その寄付金額の一部と同 金額の税金控除を受けることが出来る。寄付金額が10万円(1000ドル)など高額の場合、その半額ちかく(5万円弱)の税金控除を受けることも出来る。
公認(登録)団体にはアムネスティーインターナショナル、赤十字、プランインターナショナル、国境なき医師団、その他多様多種の団体が登録されています。宗教ベースの団体も多いです。」

韓国の場合

●「寄付と税制は一般人のレベルでは切り離されていると思われる。資産家や企業の場合はどうなのか知らない。
 韓国はキリスト教徒が多く、教徒は収入の1割を教会に寄付するという仕組みが一般的に広がっている。教会は宗教的な目的だけではなく、人脈作りなどにも利用されていて、人脈作りのために教会に通い、通うために寄付するという人もかなりいると思われる。
 その教会に集まった寄付の一部は、恵まれない人のために使われるが、教会の豪華さなどをみると、本来の寄付の目的とは異なっているように見える。」

レバノンの場合

●「イスラム教徒の努めのひとつである貧しい者への寄付というのは、よく行われていることだと思いま す。税制として奨励されているのではなくて、これは宗教的な努めなので、信仰心があるか否かにかかっていると思います。他にもキリスト教系の募金や各宗派 でいろいろ寄付をつのっていますが、これらは全て宗教的なコミュニティが率先して行っているもので、税制とはあまり関係ないようです。」

ルワンダ共和国の場合

●「この国ではそういうものは特にないと思う。」

 このように、英国・オーストラリア・カナダでも米国のように寄付金に対する控除制度がある、という回答がありました。
 一方で、韓国とレバノンでは寄付が税制とは関係なく、宗教が寄付に深く関わっているという回答がありました。宗教ベースの団体への寄付行為は日本やアメリカでも一般的に行われています。韓国の回答者が指摘した通り、米国でも教会の華やかさが目立ち、教会への寄付行為そのものを疑問視する声もあります。また寄付本来の目的である「人助け」ではなくビジネスや政治上の人脈作りを目的として寄付をする行為も見受けられます。

 次回のレポートでは「チャリティー行為のきっかけ」について取り上げます。

(とりまとめ:むらいゆか、江崎絢子)


Vol.1 チャリティーの文化
Vol.3 チャリティーの動機とコミュニケーションの重要さ
Vol.4 ボランティアという選択肢
Vol.5 寄付やボランティアとメディア

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