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チャリティーの動機とコミュニケーションの重要さ

/第7回共同リサーチ:チャリティーとは~寄付やボランティア行為を『ジブンゴト』に Vol.3

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江崎絢子 オレゴン州ポートランド市
day
2011-01-12
 

 前回は、控除制度などの税制が寄附の動機に与える影響について質問してみましたが、今回は、寄付やボランティアを募集する団体に対して不満な点、満足な点、期待するものについて意見を聞いてみました。

寄付を依頼する方法について

 寄付をしたことがあると答えた回答者(60名中57名)から、「団体のスタッフが寄付を依頼するコミュニケーションの仕方」について次のような声が集まりました。

●「なぜその募金活動が必要なのかをきちんと把握せずに、ただ街頭で募金を呼び掛けている団体に出会った時(には不満を感じる)。」(東京都)
●「団体についてよく知らないのに、半ば強制に(学校や職場でお願いがまわってくるなど)寄付するときにはやや不満を感じる。」(東京都)
●「不満に感じるのは、募金集める人たちが給料をもっている時。」(オーストラリア)
●「道ばたで団体を支援してくれるように頼んでいる人たちをよく見ます。募集している人たちには団体からアルバイト料金が発生します。そう言う意味で街頭で登録はしないようにしています。」(カナダ)

 募金の呼びかけや寄付をお願いするコミュニケーションが、個人のチャリティー支援の動機に影響していることが伺えます。

寄付をして不満に感じるとき

 「今までの経験で、寄付したことに不満を感じたのはどんな時でしたか」という問いに対し、多くの回答者から、寄付をした後のコミュニケーションのあり方についてのコメントが寄せられました。

●「資料が来るだけで、直接のコンタクトがまったくないのが残念。電話するなどして、コミュニケーションを図るべきだと思う。」(東京都)
●「自然保護団体から頻繁に寄付を依頼するDMが届き、『紙がもったいないのでEメールで送って欲しい』と要請しても手紙が来る。」(オーストラリア)
●「一度寄付すると寄付を募るDMがやたらと届くのは、寄付したお金を無駄遣いをされているみたいで不満」(東京都)

 さらに、募金を呼びかける団体に期待する点として、多くの回答者は「報告」の重要さを挙げました。報告の内容としては、「寄付金の使途の公開」、「(寄付されたお金が)何に使われたのか」、「寄付したものの行き先」など、寄付金の使い道に関する情報を求める声に加えて、「団体の収支をはっきり報告してほしい」、「団体の目標の達成、用途の透明さと、明瞭な会計体制」など、特定のプロジェクトに限らず寄付を受け付ける団体の活動報告、会計体制に関する情報公開を求める声もありました。

 「いくつかの団体に寄付してきた」というある回答者(千葉県)は、寄付する団体に期待することは「少額の寄付であってもメールなどで活動を報告してもらうこと」と述べました。団体の活動内容によっては、「寄付の成果が分かりやすい」、「短期的に成果が見えやすい」ものとそうでないものがありますが、そうでない場合は特に、「寄付者への継続的なフィードバック」が求められる、との意見です。

 一方で、寄付金の使い道や団体の活動内容についての情報は、その団体からの直接の報告以外のルートでも伝わることがあります。例えば以下のように、ニュースなどを通して寄付を集めた団体の実情について知り、不満を感じた、という声もありました。

●「闇雲に物資を送り、現地で腐らせたり配られてない現状に落胆した。」(愛知県)
●「寄付した団体が本来の目的と違うことにそのお金を使っていると聞いたとき。」(レバノン)

満足した経験

 寄付したことに満足した時の経験に関する質問には、次のような回答が集まりました。
 「寄付をしたことだけである程度の満足感を得られていました。」(埼玉県)、「寄付したことで、ちょっといいことした気分。」(東京都)という意見に見られるように、寄付をしてその結果何かを期待するのではなく、寄付という行為自体から得る「いい気分」に満足を感じる、という人もいた一方、「寄付に対するお礼を含め、長期的な団体からの情報発信。」(埼玉県)、「個人宛のメール等でお礼、およびプロジェクトの経過に関するレポートなどを送ってもらった時。」(アメリカ、オレゴン州)、「用途の明確な事前説明と事後の結果報告があればうれしい。」(東京都)など、報告をしっかりしてもらった際に満足を感じた、という回答も多くありました。

寄付をした団体に期待すること

 一方で、団体に対する期待に関して、小額の募金をした人の中には「気にしない」という声もありました。

●「期待するほどの額を寄付していない。」(韓国、寄付した金額:1年に千円以下)
●「寄付する時は応援のつもりであり、だからこそ小額だったのかもしれない。」(ルワンダ共和国、寄付した金額:年に1000円くらい)
●「特に無いが、小額なので気にしていない。」(静岡市、寄付した金額:1ヶ月に1回くらい)
●「金額が小さかったので、何も期待しなかった。」(東京都、寄付した金額:数百円程度)

 逆に、寄付した金額が大きかった回答者からは、団体の活動目的や長期的な影響に関する期待も挙げられました。

●「それらの団体がそれぞれのミッションを実現させ続けて行くこと」(カナダ、寄付した金額:年に1000ドル/約8万1千円)
●「取り組みにがんばっていただくこと。なかなか理解を得にくい問題でも、関心が高まり、支援の輪が広がり、より良い世界が築かれていくよう努めていただくこと。」(東京都、寄付した金額:一年間に15~20万円)

 以上の回答から、寄付をしたことがある回答者の多くは、お金の使い道に関する分かりやすい報告、団体の活動内容や収支に関する情報の透明性を求めていることが分かりました。

 寄付者が貢献したいと思う活動に役立つように使われているのか、そして途上国支援や災害復興活動などの場合は特に、寄付したお金や物資が助けを必要としている人々にしっかり届いているかどうか、という点が寄付者の満足度に大きく影響しているようです。

顔が見えるチャリティー

 成果が実感しやすいチャリティーの例として、「フォスターチャイルド」という支援方法があります。定期的に一定金額を寄付することで、一人の子供のスポンサーとして長期的に支援をする、というものです。団体やプログラムによって差はありますが、たいていの場合、支援対象となっている子供とのコミュニケーション(報告の手紙が送られてくるなど)に加え、希望があればスポンサーがその子供に直接会いに行ったり、プロジェクトの様子を視察したりする機会も作られています。

 プランジャパンという団体(www.plan-japan.org)を通してザンビアにいる一人のスポンサーチャイルドを受け持っているというカナダ在住の回答者は、その子の村で行われている生活向上のためのプロジェクト(新しい井戸の設置、平均収入を上げるため家畜のブタの提供する、など)が実際に成果を上げることを期待する、と述べました。

 フォスターチャイルドという制度には、お金の行き先、プロジェクトの成果以外にも、コミュニケーションや運営の仕方に関して、様々な意見があるようです。例えば、オーストラリア在住の回答者は「フォスターチャイルドの村に訪れて実際の活動を見ることができたとき」に自分の寄付に関して満足感を得た、と答えました。
 反対に、支援を続けたそのフォスターチャイルドがプランの対象外になった際、「希望を聞かずに次のフォスターチャイルドを勝手に選んで割り当てられた」という体験は、その団体への不満要素につながったそうです。

 また、アメリカオレゴン州ポートランド市在住、教育関係の仕事をしている方(30代)の話では、多々ある恵まれない子供の支援を行っている団体から、現在参加している団体を選んだ基準に関して、「偏った視点による団体のアジェンダが活動に影響していない寄付先を探すのに苦労した。」ということでした。

 彼女は、毎月20ドルくらいの寄付で、インドに住む恵まれない子供のフォスターペアレントになり生活費や教育費を支援しています。その団体から、特別なホリデーや記念日などに、子供にプレゼントを送ることを促すメールがくるそうです。そのことについて、彼女は次のように言っています。

 「フォスタープログラムを通して長くつながっている子供だから、もちろんプレゼントや手紙を送りたいと私も思うが、(イスラム教徒の子供なのに)『イースターのプレゼントを送りませんか』というメッセージが来た時は戸惑った。自分の支援が、一定の価値観を押し付けたり、その子の住むコミュニティーの伝統を尊重しない態度を示すことにつながるのは嫌なので、その団体に宗教や文化の違いをもっと重く捉えるべき、とお願いした。」

チャリティー団体の信頼度を計るには

 米国ワシントン州シアトル郊外に住むメンバーは、移民の権利を守る団体の者と名乗る人が署名と募金のお願いに家に訪ねてきた体験についてこう語りました。

 「(その訪ねてきた)彼女によれば通常募金額は120ドルとのことでしたが、突然来られてそんな大金を渡す気にはならないし、そもそも募金は払う側が金額を設定して良いはずだと思ったので、断わりました。金額を指定して寄付を求める方法に違和感を感じました(もちろん、一口●●円、X口以上という方法はありますが)。また、インターネットで検索した上では全米で名の通った団体のようでしたが、うちをたずねた人が本当にその団体から派遣された人かどうかを調べる手立てはありませんでした。」

 チャリティー活動に支援をしたいと思うきっかけ、そして寄付やボランティアなどの行動につながるきっかけとして、その団体やプロジェクトをどれくらい信頼できるかは、多くの人にとって大事な指標であるようです。

 台湾、台北県在住の回答者は寄付を受け取る団体の信頼性の評価について、「集まった募金額やその募金を何にどれくらい遣ったか明細を明確に公表している場合、信頼性が高い。」と答えました。オーストラリアの回答者も「寄付金全体のうち何パーセントが事務・広告費に使われ、何パーセントが実際に慈善活動に使われているかを示した資料」を見て信頼できるかどうか判断する、という意見でした。

 非営利団体やチャリティー活動の信頼性を評価できるツールに関しては、各団体の年次報告書や各種レポートの他に、以下のような例が挙げられました。(リンクはページ下部)

アメリカでの例:
●政府や名の通った団体による奨励。
●Charity Navigator(www.charitynavigator.org)(非営利団体の収支を検査し、各団体の会計上の「健康度」をレートで表した統計を提供している)
●GuideStar (www.guidestar.org) (非営利団体によるよりオープンな情報公開を目的とし、包括的なチャリティーに関するデータベースを提供している)
●Better Business Bureau (BBB)によるチャリティーのアカウンタビリティーのレベルを計るスタンダードと認定制度 http://www.bbb.org/us/Charity-Standards/
●GiveWell (www.givewell.org)(チャリティー団体の効率を財政管理、活動内容の面から評価しレーティングを発表している)

日本での例:
●JANIC(国際協力NGOセンター)(www.janic.org) のダイレクトリー www.janic.org/directory/
●国際協力プラザ(www.apic.or.jp/plaza/)による紹介
●寄付サイト GiveOne www.giveone.net
●クリック募金サイト イーココロ!www.ekokoro.jp  
●開発パートナー事業での実績(例:JICA)
●認定NPO法人格、寄付金控除の認定

その他の例:
●監査を受けた財務諸表の公開(英国)
●チャリティーの登録システム(カナダ)<リンク参照:カナダの非営利法人制度の概要(総務省)>

 ただ、アンケート回答者のうち、上のようなツールを日常的に、あるいはチャリティー活動を考える時に頻繁に使用している、という人はあまり多くないようです。

 「本当に信頼性があるかどうかの判断は非常に難しいので、最終的には自分の直感を信じます。」(東京都)という回答に見られるように、チャリティー団体に対する中立で公平な評価が可能で、簡単に使えるツールは身近にない、というのが多くの人にとっての現状のようです。

 そこで多くの回答者は、チャリティー団体の信頼性に関する情報収集には「口コミ」「知り合いの推薦」など、個人的なつながりを通しての判断方法に頼っているようです。

 一団体につき年間約100ドル/約8200円くらい寄付しているというモザンビークからの回答者は、「心から信頼し尊敬する人物によって指揮されている団体にしか寄付はしません。それらの人々が、どのように集めたお金を各団体の活動のために使用するか、はっきり把握している場合のみです。」と述べました。

 その他にも、「団体の活動を知っている第三者に聞く」(カナダ)、「自分が信頼する著名人や知識人がサポートしていること」(東京都)、「関わっている人を直接知っていることがベスト」(東京都)、など、特定の人の価値観や人脈を軸に信頼性を判断する、という声が多く集まりました。
 似た例で、「母校に関連しているチャリティー団体には寄付しやすい。」(アメリカ、ニューヨーク州)と、大学の卒業生ネットワークのつながりが強いアメリカならではの回答もありました。

 次回は、ボランティアという選択肢についてです。


Vol.1 チャリティーの文化
Vol.2 「寄付」と「税制」の関連性
Vol.4 ボランティアという選択肢
Vol.5 寄付やボランティアとメディア

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