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町内会とは何だろう?

/第8回共同リサーチ:世界の町内会?Vol.2 

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三沢健直 松本市
day
2011-06-17
 

 「世界に町内会はあるのか?」あるとすれば、「どんな活動をするのだろう?」という質問をメンバーに投げかけて始まった共同リサーチなので、回答も世界のケースが多く集まりました。しかし、そもそも日本の町内会が何をしているのか、読者の皆さんはご存知でしょうか?地方へ行くと高齢者が中心に活動しているケースが多く、具体的な活動について知らない方も多いかもしれません。そこで、まず日本の町内会について報告します。

日本の町会(町内会)の仕組み

 町会(町内会)の仕組みは様々なようです。私が聞き取りをした長野県松本市のある町会は約400軒で構成され、それが5地区(約40軒~120軒)に分かれ、1つの地区が12班(6~10軒)に分かれます。役員は、会長、副会長(2人)、庶務部長、公民館長、防火部長、体育部長、衛星部長、地区部長、日本赤十字担当があり、さらに各班に班長がいます。住民は基本的に全員参加しますが、アパート・マンションなどの住民については、場所によって取り扱いが異なるようです。

 町長は選挙があるのですが立候補者がいないため、同じ人が何年も続けているそうです。他の幹部も同様です。地区部長や班長などは順送りで決まるそうです。意思決定のためには、年2回総会が開催されます。役員会は毎月1回程度開かれ、会費の徴収の他は、住民の出入りの報告を行うようです。会費は月500円で、年間の予算は約220万円。そして、書かないほうが良いかもしれないと迷いましたが、驚いたことに、毎年繰越金が発生し、総額で数百万円ほど溜まっているそうです。

 公民館では、講演や稽古事などの企画。衛生部は地域のアメシロにやられた木を見つけて切ってくれるので助かるそうです。防災部は火の用心の近隣廻り。交通部はお祭りの管理。体育部は「歩け歩け運動」などの開催。資源部の当番は年1回とのこと。回覧板によって市の配布物が頻繁に配布されます。

 役員は、以前は男性と決まっていたそうですが、6年ほど前から女性が混じりだしたそうです。規約に関しては、「有るはずだが見たことがない」とのことで、仕組みの詳細や細かいことは、住民自身も把握していないようです。とにかく自分に廻ってくる仕事を何とかこなしている様子が伺えます。
 町会の課題は、役員のやり手がいないこと。仕事をしている人には断られ、いつも同じ人ばかりが担当しているとのことでした。

 松本市は人口24万人程度の小都市ですが、冠婚葬祭と町内会との関係は、ほとんど消滅しているようです。婚姻の挨拶を「地区」に回覧板で廻して、「班(隣組)」にタオルを配って挨拶に廻る程度です。しかし農村部では、結婚式に隣組を招待したり、葬式を隣組が取り仕切ったり、濃密な関係が維持されているという話も聞きます。

町内会の歴史

 町内会(市では町内会、町村では部落会)の起源は実は非常に古く、大宝律令・養老律令(8世紀)で定められた五人組制度に遡れるようです。主な機能は、1治安維持、2経済的連帯責任(年貢の連帯責任)、3互助機能、の三つでした。

 その後一旦衰退し、室町時代末期、江戸時代を通じて復活します。これはキリスト教や日蓮宗の禁制への協力体制を作ることが目的の一つだったようです。この他、勤勉貯蓄の奨励や、村の協働義務の教育など、道徳教育を行う役割もありました。

 その後、再び明治維新の際に、古い封建制の一部として廃止されたものの、昭和初期の日中戦争当時に、再び全国で組織され始め、太平洋戦争の戦時下で、今度は国民を総動員する大政翼賛会の際末端組織として組織されたのでした。
 東京などでは、大正から昭和初期にかけて地方からの人々の流入によって人口が急増しています。町会は、そのような人々を地域に統合する役割も果たしていました。

 当時制度化されていた「隣組」は、今でいう「班」あたるようですが、隣組という言葉は現在も日常的に使われています。隣組の定期会合は「常会」と呼ばれていました。

 戦後、ポツダム政令15号によって、町内会や部落会の結成は禁止された時期がありました。1952年に解禁され自治組織として再組織化されましたが、行政と結びつける法的根拠はなく、法的には民法上の任意団体となります。最近では、法人格を取得するような団体もあるようです。

インドネシアのRT/RW

 インドネシアのメンバーによると、RT(Rukun Tetangga)という隣組制度と、RTを複数まとめたRW(Rukun Warga)という仕組みがあり、RWは30世帯程度で構成されるそうです。このRT/RW制度は、日本の軍政当時の「隣組」を参考にして故スハルト大統領が考案したもので、行政機関の一部と位置づける法的根拠があり、参加は義務になります。RT長は、話し合いや選挙などで選出されます。

 最も重要な機能は、住民の管理と治安維持です。メンバーによると、住民の活動には「毎晩、交代での夜警があり、夜警に出ないと罰金が科されるRTもある」そうです。さらに、「住民同士が監視しているため犯罪者が入り込みにくい。なのでテロリストも、ある程度地域活動に参加している。

 どろぼうが村人に捕まるとリンチを受けることが多々ある。警察も暗黙に処分を任せている。警察に捕まったほうがマシらしい」、とのことでした。日本の町内会は、もちろんこれほど極端ではありませんが、住民の出入りをチェックしている点では類似しています。

 アイデンティティ(ID)カードの発行も、RT/RWの重要な機能です。
「IDカードを所持することが国民の義務だが、手続きはまずRT長に申請することから始まる。結婚、離婚、出生、死亡等の届出も、まずRT、次にRW、さらに村長と組織を上り、最終的に区役所で発行される。」

 「外国人が居住する場合は、RT/RW長への報告義務がある。RT/RW長は、それを警察に報告する義務がある。居住する場合だけでなく、客として一時的にいる場合も同様。」

 「選挙人登録と管理は区役所の仕事だが、RTでIDカードの確認作業などがされる。私名義で投票案内が来たことがあったが、外国人で選挙権がないので行かなかった。しかし同じくインドネシア人配偶者を持つ友人(外国籍)は「ユドヨノ(現大統領)に投票してきちゃった」とのこと、、、、」

 日本の町内会と比べると、行政機関に近い機能を持っていますが、アバウトな様子が伺えます。

 「会費徴収は各戸の家の前に小さなカップと票を備え付け、毎日そこに200ルピアを入れておく。係が徴収してまわる」、とのこと。

 そのほか、月1回の清掃と家長会合、毎週1日バドミンドンの集まり、年一度の独立記念祭、イスラム犠牲祭などもRTごとにイベントを行うそうで、やはり日本の町内会に似ています。

 また、アリサンといって、毎月小額のお金を集めて、主に女性に渡す仕組みがあるそうです。これは、グループ3の国でも報告されている仕組みです。

中国の居民委員会・村民委員会

 中国の「村民委員会」や「居民委員会」も、日本の町内会に類似していると言われることのある組織です。インドネシア同様に法的な根拠を有し、全戸が加盟しています。
 治安維持・公衆衛生・住民間のもめごとの調停などに加え、インドネシアと同様にIDカード発行の窓口になっています。中国では結婚する際は「独身証明書」を取得する必要がありますが、これも居民委員会の主任が確認してから鎮で発行されます。役員は選挙で選出されています。

 しかし、中国の居民・村民委員会が日本の町内会と大きく異なる点が二つあります。一つは加盟する世帯数の数が圧倒的に多いことです。2006年の統計では、1000世帯~3000世帯の規模が最も多いとのこと(リンク参照)。

 もう一つは、清掃や設備保全などを、住民自身が分担して作業するのではなく、居民委員が手当てを受給して担当しているところです。比較的潤沢な予算を持っている場合には、作業を業者に委託する場合もあるようです。この予算は上部行政機関から出ており、町内会というよりは行政の下部機関に近い感じです。しかし、委員は選挙で選出されることから、日本で言えば、むしろ村役場のような小型の地方自治体に似て見えます。

 都市部で乱立するマンションでは、従来は「居民委員会」が行っていたような治安維持・公衆衛生(清掃)・設備保全等の仕事を、マンションの管理会社(物業公司)が行っており、居民委員会はなかったようですが、管理会社のサービスがあまりに悪いため、管理会社を監督するための大家組合(業主委員会)が作られるようになったとのこと。こちらは、マンションの管理組合に近いようです。

 2000年代に入ってから社区というコミュニティづくりが進んでいるようです。今回は、社区に関しての報告はありませんでしたが、社区においても居民委員会が行政的な機能を果たしていることに違いはないようです。地方自治体的な性格を強めている印象です。地方自治体といえば「民主主義の学校」ですから、中国の民主化は、この辺から進めていくのかもしれません。

台湾と韓国

 では台湾にも中国と類似の組織があるのか、台湾在住の読者に聞いてみたところ、町内会のようなものはない、とのことでした。

 韓国在住の知人に聞いて見たところ、班常会という住民組織があり、これは日本の町内会と似た組織のようです。1917年に日本によって設置され、戦後廃止されたものが、1976年に復活したそうです。76年といえば、軍事独裁政権の朴大統領です。当時は、政府の情報を伝える役割が大きかったようですが、現在では地域住民による様々な話し合いの場となっているようです。


Vol.1  世界に町内会はあるのだろうか?
Vol.3  途上国における町内会
Vol.4  町内会のない国
Vol.5  町内会に少し似た活動

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