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町内会に少し似た活動

/第8回共同リサーチ:世界の町内会?Vol.5

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三沢健直 松本市
day
2011-09-26
 

 前回は、欧米には町内会に相当する組織が存在しないことや、そのことに支障を感じていないことをお伝えしました。しかし、一方で、町内会と少し似たところのある活動についての報告もありました。

 「隣人との関係が希薄になりがちな都会では、フランスでも高齢者が誰にも気付かれぬまま死亡しているケースが多くあるそうで、これはかなり問題視されています。

 そうした状況を改善するため、お隣さんとの親睦を深めようという試みも行なわれています。代表的なものが、La Fête des voisins(ご近所祭り)です。毎年一回、5月後半の一日がLa Fete des voisinsの日と指定され、誰でも自由にご近所さんを招いてパーティーを開くことができます。パーティーの発起人になる人は、お祭りの日の前に隣人たちに声をかけ、飲み物や食べ物を皆が自由に持ち寄り、パーティーを催します。

 元々は、1999年にパリの17区に住んでいた若者4人が、挨拶をするだけの関係では味気ない、もっとお隣さんとコミュニケーションをとろうと思い立ち、始めたものだそうです。

 今では、Voisins Solidaires(隣人共同体)という名のNGOもでき、毎年La Fete des voisinsが近づくと、日刊紙上でもパーティの開催を促すほどポピュラーなイベントとなっています。2009年5月の回には、650万人が、フランス各地で催されたそれぞれのパーティーに参加したそうです。」

 もう一人のメンバーもこう言っています。

 「世話好きなフランス人にとって、『近所付き合い』は、ある世代より上の人たちには生活のうえで大事なものでした。若い世代は近所付き合いから離れていく傾向でしたが、今では見直されていて隣人との親睦をはかろうという動きが見られます」

 このお祭りは、今やヨーロッパ28国に広がっているそうです。欧州では都市化の進展に従って、隣人とのコミュニケーションが希薄になるという問題が生じているようです。その意味では、欧州より遅れて都市化を進めてきた日本では、町内会的な活動は今後も必要があるのかもしれません。

 例えば、カナダのマニトバ州に留学中の読者は、外国人が町内会を評価したと教えてくれました。

 「私のホストが日本に来たとき、団地の花壇を見て、『誰が手入れをしているんだ?』と聞かれて町内会の説明をすると、凄く関心して『カナダでは自分から近所とコミュニケーションをとろうとしない限り交流がないから、それは良い習慣だ』と言っていた」

カルガリーからの報告

 このリサーチのきっかけは、カナダで積極的に活動している町内会がある、という情報でした。しかし、今回のリサーチでは、ブリティッシュ・コロンビア州のバンクーバーの他に、オンタリオ州、マニトバ州の読者からも、町内会のようなものは存在しないとの報告を頂きました。どうやら私が最初に聞いたアルバータ州のカルガリー市の情報は、かなり特殊な事例だったようです。次は、そのカルガリー市の事例です。

 「町内にボランティアで回覧板を作ってくださる方がおり、そこに町内のクラシファイド、掃除活動、ミーティングの案内、町内のパーティーの案内などが載っていました。町内はおそらく70戸もなかったと思います。新興住宅地だったので回覧板が始まったのは2005年くらいからでした。
 年に一度、各家庭から$100ほどを集めてそれを清掃費などにも当てていました(一戸建て集落なので、いわゆるマンショの管理費などとは別物です)。皆で清掃をしようという日も設けていましたし、ジョギングクラブなどもありました。カルガリー全域でそういう活動があったかどうかは分かりませんが。」

 「ある日、郵便ポストに回覧板が入っていて、それから広がっていきました。(略)夫の話によりますと、町内会のようなものはともかく、block partyと言って近所のメンバー同士が集まってパーティをすることはよくあるそうです。(略)アルバータ州は酪農関係や石油関係の仕事が多く、とてもコンサーバティブな所なので、むしろ人と人との関係が密接な傾向にあります。おそらくバンクーバーやトロントとは少し違う雰囲気があると思います。

 今考えると、回覧板のメリットは皆にとって大きかったと思います。たとえば高校生くらい子どもが「犬の散歩のアルバイトします」「ベビーシッターします」「家庭教師します」という掲示を出したり、近所合同で芝刈りや雪かきのアルバイトを頼んでディスカウントしてもらったり、要らないものを売ったり、ジョギングクラブや「小さい子どもを持つ母親の集まり」というのもありました。カナダのように広い国だと、友人でも遠くに引っ越してしまうと、なかなか会えなくなってしまうので、近所と仲良くなるのは大切だったと思います。」

 この活動も、ごく最近に始まった活動であることが分ります。欧州では、人の集まるスーパーマーケットなどにクラシファイドなどの情報が掲示されることが多いのですが、それを回覧板という形で応用したのは、海外での情報と地元の伝統とが上手くミックスされた方法だったのかもしれません。

 この活動は、住民組織であるという点や、地域の問題解決について話し合ったり、親睦を図ったりという点で町内会に類似しています。しかし、行政の下請け的な要素がないことや、参加の強制度が低い点で、町内会とかなり異なると言えそうです。

 フランスの隣人パーティーにしても、カルガリーの「回覧板」にしても、住民達が自発的な楽しみとして行っている様子が伝わってきます。若い人たちも積極的に参加しているそうです。活動が始まったのが最近であり、何をするかの「決まりごと」がなく、自分達で決めていけることや、住民の交流を主な目的としていることなどが、老人ばかりになってしまった日本の町内会の今後について考えるときに、参考になるかもしれません。

アメリカのNeighborhood association(隣人協会)

 一方、アメリカには、Neighborhood association(隣人協会)という活動があると、ポートランドのメンバーから報告がありました。これは、所有者による homeowners associationと異なり、住民が参加するボランタリーで、インフォーマルな組織のようで、町内会と似た組織です。非営利団体として税制の優遇措置対象となる団体もあるようです。

 ポートランドのメンバーは、越してきたばかりで隣人組合の活動を報告できませんが、隣人協会サイトを紹介してくれました。ポートランドには、95の隣人協会が存在するそうです。どちらのサイトにもMapが載っていますから、隣人協会の地理的な範囲を確認することが可能です。

・Pearl District Neighborhood Association(参考サイト参照)
・Humboldt Neighborhood(参考サイト参照)

 サンフランシスコ近郊のコンドミニウム(集合分譲住宅)に関する次のような報告がありました。

 「私がかつて住んでいたコンドミニアムと呼ばれる分譲集合住宅には、町内会に似たような組織(コミッティー)がありました。主な活動としては、敷地内に常駐する物件の管理会社が会を組織し、月1回程度住民によるミーティングを開きます。お知らせや諸課題を話し合う以外に、地元警察を招いて防犯セミナーが行われていました。地区の犯罪データの報告や、空き巣や強盗を防ぐにはどうすればいいか?といったテーマで講演があります。(略)

 このコミッティの下にクライムウォッチという住民組織があり、希望者が委員になります。担当者は普段の生活の中で、敷地内で何か変わったことがないか、怪しい人物や動きはないかといった治安に関することに目を光らせ、何かあれば委員会に報告します。匿名性ではなかったと思いますが、委員は制服やバッジをつけているわけではないので、住民からすれば誰が委員なのか気にしない限り分かりません。住民同士、治安に目を光らせようという試みでした。

 あとは、コンドミニアムの決まりに対して何か違反をした住民に対してヒアリングを行うときにも、コミッティの委員が立ち会っていたと思います。米国のコンドミニアムのコミュニティは、物件価値が高いところであれば、その価値をさらに高めるために、かなり細かくバイオレーションコードが定めてあります。私は「ベランダに物を置いている。また、ドアの取っ手の色が決まりと違う」ということで、ヒアリングに呼ばれ、釈明したことがありました。

 コミッティ主催ではありませんが、管理会社が主催してコンドミニアムでパーティーを開くことが何度かありました。例えば独立記念日のような祝日に、プールサイドや多目的ルームを利用してBBQパーティーやアイスクリームパーティーを開きます。参加は無料で友人を連れてくることも出来ます。300戸以上あるコンドだったので、両隣以外は住民の顔も知りません。こうした機会を通じて住民間の親睦を図ると同時に、新たな居住者の勧誘の場としていたようです。」

 この事例では、一つのコンドミニアムに形成される「コミッティ」であるために、homeowners association(所有者協会)と共通する面がありますが、活動内容は、Neighborhood association(隣人協会)と大きく重なります。
地域住民同士の交流や、地域の活性化、市民活動をサポートすることなどを主な目的としていて、日本の町内会と比べると行政の下請け的な要素はない代わりに、住民を代表して行政と話し合ったりするなど、住民の自治的な団体の要素が強いようです。

 アメリカの隣人協会のサイトは、地域イベントなどの情報が満載で楽しそうです。このような方法は、日本の町内会にとっても参考になるかもしれません。

フィンランド

 一方、フィンランドのメンバーからは、類似の活動はあるにはあるが、ほとんど活動していない、という報告がありました。

 「町内会ではなく、正確には村内会という名称が正しいのだそうですが、日本の規模で言うところの町内会、あることはあるのだそうです。が、地域によってアク ティブ度の高低があり、私が住んでいるエリアではよっぽどの物好きでもなければ参加しないのだそうで、活動内容は、市長を招いて地域環境の向上を要請する、といったことだそうです。」

オーストラリア

 オーストラリアのメンバーからは、町内会はない代わりに、「地域の空き巣や犯罪発生動向を監視して住民に定期的に報告する自警団(neighbor watch)などがあります。また海難救助隊や消防団も基本的には地域住民のボランティア職員で成り立っています。」との報告がありました。

 このようにボランティアで行う活動については、他にも商店街の集まりや、町おこしのような活動もあります。町内会との違いは、活動の目的が明確になっていることかもしれません。

リサーチを振り返って

 こうしてみると、日本の町内会は、インドネシアのRT/RWとアメリカのNeighborhood Associationの中間のような組織であるようです。

 町内会は要らないという意見もありますが、地方においても住民同士の経済的・社会的な紐帯が薄れる「都市化」が進展する先進国では、町内会に類似した住民組織の必要性は高まっているようです。そういう意味では、町内会の必要性がなくなることはなさそうです。

 しかし、行政の広報を担当したり、資源の分別回収を担当したりする活動は、先進国では見当たりませんし、地域の状況や住民の意思によっては自治体が担当しても不思議ではないでしょう。

 また、カルガリー市での回覧板をクラシファイドとして利用する方法や、ポートランドのニュースサイトなど、住民同士の交流を中心としたボランタリーな活動のあり方は、町内会を活性化するために、参考になりそうです。このような地域の活動を参考にして、行政との役割分担の見直しも含めて、町内会の活動を闇雲に継承するのではなく、新しい町内会のあり方を考えていくことが必要なのかもしれません。


Vol.1  世界に町内会はあるのだろうか?
Vol.2  町内会とは何だろう?
Vol.3  途上国における町内会
Vol.4  町内会のない国

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