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インドネシア、スマトラにおける新しい村づくりのプロジェクト(オイルパームプランテーション開発の問題)

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伴昌彦 東京都
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2008-07-30
 

 本プロジェクトへの参加者は、村に残された共有地を自力で開墾することで、一世帯あたり2.5haの土地の使用権を得ることができる。この土地は無償で使用できるが、売却や貸与は認められない。この地方では伝統的に、共有地の取り扱いはもとより、個人間の土地の売買や結婚や、商売等を行う際は、村の伝統的なリーダーであるニニック・ママックの承認を得ることが求められてきたが、このプロジェクトにはニニック・ママックも賛同し、プロジェクトでの共有地利用を承認している。

 なおこのプロジェクトは、土地を持たない人々を重視しており、地元出身であっても受け継ぐ土地がなかった人々や、外部から移住政策や出稼ぎで来た人々やその子孫でも、理念に賛同する人なら誰でも参加することができるとしている。実際、2005年の時点でもジャワ島からの土地なし移民12名が参加していた。

 プロジェクトの母体となっているのは既存の村落コミュニティではなく、土地返還要求闘争のための組織であり、2003年のリーダー交代後、本プロジェクトが構想されるようになっていった(前任者は企業からの収賄で解任された)。2005年8月の筆者訪問時点では、リーダー1名、サブリーダー2名の他、227世帯がメンバーとして参加しており、闘争継続の傍ら、2005年5月から第一段階として40世帯による開墾作業が開始されていた。

 将来的には200世帯以上の参加を目指しているという。彼らリーダー達は土地返還要求運動の中で中心的な役割を果たしてきた人物であり、いずれも30代の「以前は酒と博打(と女)で名の通ったワル」であったという。通常はそれぞれ自分の畑で働いているが、日を決めてプロジェクト地の開墾を共同で行い、夜な夜なバイクに乗っては家々をまわり、新たな村をめぐる夢を熱く説いて回っている。

 将来的には、世帯単位での自立かつ持続可能な農業を基盤とし、相互扶助と公正な意思決定の仕組をもつコミュニティづくりをめざすという。

 土地利用については、各世帯が2.5haずつの土地で生活、耕作を行うほか、コミュニティの共同畑100haを設けて共同労働を行い、そこからの収穫を村のために使う予定であるという。さらにコミュニティの下部組織として、移民からなるグループとネイティブであるミナンカバウ族のグループとを作り、双方の伝統的価値を尊重しながら、新しい文化を創造していきたいという。

 農業については、種の貯蔵庫、苗、耕作用具をコミュニティで共有し、生産方法や、生産後の処理、販売と分配等についてシステムを構築するなど、農業改革を図っていく。なお、コミュニティ内、また他地域の農民組織と相互交流しながら、経験や知識の共有化を図っていくという。特定の分野に才能をもった人材が自然とファシリテーターになっていけるよう支援したいという。

 また同時に、自立的な農民としての意識を高めるために、教育活動を充実させていきたいということであった。「学校だけを教育の場とみなすのではなく、年齢、性別に関わらず、全ての出会いを教育の場ととらえて物事を学び、自分の頭で考えられるような人間を育てたい」とはサブリーダーの言葉である。

 そのためには子供たちの学校のほかに、コミュニティでの学びの場を設け、農業技術や家内手工業をはじめ、倫理や環境問題、政治問題等の社会的問題、伝統医療を含めた健康や衛生に関する問題、出産や子育てや男女の役割分担、文化に関することなど、様々なことを学びあって、生活の中での実践に結び付けていきたいという。

 「天国とは、ここにおいて作り上げていくものだろう?」と敬虔なムスリムである青年が笑う。「今の消費経済の広がりの中で、人々は物質的に満たされても精神的に空虚になるばかりだ。僕らは働きながら、今を生きるための新しい哲学、自然と調和した人間としての価値を見出していかねばならないのだ。」

<運動の思想的背景>

 この運動はアナック・アイエ・マゴ村の農民達により自主的、独立的に行われているが、理念的・技術的サポーターとして、インドネシア農民連合(Federasi Serikat Petani Indonesia=FSPI)のスマトラ支部にあたる西スマトラ農民連合(Serikat Petani Sumatera Barat=SPSB)の存在がある。SPSBの運動家が1994年以来頻繁に訪問・滞在しており、問題の分析や解決に向けたアイディアの提供など、アドバイザーとしてソフト面での啓発・調整・支援活動を行っている。

 FSPIはインドネシア各地における開発政策によって侵害されてきた農民の権利の回復のための闘争を、農民間の連帯・相互支援によって解決していくために設立された組織であり、国際的な農民組織であるLa Via Campesina(国際農民運動。日本の農民連も参加している)にも参加しているほか、MST(ブラジルの土地なき労働者の運動)とも連携している。
 これらの運動は、農民の権利の擁護・回復をめざすとともに、新自由主義的な経済のグローバライゼーションに対抗し、持続可能な農村の社会―経済モデルのあり方を追求している。なおアイエ・マゴ村には2003年にSPSBが開いたイベントの際に9カ国からの参加者が闘争の現場を視察に訪れており、活動の励みになったという。

「これまで農民は貧しく汚く愚かな存在とみなされてきたが、意思を持ち、チャンスを掴めば自立できるはずだ。私たちは同じ人間なのだ」と、村を担当するSPSBの活動家は語った。彼の村での活動は長期的なオブザーバー兼アドバイザーといった形をとっており、問題の認識の仕方や、解決の方向性などを早急かつ一方的に押し付けることなく、村人たちに入れ知恵をしてまわり、彼ら自身の意思と行動により物事がなされるように誘導している。次の世代に平和で、飢えることの無い、農民としての誇りに満ちた暮らしを渡したいという彼らの願いが形になっていくのを見守りたい。


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