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森を壊さないカレーを食うために ~パーム油フリーカレー~
森なしに生きられない Vol.1 |
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2007-03-30 |
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カレーは出来たけど
何とかパーム油を使わないカレーを作ってはみたが、パーム油は予想以上に色々なものに入っていて避けるのは難しかった。カレーだけならともかく、パーム油は洗剤、化粧品、プラスチックなど様々な所に使われている。
ここまで生活に深く入り込んだパーム油を今更なくすのは難しいし、仮になくせたとしても色々な弊害が出てくる。例えばパーム油を大豆油に変えたとしても同様の問題が広がるだけだ。現に大豆のプランテーションは、南米で熱帯雨林の破壊や河川の汚染、地元住民の権利の侵害などの問題を引き起こしている。また、ここまでプランテーションの問題点ばかり強調してきたが、今では油ヤシから生計を得ている人達がたくさんいる現実もある。
 カレー
持続可能なパーム油の円卓会議
袋小路に陥ってしまったようだが、欧州のNGOなどからの批判を受け、業界にもパーム油の問題に取り組む動きが出てきた。2003年からはパーム油に関わる様々な関係者が一堂に会し「持続可能なパーム油の生産と消費」について協議する場、「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」が設けられ、毎年開催されている。
RSPOで特筆すべきは生産者や加工業者だけでなく消費企業、NGO、投資家など、広範な利害関係者(現在145団体)が参加していることだ。
ここで2005年に定められた「持続可能なパーム油生産のための基本方針」には農園での環境や労働の基準だけでなく、原生林や保護価値の高い土地の開発や地元住民への十分な説明に基づく自発的な同意なしの開発を禁じる項目も盛り込まれている。現在はその試験期間にあたるが、多くの企業がこの基準を守るようになれば状況は随分改善されるだろう。
しかし精製段階で様々な農園からの油が混じりあってしまう状況で、消費者はどうやって「持続可能なパーム油」(SPO)を識別すればよいのだろう。第3回から円卓会議に参加している株式会社レスポンスアビリティの足立直樹氏によれば、今のところ有力だと思われるのが以下のような方式だ。
まずSPOの認定を受けた農園が、出荷した量に応じて認証ラベルを売り出し、SPOを使いたい企業はそのラベルを購入する。パーム油自体は基準を守ったものだけ分別されるわけではなく、従来通り精製・売買されるが、認証ラベルを買った企業は、自社の製品をSPO使用として売り出すことが出来る。この方式ではSPOだと思って買った油が実はそうじゃないということもあり得るが、SPOラベルの貼ってある製品の方の売れ行きがよければ、次第に本当のSPOが増えていくだろう。
消費者にできること
早ければ今年末にもSPOは市場に出回ることになりそうだが、広まるかどうかは消費者次第だ。残念ながら今の段階では日本の消費者はあまり関心がなさそうだ。円卓会議も主にEUの消費者を見越して開かれている。EU諸国の方が日本よりパーム油の消費が多いという背景もあるが、決して日本と無関係な話ではない。日本の企業でRSPOのメンバーになっているのは三菱、サラヤ、ライオン、不二製油、伊藤忠、コープクリーン。だがメンバーになったからと言ってSPOを扱う義務はない。
食品を扱う日本のRSPO参加企業にSPO導入の計画があるかを問い合わせてみた。現在はまだ基準の策定中なのでやむを得ない面はあるが、あまり具体的には考えていない様子だ。ヨーロッパに市場を持つ不二製油からは「認証パーム油の導入は認証開始後順次行われることになる」との回答を得たが、これはヨーロッパでの話。日本での具体的な導入の時期はユーザーである会社と消費者の理解と同意が必要になるのでまだはっきりしないとのこと。
これらの企業がたとえ今はSPOを導入する気がなかったとしても需要が多ければ無視は出来ない。問題意識を持った人がいたら、とにかくSPOを使った商品が買いたいと要求することから始めよう。ブログなどを使って企業に使用を提案するのもよいだろう。ブロガーの提案をまとめて企業に届ける取組をしているサイトなどもある。
http://www.pc-lifeboat.com/waon/bmc.html
まだまだ問題山積みですが・・・
パーム油の消費量は中国やインドでも増え続けており、ヨーロッパや日本でSPOへの切り替えが進んだとしても、問題が解決するわけではない。現時点で既に中国のパーム油輸入量は年間400万トン※5(日本のおよそ9倍)で世界一だ。また、農薬や汚水などの環境基準の問題は比較的解決しやすいが、モノカルチャー(単一作物栽培)がもたらす貧困や伝統文化の喪失といった問題はもっと複雑だ。
それでもとにかく、多くの人達の努力でRSPOのような仕組が作られたことは大きな前進には違いない。世界は急には変わらない。もしあなたが少しでもこの世界を少しでもましな場所にしたいのなら、とにかく出来ることから変えていくしかない。
※1 財務省貿易統計
※2~4 Wakker.E(2004)”Greasy palms, The social and ecological impacts of large scale oil palm plantation development in Southeast Asia” Friends of the Earth
※5 月刊油脂Vol59,No2.(2006)
都市農地を活用する試み(3)-倉沢里山の会
都市農地を活用する試み(2)-こだいら菜の花プロジェクト
都市農地を活用する試み(1)-東久留米市一歩の会
空飛ぶモニョンゴロ村
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