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ちかくにアート

~アート系NPOの活動を通して~

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八戸秀一
day
2004-05-15
 

アートの場所

 芸術や文化という言葉に触れる時、違和感を覚える人は多いのではないだろうか?テレビや新聞・雑誌などのメディアで接する機会が非常に少なく、馴染みが薄いアートには距離を感じてしまう。この感覚が日本での現在の芸術・文化の位置である。

 日常生活の中で居場所を見いだせないアートに、私達は漠然と近付きにくいイメージを持ち易い。知識や教養がなければ作品を楽しめないという先入観のためだが、好き勝手に捉えてもまた良いのではないか。アーティストが表現しているのは人の感情に立脚している。彼らが伝えてくれるものは想像しなかった不思議や驚きかもしれず、懐かしさかもしれない。気持ちの琴線を揺らすアートを通して私達はいろいろと想いを馳せることができ、そんな気持ちを身近に届けてくれるアート系NPOの活動が注目を集めている。

自分達の箱

・北からは

 1998年12月の特定非営利活動促進法(NPO法)の施行以来、2004年3月31日までに16,160の団体がNPOとして認証され、アート系NPOも着実に増加している。その中でNPO団体として全国で最初に認定された北海道富良野市を拠点とする「ふらの演劇工房」は、アート系NPOの草分けである。

 富良野と言えばドラマ「北の国から」で広く知られているが、ふらの演劇工房も同ドラマの脚本家である倉本聰が主宰する劇団「富良野塾」を背景としている。83年に創設されたこの劇団は富良野市郊外の廃屋を拠点としスタートし、ドラマの追い風もあり演劇を通して富良野文化の基礎を築いていった。そして市民組織が演劇による地域振興を目指して財団設立を準備している時にNPO法が成立したことで、1999年2月に日本初のNPO団体ふらの演劇工房は立ち上がったのである。時を同じくして市が計画していた文化ホールは、ふらの演劇工房が受け皿となり2000年10月に建設された。

 富良野の市街地から車を走らせて数分、小高い丘の上に劇場「富良野演劇工場」は誕生した。豊かな自然に恵まれたこの劇場は今までの行政主体と異なり、富良野市が建設し、ふらの演劇工房が管理・運営する非常に珍しい官設民営方式を採用している。建物は設計時から倉本聰の協力を得て、劇場デザインやコンセプトに制作者側の視点を反映させて公演に適した「創る劇場」となり、304の客席には車いす席や小さな子どもが親と一緒に鑑賞できる親子席を設け「観る劇場」としても配慮が行き届いた文化施設となった。

 民間の特徴を活かした活動では、富良野塾や地元劇団の公演をはじめ、アコースティック・コンサートや伝統芸能の落語、映画上映、シンポジウムまで幅広く行っている。また演じる楽しさを体験できる演劇アカデミーを開催し、鑑賞だけではなく創作も体験することができるのである。富良野演劇工場は、地域住民が楽しみに足を運ぶ場として公共文化施設の役割を存分に果たしている。

・西からも

 神戸では、NPO団体「芸術と計画会議(C.A.P.)」が独自の取り組みを行っている。12人のアーティストで構成される任意団体だったC.A.P.の活動は、アーティストの立場から必要な 美術館を神戸市に提案することから始まった。活動当初に阪神・淡路大震災にみまわれたが、神戸の姉妹都市である南フランスのマルセイユで行われた義援イベント「アクトコウベ(ACTE-KOBE)」で集められた義援金およそ30万円をもとに地域密着型のアートプロジェクトを重ね2002年4月にNPOとして活動を開始した。

 C.A.P.はアートプロジェクトの経験を活かし、神戸市から遊休していた旧神戸移民センターを管理を受託する形で「CAPHOUSEプロジェクト」を展開している。JR・阪神元町駅から歩いて15分、神戸市の中心から少し離れた閑静な場所にあるこの5階建て(現在5階は閉鎖中)の建物の中で、新しい価値観を創造する場を築くという目的で様々なアーティストが集い自由に活動している。

 「音から考えること」をテーマに音と空間、視覚的なものを表現するサウンドアーティスト。大きく轟くような口調で話し始め観客を一気に魅了し、最後には懐かしい気持ちにさせてくれるのは紙芝居。さらにリバプール出身の風景画家やインドネシア中部ジャワの青銅打楽器を使った伝統音楽「ガムラン」で独特のリズムを体感することも出来る。ここでは手作りからデジタルまで多くのアーティストがそれぞれ独自のスタイルで活動しているが、全てのアトリエは扉が開けっ放しでいつでも出入りが自由となっている。そして何時でも訪れてアーティストが作品制作中でも直接話すことが出来るのである。

 発表だけではなく完成までのプロセスも芸術活動の一部としてとらえているC.A.P.は、作品とは違った面白さを発見出来るかもしれない訪問を芸術の探求と普及にも繋げていく。版画などの展覧会や民族音楽の演奏会も開かれ、アートに触れたくても近付き方が分からない、そんな人達にいつも入り口を開いていてくれる。ここでは箱の中のアートのへの入り口をアーティスト自ら作っているのである。


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