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日本におけるカウンセラーの課題と展望

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井野ゆりえ
day
2004-02-21
 

 最近、日本では「カウンセリング」がブームになった。カルチャーセンターや通信講座でも「カウンセラー講座」の類を目にするし、カウンセリングに関する書籍やインターネットサイトも山のようにある。だが、言葉が一般に広まる一方、私達はどれだけカウンセリングやカウンセラーの実態を知っているだろうか。イメージだけが先行している感が否めない。本稿では、カウンセリングの発祥地アメリカと日本のカウンセラー事情を比べながら、日本におけるカウンセラーの課題と展望を考えたい。

 まずカウンセリング及びカウンセラーの定義を明確にしよう。「カウンセリング」は英語の"counsel"(相談・協議・勧めるなどの意)の派生語である。語源的に考えれば、「共に(co-)」何かをするというニュアンスが強い。基本的には、クライアントと一緒に話し合い、より良い道を探っていくプロセスを指すとされる。

 心理的援助には1)治療的(therapeutic)、2)予防的(preventive)、3)進展的(developmental)機能があるとされ、カウンセリングはこれら3つの機能を含んだ援助行為と言える。カウンセリングに関連する言葉としては「サイコセラピー(心理療法)」などがあるが、厳密に言えばカウンセリングはより成長思考的、心理療法は治療志向的なものである。

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 カウンセリングが始まったのは 20世紀初頭のアメリカ。所属する集団の中で個々人がその能力を最大限に発揮できるよう導くための職業指導(ガイダンス)の重要性が説かれはじめ、そのための職業カウンセラーが育成されるようになった。それが少しずつ、職業だけでなく人間の人格全領域での適応問題に携わるカウンセラーが必要とされるようになっていった。

 つまり、患者への進路指導的要素が強かったカウンセリングが、徐々に患者の心に共感を示すことで人格的問題を解決していく方向にも見直されていったのである。現在のカウンセリングは、いわばガイダンス的側面と心理療法的側面を併せ持った支援行為とも言えよう。

 次に、「カウンセラー」を定義すると、クライアントとの面談や対話を通して治療的、予防的、および進展的な心理臨床的援助を行う心理の専門家となるだろう。カウンセリングを効果的に行うためには、相手の心理状況のみならずカウンセラー自身の精神状態や家庭や学校などの外的環境への理解など、心理学を中心とした幅広い知識が必要とされる。

 カウンセラーは時にクライアントの生き方を左右するほどの影響力を持つ存在である。そのため、その影響力に見合う訓練と経験を必要とし、技術的にも人間的にも豊かな専門家であることが望まれる。

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 日本社会において、カウンセラーの重要性は年々高まっているようだ。現在、日本におけるカウンセラー資格には、1)日本臨床心理士資格認定協会による「臨床心理士」、日本カウンセリング学会による「認定カウンセラー」、日本教育心理学会による「学校心理士」、産業カウンセラー協会による「産業カウンセラー」などがあるが、どれもここ10数年で急速に設けられている。

 加えて、文部科学省のスクールカウンセラー活用事業の経緯を見るとカウンセラーに対する需要の高まりが分かるだろう。1995年、旧文部省は調査研究事業として臨床心理士を学校に派遣する試みを始めた。この試みが不登校などの問題改善に一定の効果を挙げたため、2001年には活用事業としてより重点が置かれることとなり、現在は2006年をめどに全公立中学校へのカウンセラー配置を目指している。

 スクールカウンセラーを筆頭にカウンセラーの需要が高まっているのはなぜなのか。その理由やスクールカウンセラーの現状を、国際基督教大学の心理学助教授で臨床心理学やガイダンス・カウンセリング、青年期の心理発達的諸問題や親・教師への臨床的援助などを専門とする西村馨氏にお話を伺った。


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