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「ベルリン中近東事情 ケバップ対シュヴァルマ」 (上)

文化・東西南北   Vol.2

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たかもとみさこ ドイツ・ベルリン
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2002-08-02
 

ベルリンの小トルコ クロイツベルク

 ドイツの首都ベルリンにあるクロイツベルク地区には、左翼のお兄さんたちや、外国からの移民がたくさん住んでいる。ここは学生運動時代の頃から政治色が強く、メーデーの日の夕暮れ時には、毎年儀式のように放水車が出動したり、大型のゴミ箱から炎がでたりのお祭り騒ぎになる。

 ベルリン市内を東西に走る地下鉄の1番線で、そのクロイツベルク地区に向かうと、東の終点駅から5つ前くらいで、車内の乗客層がガラっと変わるから面白い。話される言語も突如として多様になり、西欧言語の知識だけでは、何語なのか判断できない言葉を交わすオリエンタルな人たちがどんどん乗り込んでくるのだ。おのずと黒髪人口が車内で増加し、平均身長も低くなるので、我々アジア人にとっては、どことなく馴染みやすい雰囲気となる。



 トルコ人の移民数は1960年代からドイツでかなりのスピードで増加し、現在ベルリンでその2,3代目の若者達は、自宅でのイスラム文化とドイツ社会の狭間で、自らのアイデンティティーを確立しようと日夜戦っている。ドイツに始めて移民した彼らの両親や祖父母の世代では、トルコ語が唯一の使用言語ということも多々あり、トルコ人ゲットー化した一角で、ドイツ人と直接関わる必要なく、暮らしてきた。2代目になると、ドイツの学校に通い始め、ドイツ社会に向かうようになり、イスラム文化のありかたと、ドイツのキリスト教・西欧文化の間のギャップを抱えてしまうことになる。

 女の子達は、イスラム教徒としての女性のあり方を両親から求められるし、男の子達は家に帰れば、権威をもった父親に押さえ込まれるのが嫌で、道でぶらぶら友達と時間を潰す。さらに、自宅に「小トルコ」を持つ彼らの生活の場所が、クロイツベルクのような、オールタナティーブな地域だからたまったものではない。昼からビールを飲んで、失業保険をもらいながらマリファナを吸い、外でプラプラと自由を満喫しているドイツ人たちを横目に見ながら、2代目のトルコ青少年達は、自宅の「小トルコ」文化との狭間で、自分の位置を手探りしながら定めないといけない。

イスラム教徒の同性愛事情

  クロイツベルクには「SO36」というクラブがある。このクラブの名前は、昔の郵便番号下二桁からつけられている。このクラブでは、定期的にホモセクシャルのためのパーティーが開催され、その開店前にはホモもヘテロも老若男女分け隔てなく長い列を作って大盛況だ。

 このクラブ「SO36」では、トルコ人のホモセクシャルのパーティーもあり、トルコのポップ音楽が流れる中、隠れ同性愛者の青少年達がところ狭しと、楽しくお酒を飲んだり、踊ったりしている。そのなかには、両親の圧力でやむなく結婚をした中年男性、あるいは友達にも自分の同性愛を隠している青年がごろごろしている。秘密を持った彼らは、クラブ「SO36」でのささやかな自由を満喫するために、命がけだ。

「親父の耳にでも入ったら、殺されるからね。」

 ドイツ人男性の彼氏を持って、親父に殴られる女の子もいれば、トルコ人同士のお見合い結婚を断って半殺しになるなんて、残念ながら日常なのだ。移民第1世代にとって、西欧のなかで、「小トルコ」を維持していくには、社会とのコンタクトを切り、民族や宗教へのこだわりを子供達に強制していくしか道はなかった。(続く)


「ベルリン中近東事情 ケバップ対シュヴァルマ」 (下)

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