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ホームレスの自立支援~薄っぺらでも定価200円の月刊誌~

ビッグイシュー日本版

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溝井祐樹 東京都江東区
day
2004-04-08
 

ホームレスの仕事づくり

 先日、知人からひょいと、薄っぺらな冊子をもらった。サングラスでこちらを睨みつけるヒップホップ・アーティスト「Outkast」が表紙を飾っていたが、そのとき僕は忙しかったし、特別興味が湧かなかったので机の脇にそのままほうっていた。あぁ、また新しいフリーペーパーが出来たのか、「ビッグイシュー日本版」だって? 外国風のカッコいいデザインだな、と思っただけ。

 それが、今日、昼飯時のヒマ潰しのテキストとして、あらためてその冊子を見てびっくり。なんと定価200円。しかも、「200円のうち、110円が雑誌販売者の収入になります。ビッグイシューのIDカードをつけた販売者からのみ、お買い求めください」とある。表紙の右肩には、「ホームレスの仕事をつくり自立を支援する」。特集のタイトルは「みんな うつ病?---うつは生き方を変えるチャンス」。なんじゃこりゃ!?

 ページをめくると、目次の脇にきちんと説明があった。

『ビッグイシュー』は英国で大成功し世界(24の国、50の都市・地域)に広がっている、ホームレスの人しか売り手になれない魅力的な雑誌のことです。ビッグイシューの使命はホームレスの人たちの救済(チャリティ)ではなく彼らの仕事をつくることにあります。具体的に、最初は一冊200円の雑誌を10冊無料で受け取り、この売り上げ2,000円を元手に、以後は定価の45%(90円)で仕入れた雑誌を販売、55%(110円)を販売者の収入とします。
 なるほど、わかりやすい。「救済(チャリティ)」ではなく、「仕事をつくること」が目的なのか。つまり「助けてあげる」のではなく「支援」がしたいということだな。金持ちでもなんでもない一般市民に私財を投じさせる募金やチャリティ、特に街角で大声を出して子供たちが訴えるやり口にずっと違和感を覚えていた僕にとって、この考え方はすんなりと共感できた。

 しかし、この薄さで定価200円は、高いんじゃないの? 中身だって、所詮フリーペーパーに毛が生えた程度でしょ? などと思ったら大間違い。アーティストへのインタビューや、ぱっと見ポップなデザインとはうらはらに、視点がとてもユニークで、記事も読み応えがある。

 登場するアーティストは格好や人気で選ばれたのではなく、「社会からはじかれた」立場から表現するストリートカルチャーの体現者だ。「グラフティアート」の記事、「うつ」の特集、「販売員の山ちゃんへのインタビュー」など、飾り気なく綴られた文章はどれも、ホームレスの人々の心理や人間性を、ごく自然に感じさせてくれる。

 読んでいて僕は、電車のホームで、駅の出口で、新宿の道端で、今まで何を見て、何を感じていたのか? と自分自身に問い直したくなった。フツーに学校に通い、フツーに会社に勤める人たちと、ホームレスの人たちとの間には「目に見えないがはっきりとした境界線」があると思い込むようになったのは、いつからなのだろう。

 機会があったら、ホームレスを「支援」したいと願う創刊の精神がベースになった、この雑誌ならではの視点にぜひ触れてみて欲しい。他にはない視点と、気負いのない、率直な文章。この内容に、200円という定価は決して高くないと思う。(って、実は僕は買ってませんでした。ははは......。)


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