自閉症の息子
私の息子は、1987年生まれで今年18歳になる。中~重程度の自閉症だと診断されていて、言葉は単語を2つか3つ並べた二語文(助詞抜き)を話す程度で、相互の滑らかな会話は出来ない。ただ、人の言っていることは大方理解しており、ちゃんと説明をすれば指示は通る。
こんな抽象的な説明ではまどろっこしいので具体的に説明をすると、例えば「お散歩行こ」「お使い行こ」「バス乗る」というような表現をし(しかも一本調子で)、「おはよう」「ただいま」「お帰り」「いただきます」というような軽い挨拶はするが、往々にして促されてから言うことが多い。これはたぶん横着なせいかと思うが。
家庭では、「お風呂の準備をしてきて」と言うと、バスタブに栓をし蓋を閉め、給湯器のリモコンのボタンをポンと押す。食事の前の箸や食器を並べたり、片付けたり、冷蔵庫から卵やケチャップとか野菜とか、名前がわかっている食材を頼めば出したり、テーブルを拭いたりといった幼児でも出来るようなことではあるが、簡単な手伝いならやっている。しかし親にとっては、こんなに小さな手伝いでも、子どもの大きな成長の証であるので非常に嬉しい。
自閉症の特徴
自閉症の特徴とは、社会性(対人関係)の障害、コミュニケーション障害、行動・想像力の障害といった3つの広い範囲での発達障害を伴うことであるといわれている。
これらも具体的に説明すると、まず、彼らは人よりも物に関心が強いことが多い。視線が合わないとか、人の気持ちが読めないといったこと、あるいはある決まった「物」に執着するなどが社会性の障害といえる。
人に関心がないから言葉の発達も遅れるのだろうが、饒舌に喋れたとしても、それはテレビCMのフレーズであったり、その場にはまったく関係のない内容であったりというのが、コミュニケーション面での障害があるとされる所以である。
行動・想像力の障害とは、たとえば"ごっこ遊び"が苦手であるとか、いわゆる「こだわり」といわれる同一保持行動などが見られることである。
「こだわり」をもっとわかりやすい例で言うと、毎日同じ服しか着たがらないとか、目的地へ行くのに自分で決めたルートでしか行こうとしない(違ったルートを強いるとパニックになる)、ある決まった行動をしなければ次の行動に移れないなど儀式的な習慣がある、といったところであろうか。
とはいえ、それぞれの表れ方は千差万別であるし、必ずしも全部にチェックマークが入るとも限らない。それにだんだん年齢が上がるにつれて、特徴的行動が目立たなくなったり、無くなったりすることも多い。
息子も、このほとんどにチェックがつく典型的な自閉症であるけれど、基本的には穏やかで、逃げ出したり迷子になったりという行動はなかったので、出来る限り外へ出ていろんな体験をさせてきた。多くの人とふれあい、旅行へも行き、大好きな音楽や水彩画をやった。
ただそれは思春期という人間として大きな転換期を乗り越えるための、エネルギーを充填させる天の配慮だったのかもしれない。
思春期という鬼門を迎えてから、私は障害児を持つ過酷さを思い知らされ、親として本当の意味での忍耐力や決断力を試されたように思うのだ。
誰もが自分らしく生きるために 第七話 ~若葉養護学校レポート その3 ~
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誰もが自分らしく生きるために 第四話
誰もが自分らしく生きるために 第三話
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