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ナバホ国部族政府からの手記 第五章 ~ スウェット・ロッジ(Sweat Lodge) ~

ナバホ国で働く日本人アートセラピスト~北川のぞみ~

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北川のぞみ アメリカ
day
2004-11-08
 

スウェット・ロッジ

 私の働く治療プログラムでは、ナバホの伝統的なヒーリング方法が取り入れられている。もっとも代表的なものが「スウェット・ロッジ」である。スウェット・ロッジとは浄化と癒しの儀式のために使用する場所で、柳の木の枝で作った枠組みに毛布などをかけて作られる丸いテントのようなものである。その中の地面中央に穴を掘り、そこに真っ赤に焼けた石をいくつも入れて水をかけ、蒸気を発生させる。

 入り口は毛布で塞ぐので、中はサウナの50倍くらい熱い。通常男女別に6~7人で入り、真っ暗闇の中で汗を流しながら歌や祈りを捧げる。一緒にその熱さに堪えることによって、強い連帯感が生まれ、その中でいろいろな考えや感情をシェアする。濃密なグループセラピーのようなものである。ベトナム戦争帰りのナバホ・インディアンの人たちが、このスウェット・ロッジによってかなり癒されたとのこと。

  第一章でご紹介したSun Danceセレモニーの間、私もスウェット・ロッジに3回入り、ナバホ国に引越してきてからも知人宅で1回参加させてもらった。私がSun Danceの会場に着いた初日に生まれて初めて入ろうとしたとき、何人かに止められた。理由は私がスウェット・ロッジのことを何も知らず、熱さで倒れるかもしれないと思われたからである。

 しかし、私はいつものようにどうしても入らなくてはいけない気持ちに駆られ、制止を振り切って入ることにした。そこには苦しくても絶対に途中で外には出ない、という覚悟があった。その時点ではスウェット・ロッジのことは何も知らなかったのだが、何故か入る前にそういうコミットメントが必要だということを感じていた。

 一緒に入る女性に基本的な作法を教えてもらった。入り口では時計回りに1度回り、お辞儀をして中へ入る。中に入ったら、石を置く穴を中心に時計回りに円を描いて移動する。最初に入ったときは、私が初めてで熱さに堪えられずに外に出る可能性があるから、と入り口近くに座らされた。

 通常は男女別にメディスン・マン、メディスン・ウーマンがスウェット・ロッジの進行役を務める。進行役は焼け石を穴に配置し、(外で火を守る役目を果たす人もいて、その人が石を入り口まで運んでくれる。)その焼け石にシダー(杉の一種)の葉をかける。このシダーはナバホの儀式には絶対欠かせないものである。

 細かく揉み解された葉を焼け石にかけると、とてもいい香りがする。このシダーが焼けるときに出る煙と香りに浄化作用があると考えられている。その後焼け石に水をかけると狭いロッジの中に熱い水蒸気が充満する。この熱さは半端な熱さではなく、全身から汗が噴き出してくる。不謹慎な言い方をすると、「我慢大会」のようである。その間、進行役は歌を歌ったり、1人1人に語りかけたり、伝統的な教えを伝授してくれたりする。

 真っ暗闇の中で同じ苦しみを分かち合うことによって、姿も見えない人たちに対する親近感、連帯感が生まれる。ちょっと外ではなかなか話せないような個人的なことをシェアする人もいれば、感極まって泣き出す人もいる。私は歌が歌えないので、ずっといろいろなことを祈っていた。

 終わって外に出ると、ものすごい爽快感を感じた。心身の老廃物がすべて洗い流されたような、まさしく浄化された状態だった。ある女性が私のことを心配して外で待っていてくれたのだが、私の最初の一言、「ああ、気持ち良かった!」を聞いて唖然としていた。彼女は初めて入った後、眩暈でしばらく立てなかったそうである。

職場のスウェット・ロッジ

 私の職場にはスウェット・ロッジが男の子用と女の子用に1つずつある。私たちのプログラムにはフルタイムのメディスン・マンがいて、週に1回クライアントのためにスウェット・ロッジで儀式を行う。ほとんどのナバホのティーンエージャーはこれが初めての機会のようである。堪えることを知らないティーンエージャーがここで「忍耐」を学ぶ。

 自分達の文化、スピリチュアリティについて何も知らなかった子供たちがスウェット・ロッジによってそれらを学ぶのはすばらしいことである。私たちの治療プログラムは薬物・アルコール依存症の治療だけでなく、こういう形でコミュニティにも貢献している。


ナバホ国部族政府からの手記 第七章 ~住宅事情~
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ナバホ国部族政府からの手記 第四章 ~ アイデンティティについて ~
ナバホ国部族政府からの手記 第三章 ~ 荒野と精霊 ~
ナバホ国部族政府からの手記 第二章 ~ シップロックの治療院で ~
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