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ナバホ国部族政府からの手記 第二十章 ~ディネ(ナバホ)の言葉、名前 ~

ナバホ語について

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day
2006-05-26
 

ナバホ語について

 ナバホの地に住んで既に2年以上経つというのに、私はナバホ語を少しも話すことができない。知っているのはごく小数の単語のみである。同僚とは普段英語で会話するので、ナバホ語が話せなくも不自由な思いをすることはないからだ。

 ナバホ語のクラスは地元の大学で取ることができる。シップロックにはナバホ族立大学であるディネ・カレッジがあり、この辺で最も大きい街ファーミントン(と言っても4万人しか住んでいない)にもコミュニティカレッジであるサン・ワン・カレッジがある。両方の大学でナバホ語のクラスはオファーされており、私も取ることを検討したことがある。残念ながら時間帯がどうしても合わず、断念した。

 しかし、クラスを1つや2つ取ったからといって話せるようになるものではない。(英語を中学、高校で6年間勉強しても話すことができない日本人を考えてみて欲しい。)ナバホ語はかなり難しい言語である。書き言葉はなく、発音がアルファベットで表記されているだけだ。

 発音を聞いていると、韓国語とドイツ語が合わさったような感じに聞こえる。いわゆる「有気音」が多く、日本人にとってはとてつもなく発音が難しい。以前説明した「クラン」はナバホ語で「ケッ」(有気音を伴う)と言うが、私が発音すると同僚は笑って「それじゃあ、『靴』だよ」と言う。

 私がときどき躊躇いながら使う言葉は「ヤァッティ」(「こんにちは」の意)だが、これも発音に自信がない。あとは「ホッジョ」という言葉もあるが、これは英語でどういう意味なのかディネの人に尋ねると説明に45分くらいかかる。平たく言うと「自然と調和して生きること」だそうだ。

 面白いのは、私の名前「のぞみ」がナバホ語のある単語に非常によく似ていることだ。私が自己紹介する度、ディネの人びとは「それは私たちの言葉では『美しい』という意味なんですよ」と言う。この言葉は正確には「ノジョニ」と発音されるが、早口で発音するとほとんど同じに聞こえる。最近退職してしまった年配の元同僚は、私の名前をどうしても覚えることができず、いつも私のことを「ノジョ」と呼んでいた。すばらしいニックネームである。

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 ディネの人びとの名前は普通のアメリカ人と同じで、ジョン、マイク、マリー、ステファニー、など一般的な英語の名前だ。しかしラスト・ネーム(姓)はディネ独特の名前もある。ビゲイ(Begay、またはBegaye)、ヤーズィー(Yazzie)、トデチーニ-(Todacheeney)などが代表的なものだ。

 ビゲイとヤーズィの語源はわからないが、トデチーニーはクランの名前に由来するようだ。「にがい水のクラン」をナバホ語で言うと、同じ発音になる。こういった姓でその人のクランや出身地がある程度わかるようだ。ディネの人びとはメキシコ系の人と結婚することも多いので、スペイン系の名前も結構多く見受けられる。ディアス、サンチェス、ロドリゲスなどの姓が代表的なものだろう。

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  40代~60代のディネの人びとはほとんどバイリンガルだが、70代以上になるとナバホ語しか話せない人が多い。私の働くプログラムではクライアントの法的な保護者が祖父母ということも時折ある。その場合、私はナバホ語で対応できないので、バイリンガルの同僚に担当してもらう。それくらいしか不自由を感じることがなかったので、ナバホ語を学ぶ切迫した必要性はなかったのだが、あと3~4ヶ月しかナバホの地にいないことを思うとちょっと後悔の念が湧いてくる。


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ナバホ国部族政府からの手記 第十四章 ~ ナバホ国内の政治・宗教観 ~
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