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市民によるコミュニティバスの可能性

サンクスネーチャーバス

leader from from
三沢健直 松本市
day
2001-08-09
 

コミュニティバスとは

 バスや電車と、タクシーや施設送迎バスなどとの中間に位置する都市型の運輸機関として、コミュニティバスと呼ばれる方法が90年代より注目を集め、今や全国で行われ始めている。通常は住宅密集地域か、あるいはモータリゼーションの進展に伴う廃止路線区において、既存のバス路線から取り残された地域と、駅などの中心市街地を結ぶような形で運行される。その特徴は、路線の走行距離を短くし、少ないバス保有数でも運行頻度を上げること。さらにバス停の間隔を短くして利用者の利便を図ることである。利用者の自宅からバス停までの距離が大きく短縮されることにより、高齢者、障害者にとって便利な移動手段となる。最近では車高が低く、乗り降りの楽なノンステップバスを使用する例も増えてきている。

 コミュニティバスは、交通不便の解消と、高齢者や障害者の利便性の向上だけでなく、交通渋滞を解消することによって地球温暖化の防止にも役立つと言われている。環境に優しいエンジンを利用した車両を使用する例もある。

 またバスのデザインをカラフルなものにしたり、シックなレトロ調にしたり、ニックネームを決めたりと市民が親しみと愛着を持てるようにすることも、市民の協力を得るために重要である。

サンクスネーチャーバス(目黒区自由が丘)

 自由が丘のサンクスネーチャーバスは、市民(任意団体サンクスネーチャーバスを走らす会)が運営するバスとして、とても参考になる事例である。駅から少し離れた、歩いて10~15分程度の距離にあるガーデニング・ショップのサンクスネーチャーガーデンと近隣の商店オーナーたちが中心となって、1997年4月から地域住民と共に運営している。運営を会費制としているところが特徴であり、会費は商店が加入するメジャーエリアサポーター(\157,500/月)、キーエリアサポーター(\52,500/月)、エリアサポーター(\10,500/月)と個人サポーター(\6,000/年)となっている。エリアサポーター数は2001年7月現在20社である。

 会員の商店に訪れる買い物客とスタッフが無料で乗車できるのだが、もちろんウィンドウ・ショッピングの客も乗車できるので、実際には路線付近に用事のある人は誰でも無料で乗ることが出来る。また、バスの路線が会員商店を経由して、駅から15~30分程度の住宅地域まで達しているので、この地区に住む住民、とりわけ高齢者には非常に便利な足となっている。個人会員は2001年7月現在23人であるが、杓子定規にバス停にこだわらず、自宅から最も近い場所で降ろして貰えるので高齢者などにとっては非常に便利だ。路線上に自宅のある人などはドアの目の前で降ろして貰えるのである。

 路線の距離は4.4㎞、30分間隔で、12:00~21:00に15本、車両は一台で、水曜以外の毎日運行している。バス停は6個あるが、バス停がない場所でもドライバーに合図をして乗る事が出来る。乗客数は60~110人/日程度、最高で2591人/月と記録されている。

 運行は(株)マイクロバス・センターに委託しているが、ドライバーはサンクスネーチャーバスを専門に運転しており、よく利用する乗客とは顔なじみになっていて、乗客の少ないときなど荷物を運ぶのを手伝ってくれることもある。

 車両は15人乗りの小型バスで、おしゃれなレトロ調。植物性廃食用油(天ぷら油)のリサイクル燃料VDFを利用したもので、バス停のある立源寺で近隣から廃油を回収している。排ガス中の黒煙は軽油より少ないものの、窒素化合物はやや多く含まれ、まだ改良する必要があるそうだ。とは言え、主に一般家庭からの廃油のリサイクル・システムとして非常に有効である。価格は80円/リットルだそうだ。性能にはまったく問題がなく、坂道でも通常の車両と同じように走行している。運行経費は約90万円/月、スタッフは2人で週二日勤務、(株)サンクスネーチャーからの出向という形になっている。

 2000年までは赤字続きだったが、2001年はエヴィアン社の協賛金150万円を得て黒字転換した。バス運行のための公的補助金は受けていないが、上述のように廃油のリサイクルを行っているために、(財)省エネルギーセンターから省エネルギー事業のための助成金をこれまでに二回受けている。平成10年度にはこの助成金45万円を利用してバス停、ポスターを設置。平成12年度には再び助成金を受け、近隣の宮前小学校の生徒8人による社内放送の設備を整備した。実際に聞いてみると、心の休まるアナウンスである。

 設立までの経緯を見ると、1994年の11月に構想して以来、1997年4月の運行開始までの約2年半の間、地域への協力呼びかけや運輸省との話し合いなど着実に進めている。1994年12月に、後に運営委員会となるメジャーエリアサポーター4社の参加が決まったことが計画を現実的なものとしたと思われる。1996年5月に運営委員会が開催され、そこで行政や関係団体に頼らない独自の自由な市民活動であることを確認している。その後の、自由が丘商店街振興組合、世田谷区の環境団体、リサイクルめぐろ推進協会との連携や前述の宮前小学校との協力など、地域との繋がりを大切にしてきたことが、このバスを成功させている要因の一つだろう。

 また会員制の面で面白いのは、運行に遅延があったときなどに、各バス停を設置している会員にその連絡が行くと、すぐにその情報がバス停に張り出されるということである。最近ではITを使ったバス運行の情報化という事が言われるが、このように地域とのヒューマン・ネットワークによってITに匹敵するような情報提供を行うことが出来るということは非常に参考になる。

参考ポイント

 市民がバスを運行するために参考になる点は、第一に地域の商店あるいは個人からの協力を得ていることである。行政のコミュニティバスで知られている武蔵野市ムーバスのように乗車運賃を徴収しているところでも、最初の3年間は相当の赤字を出している。当初から乗車運賃だけで経営を考えることは難しいし、収益の見込みがあると分かればすぐさま競争に晒されることになるだろう。従って、コミュニティバスを利用するという姿勢ではなく、主体的に参加するという姿勢の地域の出資者(会員)を集めることが最も重要だと思われる。

 市民が愛着を持てるために独自の美しいデザインを考えたり、VDFエンジンのような省エネルギーバスや、電気自動車のようなクリーンエネルギーのバスを利用することも市民の協力を得るために有効だろう。

 第二に、経費を出来るだけ低く押さえることである。ムーバスは定年退職者などを使って人件費を低く押さえる努力をしている。しかし、もし市民が本当に必要とするバス運行であるならば、地域の住民によるボランティアに近い形での運行も可能なはずである。あるいは今後増加すると思われる学生インターンに任せることもできる。もし認可を道路運送法第80条で得ているなら、1種免許で運転することができる。この免許は保有者が多いので人件費を抑えることが容易となるだろう。

 いずれにせよ地域の市民が主体的に参加するような形での経営であれば、市民によるバス運営は十分可能である。

 最後に、英国の「ポストバス」について触れておきたい。英国の山間部や遠隔地では、郵便局の輸送車を利用したポストバスと呼ばれる乗合バスが1968年から利用されている。所要時間は4分程度のものから4時間程度まで、車両も4座席のものから16座席のものまで様々である。日本でも今後の規制緩和に伴って様々な実験を行うことが可能になりつつある。ポストバスのように、より新しい発想で構想することが求められるだろう。


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