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日本のパパはフィリピンの子どもたちを幸せにできるか

JFCを支えるネットワーク

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玉村麦太郎
day
2004-11-30
 

日本=フィリピン国際結婚の子供たち

 パロパロ…。どこか不思議なこのことばはタガログ語で「浮気者」を指すのだと、十年ほど前に知り合いから教わった。フィリピンパブ全盛期。知り合いは上野あたりのパブにどっぷりハマりこんでいた。

 ビザが切れ、帰国途中の成田から電話してきたフィリピーナもいたらしい。「パロパロ。私がいないあいだに浮気をするな」と、電話口でささやいた。「フィリピン女性には、日本人にはないかわいらしさがある」と、まんざらでもない様子で語っていた知り合いの顔をいまも思い出す。

 そのような付き合いが高じてゴールインするカップルも少なくない。
 ここ数年、日比カップルの国際結婚の数は年間6000件程度で推移してきたが、昨年は9000件と急増した。いっぽうで離婚も多い。年間4000件程度というから、結婚したうちの半数が、もろもろの事情で離婚してしまうようだ。正式に離婚しなくても、夫が突然日本に帰ってしまうこともある。子どもの養育費は途絶え、連絡も取れなくなってしまう。フィリピンに残された妻子は貧困にあえぎ、母は「シャパゆき」、子どもは「ハポン(日本人)」と呼ばれてからかわれる。

 この事態をなんとかしようと1994年5月にスタートしたのが「JFCを支えるネットワーク」(東京・千代田区)だ。JFCはJapanese-Filipino Childrenの略。フィリピン女性から相談を受け、日本の父親との交渉を支援している。相談にやってくる母親の数は年々増え、昨年一年間は受付を一時中止しなければならなかったほどだという。実際、どの相談も一朝一夕に解決できるようなものではなく、作業には絶え間ない根気と忍耐が必要とされる。

 「養育費を送って欲しい」「親権を持ちたい」「子どもを認知してほしい」…
 母親たちのさまざまな期待に応えるためには、まず父親の居所を調べなければならない。だが、いきなり暗礁に乗り上げてしまうことも少なくない。過去10年間に引き受けた640件の相談のうち170件、つまり四分の一以上で父親の居所がつかめなかったという。息子がフィリピン女性と結婚していたことを初めて聞かされて、驚きとまどう親たちと出くわすことも多い。

 また、フィリピンで婚姻届を出していても、日本では届出がされていないケースが非常に多い。その場合、婚姻届や国籍の取得、子どもの認知などの手続きを一からはじめなければならない。

 ラッキーにも男性の連絡先がわかったら、手紙や電話でコンタクトを取る。しかしそれを快く受けてくれる男性は100人に1人いるかないかだという。

 そのとき、父親は何を思うだろう。
 後ろめたさだろうか。あるいは、他の女性と再婚してしまっているなら、いまの生活の崩壊だろうか。

 「冗談じゃない、こっちがだまされたんだ!」と激昂し、電話口でどなりはじめる男性もいる。
 多額の借金を抱え「とても養育費など払えない」と肩を落とす男性もいる。
 「過去に充分な生活費を渡しているから、自分はもう義務を果たしてしまった」と開き直る男性もいる。
 やむをえず法的手段に訴え、かつての幸せな生活からは想像がつかないドロドロの人間模様を繰りひろげなければならなくなることもある。

 「JFCを支えるネットワーク」事務局の伊藤里枝子さんは、現場に立ち会ってきた体験から、ほんとうに日本人に理解してもらいにくい問題だと実感しているという。

 女性にとっては「男がやったこと」であって、自分に関わりの無いことだとしか思えない。
 男性は男性で「なぜ男だけが責められなければならないのか」「なぜ市民団体が男女の関係に口を出すのか」と考える。
 もちろんそのとおり。だが伊藤さんは言う、「子どもに罪は無い」と。

 たいていの父親は、子どもから送られた手紙や写真を見せられると感動的な、なにか言葉では言い表せない表情をするそうだ。

 しかし、むかしのように景気がいいわけでもない。
 羽振りがよかったころの家族団らんの生活。それは、多くの父親にとって遠い過去の夢になりつつある。逆にいうならば、景気が回復するだけでも、幸せを取り戻せる親子がもっと増えるのではないか。JFC問題はまさに、ここ十数年間の日本の縮図だ。

 これだけ相談が多いとなると、もはや一部のパブ通いの男性がおこした失敗談ですまされない、れっきとした国際問題だと言えるだろう。小泉首相は視察に行ったほうがいいかもしれない。もちろん、フィリピンパブのほうではなく、ケソン市にあるJFCのための施設「マリガヤハウス」にである。そこでは6年前から、カウンセリングや日本語教育など、母子の自立支援活動が行われている。
 これまでの相談の解決率は15%。ひとりでも多くの子どもたちが幸せになれる日を祈りたい。

 今年十周年を迎えた「JFCを支えるネットワーク」は、年末に書籍『(仮)クリスマスの贈り物』を記念出版する。詳しくは「JFCを支えるネットワーク」まで。

「JFCを支えるネットワーク」
TEL/FAX 03-3264-4272
http://www.jca.apc.org/jfcnet/
jfcnet@jca.apc.or


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