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Children Overboard事件 ~ジャック・スミス氏(Project SafeCom)インタビュー

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飯野陽子 オーストラリア
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2004-05-25
 

 2001年12月に設立されたProject SafeCom Inc.は「戦争、社会的、政治的変動、地球温暖化による気候の変化、環境の変化などに伴い、居場所を失った人たち-人種、性別、信念、国籍を問わず- のための西オーストラリアにおける安全なコミュニティ」をビジョンとして掲げ、地域開発プロジェクトに取り組もうとしている。

 西オーストラリアのどこかに土地を手に入れ、有機農業など持続可能な農業、パーマカルチャー、資源再利用、遺伝子組み換え食品などで問題となる食品安全、そして人権、アニマル・ライツが実現されたワーキング・ファーム・コミュニティを作ることを目指している。

  Project SafeCom Incの創立者であり、コーディネイターであるスミスさんの難民運動へのコミットメントはChildren Overboard事件がきっかけとなった、と言う。

 Fair Go(すべての人に平等のチャンスを与える)を美徳としてきたオーストラリアで、社会正義を求める声を大きくし、Project SafeCom Inc.を通じて難民たちを受け入れる場、難民たちがオーストラリア社会に貢献できる場を提供していければ、と提案する。

 スミスさんはパースの北180キロの人口4500の小さな田舎町、ナロジンに住み、Project SafeCom Inc.の幅広いネットワークを基盤とし、メールによるキャンペーン活動やロビーイングを行う他、各地で難民問題への意識を高めるイベントも行っている。

 現在アムネスティーとオックスファムと共同で、今年の6月の世界難民デーのイベント計画を進めている最中である *1。

 Children Overboard事件に関連し、オーストラリア・メディアの話をメインにお話していただいた。

‐ スミスさんは80年代の初めに、オランダからオーストラリアに移民していらした、ということですが、その理由は?

 1979年にバックパッカーとしてオーストラリアを訪れたことがきっかけです。ヨーロッパや他の地にはない多くの《展望》があり、オランダよりも何百倍も大きい土地に少ない人口、というこの《空っぽ》の国にとても惹かれました。手付かずの自然が(特に西オーストラリアには)たくさん残されているのは本当に驚きでした。

‐ Children Overboard事件後、難民アドボカシー・グループが増えたといいますが、この事件がオーストラリアの人々に及ぼした影響とは何でしょうか?

 この事件は、オーストラリアの人々が日常生活の《時計》を止め、この事件やハワード政府の世論の政治的操作を許してしまったという事実に対して声を上げようというきっかけになりました。

 オーストラリア中で沸きあがってきた激しい怒りの声の一部とならずにこの事件をやり過ごすことはしまい、と心に誓ったのは私一人ではありませんでした。

 人々は自ら事実を見つけ出し、政府に手紙を送ったり、抗議運動を計画するなど、一時は新しいキャンペーン、抗議団体が毎日のように設立されるかといった勢いでした。

 この事件の後6ヶ月でおよそ150のウェブサイトが抗議グループやその連合団体によって設立されました。多くのサイトは時間とともに消えていきましたが、他のグループがその後を継いで誕生しています。

‐ マードック氏2 による多国籍メディアのオーナーシップやコントロール、センサーシップなどが問題視されていますが、現在のオーストラリア・メディアのあり方について、どうお考えですか?

 数ヶ月前にメルボルンで著名な勅選弁護士であるジュリアン・バーンサイド氏が、ヴァンストーン移民省大臣の在席する中、政府の強制収容政策3 がオーストラリアの国内法から見ていかなる《人道に対する犯罪》を犯しているか、という趣旨のスピーチをおこないました4 。

 観客の中には新聞社のシニアレポーターもいました。後日の新聞には移民省大臣のスピーチについての記述はありましたが、バーンサイド氏のスピーチには一切触れていませんでした。その後もバーンサイド氏が同じ内容のスピーチをする機会が何度かありましたが、それを報じた新聞はひとつもなかったのです。

 これはオーストラリアのメディア機関が、国際法に反するもの、と多くの人が考えている政府の難民政策といった重要な問題をきちんと伝えていない、という一例です。

 オーストラリア・メディアにおいて、独立した見解や意見が欠けていることの大きな理由のひとつに、公平かつ倫理的で、偏りのない報道を追求することよりも、広告主や株主の顔色を伺わざるを得ないという営利企業としてのメディアの成長にあります。

 結果として、新聞、ラジオ、テレビはますます株主や広告主の見解を代弁していくことになるのです。マードック氏が多くのメディアの所有権を握っており、マードック・ネットワークの有利なメディア政策を進めていくのを見込んで、政府批判を行わないように、という暗黙の了解があるのです。

 また時間及び経費がかかることから、新聞やテレビの調査報道部門はますます削減されています。

 メディアも世界中に広がる"即座に得られる満足感"を満たす文化の影響を受けており、ある意味、ファスト・フードが、時間をかけて調理し、テーブルで共に食事をするという儀式を人々から奪い去っているのと似ています。そしてそのようなメディア機関においては、若いジャーナリストたちは倫理的で、事実、調査に基づいた公平な報道の原則を学んでいく機会がないのです。(つづく)

1.世界難民デーにおけるイベント計画の詳細 http://www.safecom.org/wrd2004.htm

2.ルパード・マードック氏は12あるオーストラリア各都市の日刊紙のうちを7紙を、10ある日曜版のうち7紙を所有していることから、メディアが一極化、巨大化されていくことに懸念を示す声も多い。アメリカのメディア買収を目的として、オーストラリア国籍を捨て、アメリカ国籍を取得するなどした。

3.オーストラリアと日本は庇護申請者を強制収容する割合はヨーロッパ諸国、アメリカ、カナダと大きく上回っている。
2004年2月現在約977名の成人、174名の子供たちがオーストラリア内の収容所に収容され、さらに277名の庇護申請者がナウルに収容されている。

4.http://www.safecom.org/burnside4.htm


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Children Overboard事件~オーストラリアのボート難民たち~

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