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移住労働者と性産業 -自ら動けない女性へのアウトリーチ-

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香川容子
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2005-04-17
 

 夜10時過ぎ、吉祥寺の駅を降りてすぐのところで、「ロシア人は3000円、それ以外は4000円!」叫ぶ声がした。振り返ると、ラメ入り原色のドレスを着た金髪の外国人女性を道の真中へ並ばせ、タキシードを着た男が女性を売り始めた。

 過去の奴隷制を見たような衝撃と、目の前で見せ付けられた差別行為への激しい怒りにかられた。こうして以前より関心のあった性産業における外国人について、そして今我々に求められることについて書かせてもらうことになった。

***


 日本で性産業に従事する外国人は12万から15万人いるといわれている。彼女達1 は通常、興行ビザもしくは観光ビザで入国する。興行ビザは、フィリピン-日本政府間の協定により発効され、専門の技能を備えた歌手・ダンサー・役者に与えられるものであって、それ以外の就労目的で働くことはできない。

 したがって、興行ビザで来日したフィリピン人を接客業であるホステスとして働かせるのはもちろん違法だ。全国各地に軒を並べるフィリピンパブでこのような違法行為が当然の如く行われている。悪質な雇い主には、ホステスとして雇っておきながら、非合法の就労を盾に様々な脅迫をする者さえいる。出国時まで給料を未払いにし、小遣い稼ぎのために客に同伴させたり、売春を強制させたりする。

 国内外のNGOの報告によると、ホステスとして雇われたフィリピン人の相当数がなんらかの脅迫に遭い、最終的に売春をさせられているという。

 彼女たちの置かれた状況を知るのに、日本人のセックスワーカーがどのように扱われているのかを知る必要もあるだろう。セックスワーカーのK氏によれば、性を売り労働とすることの問題点は、リスクの高さにあるという。市民権を持つ日本人のセックスワーカーでさえ、その多くがコンドーム着用の決定権を持たないためだ。

 SWASH(sex work and sexual health)2 がファッションヘルスで働く女性達(日本国籍)へ行ったアンケート調査3 によると、8割以上の女性がゴム着用の決定権が店や客側にあると答えている。セックスワーカーに労働者としての権利が確立されていないため、充分な予防策をとっても疫病の予防は難しい上、客へのサービスの最中に暴力を受けても、性風俗産業に対する偏見から「そんなところで働くのが悪い」「自業自得」とされ、取り合ってもらえない。

 多くのケースで、セックスワーカーの人権は店や客の良心にゆだねられ、彼らはしばしば人権侵害の被害者となっていながら社会からも見放されてきた。このような環境で、性産業で働く外国人への風当たりは強い。こんな報告がある。

 在日タイ大使館が2003年11月2日付の現地紙「バンコク・ポスト」に発表したところによると、日本国内で売春業に携わったタイ人女性が、毎年50人近くエイズによって命を失っているという。在日タイ大使館のカシット氏によると、大使館は2003年において10月までに、エイズで死亡したタイ人女性50人の遺灰をタイへ搬送したという。またエイズの末期状態で大使館に支援を求めや って来る女性も月平均で2-3人になるという。
(http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2004_1/thailand_03.htm)

 滞在資格が非合法な上、日本語が不自由な彼女たちは、医療機関へのアクセスが難しい。性産業に従事する多くの外国人が日本人よりも高いリスクを背負っての労働を余儀なくされる。それでも一部の日本人は「わかってて来たんだろう。」「日本で稼ぎたいんだから、仕方ない。」と言う。もし仮に日本に来る前から性産業に従事することを承知していたとしても、誰にでも皆、等しく人権があることを忘れてほしくはない。

1.一部男性もいるが、多数が女性であるため、男性を含めた意で「彼女達」と記す。
2.セックスワーカーの労働状況を改善するための活動を行っているグループ。
3.橋本秀雄・島津威雄・花立都世司「性を再考する:性の多様性概論」青弓社、2003に収録の、要・水島共著の「セックスワークという問題提起」‐資料2


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