reports

CO-EXISTENCE

back
prev_btnnext_btn
title

ホームレスとGNH(国民総幸福量)-カリフォルニア・ダイバーシティ Vol.5

leader from from
飯田恵子 東京都 飯田恵子 東京都
day
2008-05-30
 

 今、日本では、アパート代を払えず、車の中で暮らしたり、24時間サウナや漫画喫茶等で寝泊りしたり、日雇い仕事で暮らすホームレスやフリーターの労働者が増えていると言う。また、こうした人のほかにも、路上でダンボール生活をしたり、テント暮らしをしたりている人たちもいる。

 日本ではこうした人達を「住所不定労働者」、「ネットカフェ難民」、「ホームレス」等、さまざまな名前をつけて呼んでいるが、彼らは、ハッピーなのだろうか、アンハッピーなのだろうか。

ロサンゼルスのホームレス地区

 ロサンゼルス(アメリカ)でも、年中温暖な気候の中、路上でテントを張ったり寝袋を使ったりして暮らしているホームレスは、大勢人いる。地方自治体の出先機関であるLAHSA(ロサンゼルス・ホームレス・サービス・オーソリティ)の最新調査によると、2007年時点でロサンゼルス郡内にいるホームレスの数は約7万人となっており、その多くが市内ダウンタウンのセントラル地区に集まっている。

 そんなセントラル地区には、ホームレスに食べ物を配給したり、最低限の物資を支給したりする大きな社会福祉組織の救護センターがある。

 また、セントラル地区では、毎月1回ホームレス地区の現状視察ツアーが行われている。ツアーの主催者は、セントラル地区の商店や事業で構成される商工会議所の事業改善部門(BID)で、主な参加者は、セントラルの住人、近隣地区の商店・事業主、教会や市民団体、マスコミ、市議会議員、ロサンゼルス市警(LAPD)らで、毎回約50名前後の人が参加している。

 私が参加した時は、長年この問題に取り組んでいるロサンゼルス市議会議員のジャン・ペリーや、LAPDコマンダーのアンドリュー・スミス、セントラル地区に隣接したリトル東京地区やアーティスト地区の商業関係者らといった「政治、治安、商業」等の観点から参加している人から、人道的視点で参加している教会関係者や一般ボランティア市民、それにマスコミ関係者まで多様な職種や背景の人々が参加していた。

セントラル地区の救護センター前でツアーの流れを説明するセントラル地区BID主催者、中央がLAPDキャプテン・スミス、ピンクのシャツの女性がカンシルウーマンのジャン・ペリー


 このツアーの主な目的は、アメリカらしく明快だ。「ホームレスとしてハッピーに暮らしている人には無理に退去を求めない(でも主催者のBIDの本音は、別の地区に移動して欲しい・・だ。)」。でも、気がついたらホームレスになってしまっていて今アンハッピーで、何とかしてここから抜け出してきちんとした家のある生活をしたい、という人を見つけてセカンド・チャンスを与えようというものである。 

 このツアーでは、この地区で生活しているホームレスの人々の健康チェックと、知らないうちにホームレスになってしまったアンハッピーなホームレス、例えば家出少年・少女等の救済、麻薬・アルコール中毒者の救済等を行っている。
   
 妊娠した家出の女子中学生が、頼るところもなくこの地区でホームレスになってしまっていたが、このツアーでその女の子は救済された後、転居施設(自立して暮らしていくための準備施設のようなところ)で出産し、現在は母子ともに健康に暮らしているという。

 私がツアーに参加した時は、体調不良の老人のために救急車を出動させ、救出していた。

救出されるホームレス


最近の状況を聞き、救済プランの紹介をするツアー参加者


ホームレスとGNH(国民総幸福量)

 日本でも格差社会やワーキングプアの問題がクローズアップされており、ネットカフェ難民やホームレスは大きな社会問題化している。

 世界の経済大国のGDP1位のアメリカ、2位の日本が抱えるもう一つの社会の一面であるが、ただ、経済的な面から見ると、そういった問題は「かわいそうな人々」「不幸な人々」と一様にくくられてしまっているような気もする。

 ロサンゼルスでは、「ホームレス=アンハッピー」つまり「お金がないから不幸」と一義的に捉えるのではなく、それぞれの事情や希望を加味しながら、アンハッピーで助けを求める人にのみ手を差し出すという取り組みを行っており、こうした姿勢を知り、なぜかブータンの取り組みを連想した。

 アジアの最貧国のひとつで、日本やアメリカのホームレスよりも物資や食糧が無いブータンでは、GDPではなくGNH(国民総幸福量)を大切にした国の発展を提唱した先駆国である。
 実際にブータンの実に97%の国民が幸せだと感じており、2006年のGNHランキングでは世界第8位となっている。(ちなみに日本は95位、アメリカは150位。)

 経済的豊かさのみを追い求めた結果、他人を蹴落としてものしあがるという社会価値が出来上がりつつある中で、もう一度本当の幸せや豊さとは何だろうかと考えさせられたツアーとなった。


チョプスイ(CHOP SUEY) -カリフォルニア・ダイバーシティ Vol.6
グローバリゼーション国際会議 ~カリフォルニア・ダイバーシティ Vol.4~
カリフォルニア・ダイバーシティ Vol.3
エモーショナル・インテリジェンス~カリフォルニア・ダイバーシティ Vol.2~
ダイバーシティとは - カリフォルニア・ダイバーシティ Vol.1

このエントリーをはてなブックマークに追加





クリエイティブ・コモンズ メンバー募集 メルマガ 受託型リサーチ レアリゼブックストア サポーター募集 twitter mixi face Flickr