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カナダのオーガニック食品宅配会社・Small Potatoes Urban Delivery vol.1

人・地域・環境をサポートする流通の試み

leader from from
高橋幸世 バンクーバー、カナダ
day
2008-06-18
 

バンクーバーのオーガニック食品宅配会社

 食の安全への不安が広がる昨今、こちらカナダでも安全な食材の確保はそれほど簡単ではない。スーパーマーケットに並ぶ野菜は「BC州産」「USA産」「メキシコ産」など産地特定のものもあるが、「産地・アジア」と一括されているもの、「輸入品」とだけあるもの、単に「Fresh」とだけ書いてあるものすらある。そんな時には「はっきり書けないような場所から来てるのかしら?」とつい疑い深くなってしまう。

 農薬の使用や遺伝子操作の危険の少ないオーガニック食品をなるべく購入しようと日頃から心掛けているのだが、買い物に手間がかかるし、高くつくし、そのオーガニック食品が一体どこから来たのか、詳細情報までは店頭ではなかなか得られず、どうも納得のいかないまま買い物を済ませているのが常だった。

 何かいい方法はないかしら…。そんな時に偶然見つけたのがSmall Potatoes Urban Delivery(SPUD)。バンクーバー発のオーガニック食品宅配会社だ。創始者/CEOのDavid Van Seters氏は社会的・環境的パフォーマンスを高める持続可能なビジネスをサポートするコンサルタントだったが、日々のビジネスの中で社会的・環境的価値を統合していくような会社を目指して1998年に自ら起業。ダウンタウンの東にある小さな倉庫とたった9カ所への配達から始まったこのビジネスは、今では北米最大のオーガニック食品宅配会社に成長、カナダ国内だけでなく、シアトルやサンフランシスコ、ロサンゼルスにもサービスを展開している。(2008年5月現在)

SPUDから届いた新鮮なオーガニック野菜と果物


 SPUDは持続可能な流通ビジネスのために次のような点に配慮している。1) ローカルでオーガニックな、パッケージが最小限でエコフレンドリーな製品を買うことで環境を保護する 2)食の供給者と顧客をダイレクトにつなぐことでコミュニティーを形成する 3)それぞれのエリアに一週間に一度づつ、決まったルートで食料品を配達する方式で、気候変動へのインパクトを削減する 4)毎週のニュースレターを通して、食に関する重要な問題について顧客への啓蒙を行う5)地域のチャリティー団体への寄付、及び余剰食料品の寄付を行う

 「倫理的に正しく、健康で、環境に優しい事業形態+ローカルコミュニティーへのコミットメント。それが現代における成功のレシピのための必須材料なのです」とVan Seters氏はSPUDのホームページで語っている。

 食の流通の基本に立ち戻って考えてみると、「安全に」「なるべく近くで」作られた「新鮮で」「おいしい」「旬の」ものを食べるのが体にも良く、環境にも優しい。遠くからガソリンを使ってはるばる運搬されてくるものより、近隣で作られたものの方が食卓に食品が届くまでに消費されるエネルギー量が少なく、また、居住地域の農園や小規模工場などのローカルビジネスをサポートする結果にもなる。スーパーマーケット型の大規模流通形態が一般的になる前には、むしろ当たり前だった地域密着型の流通を再発見する試みとしてのSPUD。早速、このサービスを利用してみることにした。

簡単なオーガニック食品

 利用は思ったよりも簡単で、ウェブサイトの使いやすさが印象的。情報を入力してメンバー登録し、アカウントを取得してショッピングを開始。Amazon.comで買い物をするのと同じような要領だ。商品を選んでカートに入れ、最後にオーダーを送信する。うちのエリアへの配達は毎週水曜日。ほとんどのアイテムは火曜日の朝9時までに注文すれば水曜日に配達されるという(パンなど一部のアイテムは2日前までに注文)。オーダーは何度でも更新できるので、思いついた時に新しいアイテムを逐次追加していける。

 SPUDの「お店=ウェブサイト」には野菜、果物、乳製品、卵、肉や魚(冷凍又は缶詰など)、豆腐、パン、スナック類、ジュースなど、日常に必要な食料品のほとんどが揃っている。小麦粉や豆などの食材も充実しているし、既に調理済みのミールセットや、ベビーフード&ベビー用品、洗剤や石けんやシャンプー、クリームなどの日用品のページもある。まさにバーチュアルなマーケット。お店の中を歩き回り、棚に並んだ商品を見ているような感覚で、なかなか楽しい。

 地元のベーカリーや、ローカルレストランの作った優良商品も販売アイテムに取り入れられている。最近では、バンクーバー随一のグルメインド料理店として有名なVij’sの冷凍カレーの販売を始めるなど、地域に密着した価値の高い商品の発掘にも力を入れている。顧客は新鮮で高品質な地元の商品を享受できると同時に、地域のビジネスをサポートすることができるわけだから、まさに一石二鳥だ。

 ウェブサイトでそれぞれの商品をクリックすると、詳しい情報のウィンドウが開く。全ての商品にそれがどこから来たのかの情報(BC州、カリフォルニア、メキシコ等)が明記されている他、ほとんどのアイテムにはその野菜や製品を作った個別の農場や工場の情報が詳しく記載されている。精製品には原材料やフェアトレード品であるかどうかなどの情報ももれなく明記されている。

 面白いのはバンクーバーのSPUDの倉庫に到着するまでに旅をした距離が商品情報の中に書かれていることだ。例えば今週のキュウリはバンクーバー近郊の農園から来たので、移動距離は54Km。一方で、カリフォルニアの農園産のレタスは1917Kmを移動。この移動距離の情報は、食品がローカルかどうか、環境に優しいと言えるかどうか、消費者が自分で判断するためのヒントになる。食品が長旅をする図を頭に思い浮かべると、なるべく近いところで作られたものを買いたい、ローカルビジネスをサポートしたい、そんな気持ちが自然と湧いて来るから面白い。(つづく)


カナダのオーガニック食品宅配会社・Small Potatoes Urban Delivery vol.2

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