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カナダのオーガニック食品宅配会社・Small Potatoes Urban Delivery vol.2

人・地域・環境をサポートする流通の試み

leader from from
高橋幸世 バンクーバー、カナダ
day
2008-06-25
 

 カナダのオーガニック食品宅配会社SPUDのウェブサイトでは、食品アイテムにレシピがつけられていたり、毎週必ず注文するアイテムを登録できる仕組みがあったり、一週間の[野菜+果物]の予算を決めると、旬の野菜や果物を適当にセレクトして届けてくれる「Fresh Harvest Box」というツールがあったりする。Harvest Boxのアイテムはカスタマイズできるので、いらないものを届けられてしまう心配もない。この他、ショッピング代金に応じたポイントバックや毎週のセール品など、インターネットでの買い物を便利で楽しくするいろんなアイディアが盛り込まれている。

 バンクーバーにはSPUDの他にもオーガニック食品宅配ビジネスはいくつかあるが、ウェブインターフェイスの充実度ではSPUDに軍配が上がる。オーガニック宅配というオルタナティブな流通の試みでありながら、マイナーにとどまらず、機能的で気の利いたウェブインフラの開発に力を入れている点がSPUDの顧客拡大につながっていると考えられる。商品の品揃えも充実しており、洗練された大型マーケットで買い物をしているようなメジャーな感覚もバランスよく取り入れ、消費者の購買意欲に十分にアピールしてくる。

安価なオーガニック食品

 さて、気になる値段。オーガニック中心なので、普通のスーパーよりは割高だが、店舗を構えたオーガニックマーケットと比べても、同じか、むしろ安いという印象。うちの地域は35ドル以上の購入で無料配達(配送地域によって異なる)なので、買い物に費やす時間やガソリン代を考えると、かなりお得感がある。ただ、ウェブサイトの情報では、お店で商品を手に取るようには品質を実感できないので、判断がちょっと難しい。例えば、野菜は重量が記載されているアイテムもあるが、「ブロッコリー一束」のように書かれているものもあり、大きさが想像できず、高いのか安いのかどうも分かりかねるのだ。そんなわけで1回目の注文は恐る恐る、とにかく商品が届くのを待ってみることにした。

 注文時に「あれっ?」と思ったのは、注文書の品目の中にいつの間にか書かれている「carbon offset --- $0.22」という項目。SPUDでは注文を行う度に、カーボンオフセットのための資金を顧客が負担する仕組みになっているのだ。0.22ドルは日本円で22円少々。SPUDでの買い物が環境への貢献につながり、消費者としての責任を果たしていることが実感でき、なんとなく気持ちがよい。一回の負担が重すぎないのもいい感じだ。

 さて、いよいよ配達日。ここで少々ネックになるのが配達時間。朝9時から夜9時までの間に配達されるというので、その日は家で待つことに。一戸建てならば、家の前やガレージに置いて行ってもらうこともできるし、ビルの形態によっては入口のカギをSPUDの配送スタッフに預ける方法もあるが、うちの場合はそれができないため、ひたすら待っているしかない。でも、カスタマーセンターに電話したら、大体の配達時間を教えてくれたし、実際にその時間帯に配達されたので、それ程の不便は感じなかった。こうした配達の不便さは、ご近所で一緒にこのサービスを利用したり、オフィスの仲間を誘って職場にまとめて配達してもらったりすることでクリアできるかもしれない。

SPUDから届いた宅配ボックス


 大きなプラスチックケースに入った、たくさんの食品が運ばれて来た。持ち上げてみるとかなりの重さだが、感じのよいスタッフが戸口まで運んで来てくれるので、非常に楽だ。保冷剤とケースは次回の配達の時に返却する。野菜は思ったよりも分量が多く、コストパフォーマンスも良好。巨大パクチョイは土がついたままで、葉っぱには懐かしのアブラムシが。完熟トマトは畑の匂いが漂い、さやいんげんは袋を開ける前から甘い香りを放っている。マッシュルームはスーパーではお目にかからないくらいの小粒だが、身が締まっていて味が濃そうだ。人道的な方法で処理されたという冷凍の天然サーモンは思っていたよりも小振りで、ちょっと割高?

ご近所のオーガニック屋さん

 全体的に見て、サービス、コストパフォーマンス、新鮮さ、品質、おいしさのどの点をとってもSPUDでの買い物は十分に納得のいくものだった。モノによっては少々高めだったり、安めだったりいろいろなのだが、そういう点もまとめてSPUDという活動をサポートしているという感覚。昔懐かしいご近所の八百屋さんを応援する、あの感覚。時にはスーパーよりちょっと高くても買ってあげて、でも八百屋のおじさんがいつもサービスしてくれるので、結局は持ちつ持たれつという、あの感じだ。

 毎週木曜に更新される生鮮食料品のページを眺めるのが楽しみになりつつある。「あ、今週はナスがある!」なんてことにちょっと喜んだりもする。今農園で収穫できるものだけが、お店に並ぶからだ。ずっと忘れていた「旬」という言葉が頭に浮かぶ。近隣の農園の採れたて野菜や、黄身の盛り上がったこれほど新鮮な卵に、なぜこれまで出会えなかったのか。滋養も風味もたっぷりの野菜や卵を作る農園のすぐ隣りに暮らしていても、近所のスーパーに出かければそこに並ぶのはなぜか何千キロもの彼方からやってきた食料たちで、お隣の野菜はどこにも見当たらないという不思議。ここに大量流通システムの盲点がある。

 新鮮な食べ物は近所からやってきて、生産者と消費者は持ちつ持たれつ—このかつて当たり前だったことが、今一番難しくて、一番新しいことなのかもしれない。大量流通システムからこぼれ落ちてしまう地域の価値を拾い上げ、生産者と消費者を再び結びつけていくSPUDの持続可能な食品流通の試み。そこから学べるものはまだまだたくさんありそうだ。


カナダのオーガニック食品宅配会社・Small Potatoes Urban Delivery vol.1

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