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異文化間教育 授業実践 (2) 自分が主役になれる場所

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せきじえり 東京
day
2008-07-09
 

 褒められたり注目されたり尊敬されたり…。他人から認められるということは多くの人にとって心地よいものである。特に子どもの社会空間である「教室」という場においてクラスメートや担任の先生から認められることは自信形成にもつながる大切な経験といえよう。

もうひとりのスペイン語の先生

 まえぽんと呼ばれる日本人児童は、以前から文化や言葉に興味を持っていて、S小学校での異文化間教育実践としてスペイン語教室などを始めた当時は、英語教室に通っていた。カルロスがクラスメートになってからはスペイン語にも興味を持ち、本人いわく「10歳のころからスペイン語やってみたかった」。一方、カルロスにとってはクラスの中で唯一心を許せた友達。カルロスはクラスメートと学校外で交流することはほとんどなかったため、まえぽんの家に遊びにいった翌日には「センセイ!昨日まえぽんのとこにあそびにいったんだよ!」と嬉しそうに報告している。

 まえぽんのお母さんの言葉
 「家に帰ったらいきなりペルーの子がいて…みんなでペルー民族舞踊を踊っていたんです。驚きました。」
 「スペイン語の授業を本当に楽しみにしていてとても喜んでいます。」

 私がみていてもスペイン語に対するモチベーションがとても高かったまえぽん。いつしかクラスメートから「スペイン語といえばまえぽんだよなぁ」と認められるようになった。カルロスと共にスペイン語の先生として友達から一目置かれる存在になったのだ。照れ屋なカルロスに比べて、まえぽんは積極的に「おれ、スペイン語わかるよ」とアピールするため、きっとクラスメートも質問しやすいのだろう。休み時間、まえぽんが友人相手にスペイン語の解説をする姿が幾度も観察されており、一躍クラスの人気者になったのだ。

ペルーの民族舞踊を踊ってみよう!

 日本語教室の担当教員と企画したペルーの民族舞踊講習会。これは地域在住ペルー人の協力を得て実現したイベントで、夏休み中4回の講習会を開き、集大成として9月に全校生徒の前で踊りを披露することになった。演目は“ワイラス”というじゃがいもの収穫を祈るフォルクローレ。参加者は外国人児童7名と日本人児童6名の計15名だったが、そのうちカルロスのクラスでは本人の他、3名の日本人児童が参加した(まえぽんもそのひとり)。

 ペルー人講師が話すのは全てスペイン語。はじめのうち「何言っているかわからない」という顔をしていた日本人児童も、見よう見まねで振付をまねするうちに主要な単語“Adelante!(前に出て!)”や“Vuerta!(回って!)”はしっかり頭に入ったようで、文字通り「真剣」に、そして真夏の体育館で汗だくになりながら練習に励んだ。

 9月の本番ではアンデス民族音楽演奏家を招き、「アンデス文化紹介」も兼ねた全校イベントとなった。そのクライマックスを飾るのがみんなの踊りの「発表会」。外国人児童にとっては全校生徒の前で何かをやり遂げるのは初めての経験、何名かの日本人児童にとってもそうである。生演奏をバックに踊る子どもたち。

 華やかな刺繍がほどこされたホンモノの衣装を身にまとい、これまでの頑張りを精一杯、友人、クラスメート、先生、そして参観にこられた数名の両親の前で披露していた。練習当初恥ずかしがっていた男女ペアダンスも見事にこなし歓声の中のフィナーレ。子どもたちの顔は達成感と自信、そして笑顔に満ちていて、私も舞台袖から少し涙ぐみながら大きな拍手を送った。

全校生徒の前で


 アルゼンチン人児童メリッサの作文より(そのまま抜粋)
 「今日はえんそうの人たちが、ペルーからきてくれた。えんそうの人は、話をしていた。何にをしゃべってるのかぜんぜんわかんなかった。私は、はじめて、えんそうの人たちと、ダンスを合せました。なんか、すごく、自分の中でたのしかった。こんなにもたのしかったとは、おもいませんでした。えんそうが、すごく、キレイな音楽でした。(中略)
なんか、ダンスをしてよかったなと思いました。また、ダンスにちょうせんしたいと思います。」

主役になれる場所

 個々の児童が様々な形で活躍できる場を創出し、他人から認められるきっかけを作ること。これは何も異文化間教育という枠組みに限らず、特に年少教育の現場で大切な事柄だと思う。友達から認められることで自分自身を認めることができる。自己に対する自信をつけると子どもはポジティブになれる。カルロスもまえぽんもスペイン語の授業のことは一生忘れないだろうし、メリッサの心の中で全校生徒の前で踊ったダンスの思い出は「達成感」という充実した感情と共にずっと生き続けるだろう。(つづく)


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