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アパートを飛び出せ! 〜パリ移民地区のアフタースクール〜

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今成彩子 フランス パリ郊外
day
2008-11-02
 

 パリ市の北端。
 地下鉄4番線の北側終点、ポート・ド・クリニャンクール駅を出ると、目の前に幹線道路が走っている。手にした住所を片手に、慣れない道を行く。特徴のない灰色の建物沿いを足早に通り抜け、十字路で右折すると、明るい大通りが目に飛び込んできた。
 広い歩道の上で、学校帰りらしき子どもたちのグループとすれ違う。アフリカ系の少年、ベール姿の女の子、インラインスケートを履いた東欧系の青年。子どもたちの様相はさまざまだ。

 目的の住所に到着すると、そこは集合住宅のようだった。鉄格子のゲートをくぐり、中庭に出る。「こっちよ!」と声が飛んで来た。見ると、土の上で輪に並べた机に向かう子どもたちと、アジャさんの笑顔があった。背の高い木に囲まれ、たっぷりの夕日に照らされた空間で、アフタースクールが始まっていた。


HLMの寺子屋

「今日は天気も良くて気持ちがいいから、ガーデンスクールね。」

 ここは、HLM(アッシュ・エル・エム)と呼ばれる低家賃集合住宅だ。アフリカや東欧出身の移民が人口の大半を占め、ニュースでは「物騒」だと騒がれることの多い、パリ18区の一区画に位置している。 しかし、目の前で熱心にノートに向かい、時折楽しそうにじゃれる子どもたちを見ていると、メディアのイメージとは結びつかない。

「子どもたちはみんな、毎日、自分たちの意志でここに来るんですよ。」

 そう話すのは、このアフタースクールを一人で立ち上げ、運営しているアジャさんだ。彼女自身も、フランス領グアダループというカリブ地域出身の移民で、子どもたちと同じHLMに住んでいる。

 アジャさんのアフタースクールは、“Aider Agir 18eme(エデ・アジーア・ディジュイティエム)”「手を貸し、行動する18区の会」という名のアソシエーションだ。アソシエーションとは、正式に政府に登録をしている非営利団体の総称で、日本ではNPOにあたる。Aider Agir 18emeの主な活動は、月曜日から金曜日まで、午後5時から8時半の間に、子どもたちの勉強を見ることだ。しかし、いわゆる学習塾とは異なり、勉強を教えているわけではない。

「ここは、家では思うように勉強できない子どもたちが、自主勉強をするためのスペースです。小さい子の勉強は見ますが、それも、集中が途切れないよう手助けをしている、という方が近いですね。」

 訪れる子どもたちの年齢は、7歳から18歳と幅広い。現在、アジャさんたちの住むHLM住宅には18歳未満の子どもが60人ほどいるという。アフタースクールには、年間35人程の子どもたちがやってくるそうだ。その中で、毎日欠かさず顔を出す子が25人。それぞれ宿題をしたり、その日の授業の復習をしたり、目的に応じて机に向かう。・・・わたしは疑問を口にした。

「勉強を教えてもらえるわけではないのに、子どもたちがここに毎日来るモチベーションはなんですか?楽しいからでしょうか?」

 アジャさんは、それだけではない、と話し始めた。子どもたちが勉強の場を家の外に求める理由は、フランス移民コミュニティーが抱える根深い問題と直結していた。 


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