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やさしい日本語って何?

(やさしい日本語 1/2)

leader from from
せきじえり 東京
day
2009-02-21
 

 情報格差。『デイリー新語辞典』(三省堂)によると「所有する、あるいは入手することのできる情報の質・量から生じる格差。またそれらの格差によってもたらされる経済的・社会的格差」と定義される。

 デジタル機器の普及、ブロードバンド化がもたらす「情報を持つ者と持たない者の格差」を意味するデジタル・ディバイドという用語が世に広まったのは1999年アメリカ商務省の報告書が発端であるが、日本でもこうした通信の格差を縮めるために総務省や地方自治体が各種取り組みを行っている。一方、デジタル化とは全く別の領域でも情報弱者が生まれることがある。たとえば言語のネットワークがそれである。

やさしい日本語

 「やさしい日本語」という発想が地方自治体レベルで少しずつ広まっているのをご存じだろうか。「やさしい日本語」とは文字通り通常の日本語よりも簡単で日本語にあまり馴染みのない日本語非母語話者にも分かりやすい日本語のこと。
 阪神・淡路大震災で、日本語も英語も解さない外国籍住民が情報弱者となったことの反省から、緊急度の高い情報を少しでも多くの人(日本語非母語話者)に効率的に、効果的に伝達するため手段として考え出され、弘前大学の佐藤和之教授を中心に研究が進められた言語サービスである。

 たとえば、「厳重に注意してください。」を「気をつけて ください。」と簡単な言葉を用いて分かち書きにしたり、「余震」の後に「あとからくる地震」などと説明書きを付加したり、という工夫がみられる。災害が起こってから72時間を生き延びられる情報を伝えることが目的。近年は災害時だけでなく、生活上必要な情報を伝える「情報格差をなくす」ための手段としても各地方自治体やNPOで利用されている。

 やさしい日本語の具体的なルールとしてはたとえば以下のようなものがある。
 ・ 一文を短くする。
 ・ 文章が複文の場合、整理して短文に分ける。
 ・ 文節ごとにスペースをあける。
 ・ すべての漢字にルビをふる。

 基本的に日本語能力試験3級・4級(初級レベル)の語彙を使用し、文章構成をはっきりとさせ、漢字には適宜ルビをふるといったような工夫が凝らされる。

 現在日本には様々な言語的・文化的背景を持つ人々が生活している。昨年、自民党や経団連は人材育成を目的とする移民政策の検討を始め、文化庁は「生活者(すなわち定住型人材)のための日本語」教育政策を推進している。

 移民「政策」の一環として、「生活者としての外国人」に日本語習得と日本語使用を求めるのであれば、国がサポートするのが道理である(※1)が、現状そのようなシステムは整っていない。一部の地域では生活情報を多言語化する試みも行われているが、災害などの緊急時に迅速に多言語サービスを提供するのはなかなか難しい。少しの日本語能力を有する相手に緊急情報を伝達することができる「やさしい日本語」。現在、弘前市のFMアップルウェーブや神戸市のFMわぃわぃ等では、多言語放送のひとつの言語として用いられており、今後ますますの普及が求められている。

 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)平高史也研究室では、慶應義塾OBの研究助成(SFC政策研究支援機構)を受けながら地域社会と協働で「やさしい日本語」プロジェクトを推進している。主なプロジェクトメンバーは5名。彼らのフィールドとなる東京都福生市は、多摩地区最大の外国人比率を誇り(※2)、『外国人のための生活便利帳』という冊子を発行する。

 「税金の納め方」や「外国人登録の仕方」など、行政が外国籍住民に伝えたい暮らしの情報を掲載しているが、このたび「やさしい日本語」の有効性、実用性が高く評価され、この便利帳に「やさしい日本語版」を載せるべく、プロジェクトメンバーは市の職員と共に制作に取り組んでいる。(2009年4月に福生市の公式刊行物として発行予定)

『外国人のための生活便利帳』より一部抜粋:



※1 例えば、ドイツでは「移民的背景を持った人々(Menschen mit Migrationshintergrund)」に対する施策を打ち出しており、2005年から「統合コース(Integrationskurs)」として移民のドイツ語習得を促進している。ドイツでの滞在許可には一定のドイツ語レベルに達していなければならず、ドイツ語能力が十分でない人に対して統合コース(600時間のドイツ語コースとドイツ事情に関する45時間のオリエンテーションコース)の受講と試験資格が義務化されている。

※2 2007年4月現在、外国人比率は3.8%


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