reports

LIFE STYLE

back
prev_btnnext_btn
title

天ぷら油で走る車に乗る人々(WVOというバイオディーゼル燃料)

leader from from
三沢健直 松本市
day
2009-07-22
 

WVOというバイオディーゼル燃料

 家庭や旅館から使用済みの油(廃食油)を回収し、精製してBDF(バイオディーゼル燃料)として販売し、車や農耕機械を動かす実践として、大町菜の花プロジェクトを紹介した。廃食油を回収してBDFにする方法は全国に広がっており、軽油の代替としてはかなり量不足だが、多少なりともその使用を減らすことはできる。

 ところで日本では、バイオディーゼル燃料で車を動かすために、もう一つの方法がある。BDF(バイオディーゼル燃料)は一般的には、動植物油から粘度の高いグリセリンを取り除いた脂肪酸メチルエステルを意味する。脂肪酸メチルエステルを精製するための装置は数百万円程度するので、地域から廃食油を回収して精製し、スタンド等で一般向けに販売する事業者が必要だ。

 これに対して、植物油をそのまま燃料として利用する方法もある。植物油を直接使うのはSVO(Straight Vegetable Oil)、廃食油を使うのがWVO(Waste Vegetable Oil)と呼ばれる。これなら脂肪酸メチルエステルを精製する高価な装置は不要で、資金のある事業者も要らない。個人にもできるのである。

 自分でご近所の天ぷら油を回収して濾過し、自分の車に入れて走る。そんな愉快な生活をしている人たちが、日本には結構いるのである。

天ぷら油で走る車

 そんな人たちの拠点のひとつが、信州は安曇野市穂高の別荘地にある、舎爐夢(シャロム)ヒュッテというペンションだ。シャロムヒュッテは、パーマカルチャーやスローフードに関心のある日本人には良く知られたペンションだ。山小屋の住人だった臼井健二さんが仲間と手作りで建てたペンションで、自給自足のエコロジ-な農的田舎暮らしを目指し、有機農法や自然農法の畑、パーマカルチャーガーデンなどの実践をしている。

 そのシャロムヒュッテで、宿泊客の送迎用に実際に使われているのが、天ぷら油(WVO)で動く車である。昨年宿泊した先に臼井さんに見せていただいたのが下の写真。フィルターと熱交換器をエンジン部分に取り付け、後部には軽油と天ぷら油の二つのタンクが積んである、とてもシンプルな構造で驚いた。長野県は寒いので、エンジンをかけるのに軽油を入れる必要があるそうだ。

 臼井さんを中心に、天ぷら油車に乗る人々の全国ネットワークが形成されていて、メーリングリストを利用して活発な議論を行っている。

熱交換器とフィルターがセットになっている。

軽油と天ぷら油の2タンクシステム。長野県は軽油がないと油が固まる。

宿泊客の出迎えに行く。

この人が臼井さん。 シャロムヒュッテのオーナー。


 シャロムでは、十分お話を聞く時間がなかったが、幸いこのメーリングリストを通じて、天ぷら油の車に乗っている山野さんのお話を聞くことができた。

天ぷら油車に乗る生活

 山野さんは、以前シャロムでスタッフをしていて、現在でもシャロムのWVO車を借りている。車はトヨタ・ライトエース。WVOを始めるなら、ゴルフでの実績が多いので、参考になる情報が蓄積されていて、初めて選ぶ車種には良いそうだ。ただし、最近のディーゼル車は、燃費効率を上げるためにプラグに霧状に噴射する仕組みになっており、そのタイプだと上手く行かない。古いタイプの車ディーゼルのほうが上手く行くそうだ。

 とにかく実験を重ねながらきたという。最初の頃は、フィルターが詰まって高速道路で止まってしまった人が、何人も居るらしい。汚いオイルはすぐに詰まってしまうそうだ。山野さんは、まず熱交換器と電磁ポンプを設置して、あわせて2万円程度。最初は通常のフィルターで走っていたが、次にトラクターなどに使用されている目の粗い小さなフィルターを取り付けた。一つで3000キロは走るとのこと。

 この車には衣装ケースで製作された濾過装置が積んである。フィルターとしてティッシュペーパーが敷き詰めてある。お金はほとんどかからない。やる気さえあれば、個人でも十分できそうだ。

熱交換器と電磁ポンプ

コスロンフィルター


 使用済み天ぷら油は、毎月100リットル程度を、自分で回収している。回収先は主に学校や自然食レストランが良く、弁当屋の油は比較的汚れている。豆腐屋も遠心分離機でも取り除けないカスがでる。豚カツのような動物油の入った油は夏にのみ使用している。冬は管の内側にラードがこびり付く。動脈硬化とそっくりで、オイルの通れる穴が小さくなるそうだ。

 油は固まるので、5℃を下回ると難しいらしい。信州のような寒い地域では軽油と2つタンクが必要で、始動時に軽油を使う。山野さんは、軽油はまったく使わず、天ぷら油のみで走っている。9万キロ走行済みの車両を入手し、その後天ぷら油で30,000キロ走っているが順調に走行中だ。

手作り濾過タンク(ティッシュを敷いて、錘を乗せる。)

濾過された油が出てくるところ。

廃油タンク、濾過タンク、濾過済みタンク

天ぷら油を注入


 燃費はリッター10㌔走る。軽油の頃と同じだそうだ。油に汚れ方や状況によっても違うので、距離は一定ではない。リッター8キロしか走らなかったこともある。

 日曜大工や機械いじりが好きな人なら、とても楽しそうだ。ただし、時間と手間はかかる。廃食油の回収のために1時間かかることもあるし、濾過にも時間がかかる。自然濾過が一番良いが10時間かかる。しかも、手も油まみれになるし、車内に油の匂いもする。誰にでも薦められる方法ではない、と山野さんは言う。

 では、何故乗るか?それは「人との出会いだ」、と山野さんは教えてくれた。山野さんの場合は、天ぷら油車を誰かに見せに行く用途が一番多く、あとは油の回収がほとんど。しかし、この車に乗っていると色んな人に出会える。確かに管理は大変だけど、ワークショップに参加したり、詳しい人が教えてくれたりしながら、なんとかやっていけるのが楽しい、と山野さんは言う。もちろん、シャロムヒュッテのように、天ぷら油の車を日常の用途に利用している人たちも少なくない。

 山野さんにお会いしたのは、ちょうど渋谷のアースガーデンの日で、奥様もご一緒だったので、どう思っているか聞いてみた。「日曜のたびにホームセンターに通っている。でも楽しんでいるから、良いのではないですか」と楽しそうに笑っていた。

 天ぷら油車に関心のある人は、まずメーリングリストに参加し、それからワークショップに参加すると良いだろう。つい先々週末にも、河口湖近くでワークショップが開催されたばかりだ。「高速で止まった」と聞いて、何となくワクワクしてしまった人は、もう行くしかないだろう。


大町菜の花プロジェクト ~ 日本の油田とヴァージンオイル ~

このエントリーをはてなブックマークに追加





関連サイト
舎爐夢(シャロム)ヒュッテ
パームオイル・リサーチ・ユニット
天ぷら廃油の濾過装置 /「地給知足」がおもしろい?
関連ニュース
オランダにおける電力自由化とグリーン電力について
ちょっとだけ不便、でも快適~目からウロコの非電化生活~
ボルネオ島のプランテーション開発/BCTジャパン (中間報告 Vol.4)
パームオイル代替オイルの可能性/バイオディーゼル燃料編 (中間報告 Vol.3)
車と経済-常識という鉄鎖から解放されるために
「車のない生活」がもたらす子供にとって5つのよいこと
パームオイルに関する政策提案の試みからリサーチ・ユニットへ (中間報告 Vol.1)
オイルパーム労働者はいまだ貧困線以下、大臣声明とうらはら
現実世界の「アバター」ストーリー:企業の搾取と戦う先住民族
大町菜の花プロジェクト ~ 日本の油田とヴァージンオイル ~
オイルパーム(アブラ椰子)農園労働者ヘルさんへのインタビュー
都市農地を活用する試み(2)-こだいら菜の花プロジェクト
市民によるコミュニティバスの可能性
市民が建てた石鹸工場 (1)~日本の社会起業家:川崎市民石鹸プラント(ワーカーズコレクティブ『サボン草』)~
空飛ぶモニョンゴロ村
森を壊さないカレーを食うために ~パーム油フリーカレー~
商品カタログ、ドレッシング/世界のもったいないものVol.8
家具や電化製品の交換(リユース)の仕組み/世界のもったいないものVol.7
パームオイルの問題を再確認する/「人と環境に厳しいパームオイルを避ける方法」Vol.1
関連ニュース
コメントを見るコメントする
コメント(4)

Creative Commons License
天ぷら油で走る車に乗る人々(WVOというバイオディーゼル燃料)   by 三沢健直/INDEPENDENT MEDIA [レアリゼ]は、 Creative Commons 表示-改変禁止 2.1 日本 License のもとでライセンスされています。ライセンスのより詳しい説明は、こちらをご覧下さい。

クリエイティブ・コモンズ メンバー募集 メルマガ 受託型リサーチ レアリゼブックストア サポーター募集 twitter mixi face Flickr