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ネイティブ・アメリカを訪ねる~先住民エコツアーの試み PART II

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江崎絢子 オレゴン州ポートランド市
day
2009-07-30
 

 前回に引き続き、ネイティブ・アメリカンの先住民文化を取り入れたエコツアー会社、Go Native America(ゴー・ネイティブ・アメリカ)の代表、サラ・チャップマン(Sarah Chapman)氏のお話を通して、北米での先住民エコツアーのあり方と、ネイティブアメリカの現状について紹介する。

―Go Native America (以下GNA)は、ナショナル・ジオグラフィック・トラベラー誌等、メインストリームメディアからも注目を集めていますが、ツアービジネスの成功はGNAのミッションにどんな影響を与えていますか?

 ビジネスの成功や、メディアの注目を集めることは光栄に思っています。しかし、GNAは、ネイティブアメリカの文化を人々に体験してもらうことによって、先住民コミュニティーの現状に関する意識を高めてもらうことを目標にしており、その目標があるからこそ私たちのビジネスは成り立っています。どれほど注目されても、その目標は変わりません。

 例えば、私たちが大切にしている方針のひとつは、ありのままのネイティブアメリカの現実をツアー参加者に伝えることです。多くのインディアン居留区域は、貧困と、貧困から起こる様々な社会問題を抱えています。本当のネイティブアメリカをゲストに体験してもらうため、地元コミュニティーの人々に、ツアーグループが訪ねている時も普段の生活様式を変えないよう強くお願いしています。ツアー参加者は、「観光客用に用意されたバージョン」ではなく、実際の現実を体験するべきだからです。

「パウワウ(Powwow)」 (ネイティブアメリカンのお祭り、社交的な集り)のようす。写真提供:GNA


―GNAのツアーに参加する人々は、どのような形で先住民コミュニティーの現状に対する意識を高めるのですか?

 私たちのツアーには、様々なバックグラウンドの人々が参加します。ツアー前には「先住民部族はバッファロー狩りの代わりに、今はカジノ経営で生活を支えている」といった現実とはかけ離れた固定概念を通してしかネイティブアメリカを知らなかった、という人もいれば、普段から先住民関係の活動に頻繁に関わっているという人もいます。

 ツアー参加者のコメントでよく聞くのは、「予想していたよりもずっとたくさん学んだ」ということです。先住民という存在を美化するのではなく、欠点や問題点も含めたネイティブアメリカの現状をシェアすることにより、ネイティブアメリカの現実に対する関心を高めることができるのです。
 
 アメリカに住む非先住民の人々で、先住民コミュニティーが体験している貧困の苦しみをよく理解している人は少ないでしょう。居留区での生活は、多くの人にとって、想像以上に厳しいものなので、ツアー後それぞれの国や地域に戻り、「カルチャー・ショック」を体験する参加者も多いです。

―エコツーリズムのようなアプローチは、アメリカ先住民のコミュニティーが抱える問題の解決につながると思いますか。

 GNAの活動を通して、私たちは地元の先住民コミュニティーに雇用の機会を提供したり、スキルを身につける手助けをしています。このような社会的・経済的な貢献は、大変重要ですが、一方で見過ごせないのは、「雇用機会を与えられることによって自立できる」というレベルからは程遠い状況で生きている家族もたくさんいる、という厳しい現実です。教育や雇用の機会がなく、最も基本的な生活必需品も買えない数多くの人々が助けを必要としています。ネイティブアメリカの問題を語るにおいて、貧困は避けて通れない課題です。

―「自立からは程遠い」現状にいる人々を支援する活動は、どのような例がありますか?

 GNAでは、シェイエン・チルドレンズサービス(Cheyenne Children Services 略称CCS) という、北部シェイエン族 の家族を支援し、貧困に苦しむ子供たちの健康的な成長を助ける活動をしているチャリティーに関わっています。CCSが支援する子供たちの中には、家族の収入が年間5千ドル(約49万円)以下というケースも少なくないのです。とても嬉しいことに、このチャリティーを支えるスポンサーの25%以上が、GNAを通じて登録しています。

 北部シェイエン族の居留地には現在5千人ほどの部族メンバーが住んでいますが、経済基盤が整っていないため、雇用の機会が足りず、居留区域内での失業率は80% 近くです。親が家計を支えられない家庭の子供たちは、その影響を受け貧困に苦しんでいます。

 さらに、昔とは違い、貧困は経済的な苦難だけではなく、家庭崩壊、アルコールや薬物中毒等、多くの社会問題をも生み出しています。このように個人が自立していける機会を見つけられない居留地の環境が、現代の北部シェイエン族の生活に複雑な貧困の悪循環を呼んでいるのです。

CCSが支援するCheyenne族の子供。平均寿命が57歳と低い北部シェイエン族居留区では、人口の60%以上が18歳以下だ。写真提供:CCS


―北部シェイエン族の子供たちを支援するCCSの活動について聞かせてください。

 CCSの活動の軸となっている主なプロジェクトは、読み書き指導、環境教育(植林活動)、健康教育、文具の提供、そしておもちゃ等のプレゼントの分配の五つです。これらのプロジェクトはそれぞれ2千ドル(約19万5千円)ほどの予算で行うことができます。CCSは過去に、子供たちの健康的な成長を支援する活動の一部として、居留区域内のいくつかのコミュニティーに、遊び場を建てました。

 この作業は、ユースボランティアグループの助けを得て達成することができました。また、子供たちの教育の機会を支援する活動の一部としてCCSが現在取り組んでいるプロジェクトは、地元コミュニティーのための図書館の設立です。この図書館は、子供たちや家族が安心して学ぶことができる場所を提供し、また、読み書きのクラス等のためにも使うことができる場となるでしょう。

 筆者も、このインタビューを通してCCSについて知り、その活動に興味を持ち、GNAを通じて登録するCCSチャイルドスポンサーの一人になった。先住民の尊厳、そして自立した現在を生きる先住民としてのアイデンティティの重要さについて、深く考える機会があったことが、このチャリティー支援に対する見方に大きく影響を与えたように思える。

 このように、人と人とのつながりを通して先住民コミュニティーの現実を伝え、その現実の一部になってもらうアプローチが、ネイティブ・アメリカの現状に対する無知・無関心という問題の解決に一番効果的なのではないだろうか。


ネイティブ・アメリカを訪ねる~先住民エコツアーの試み~ PART I

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