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パームオイルに関する政策提案の試みからリサーチ・ユニットへ (中間報告 Vol.1)

パームオイル・リサーチ中間報告 Vol.1

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三沢健直 松本市
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2010-03-07
 

 レアリゼでは、2007年末以来、パームオイル生産の問題について継続してリサーチを行ってきた。まだまだ調査不足なのだが、開始以来かなり時間が経過してしまったので、これまでの経緯を報告しようと思う。

 レアリゼが最初にパームオイルの問題について報告したのは、メンバーの伴昌彦による単独レポート「森を壊さないカレーを食うために ~パーム油フリーカレー~(2007年3月)」だった。

 このレポートで伴は、パームオイルを使用した洗剤が、「環境にやさしい」等と宣伝されるにも関わらず、実際には、パームオイル生産の現場での森林破壊や先住民の人権侵害など、問題が生じているケースがあること、身の回りにある多くの食材にパームオイルが含まれていることをレポートした。

 また、解決策のひとつとして、パームオイルの生産者・加工業者・投資家・消費者・NGOなどが一同に会し、環境や公正に配慮したパームオイルの基準策定などについて話し合うRSPO(持続可能なパームオイルのための円卓会議)の活動を紹介した。

レアリゼ共同リサーチのテーマに

 さらにレアリゼでは、「人と環境に厳しいパームオイルを避ける方法」と題し、第2回共同リサーチ(2007年10月~12月)のテーマとしてパームオイルを取上げ、カナダ、オーストラリア、日本、中国で実施した。追加の共同リサーチとして、2008年9月にフランス、ラオスでも実施した。

 このリサーチでは、世界各国に散らばるメンバーたちが、日常生活の中で、どの程度パームオイルを含む製品を使用しているか、もしその製品を環境・社会に配慮した製品に替えようとしたら、値段や購入場所など、生活がどのように変化するかを調べてみた。

 各国のメンバーは、世界のスーパーや食品店で実際に品物を手にとって、食品表示の内容や値段などを比較したり、いくつかの店舗を廻ってみたりした。このリサーチを通じて、以下のようなことが分かってきた。

♦ そもそも植物油(植物油脂)としか表示がされていない製品が多く、パームオイルが入っているのが分からない。

♦ パームオイルを避けて他の油に切り替えたところで、大規模に農地を切り開いて大量生産する作物では同様の問題があるのではないか。

♦ 自然食品店やフェアトレードの店の商品は、貧困や健康など、それぞれ固有の問題解決を目指しているので、原材料の全てについて、環境・社会への配慮をしているわけではない。とは言え、原料表示の面では、できるだけ明確に記載しようとする配慮が見られる。パームオイル・フリーの商品も販売している。

♦ トランス脂肪酸の含まれないパームオイルは健康に良いという宣伝が、特に欧米では盛んに行なわれてきた。ところが、同時期にアメリカなどでは、パームオイルは動物油と同じ飽和脂肪酸を含むため体に悪いという宣伝も盛んに行われていた。さらに、パームオイル由来の植物油脂(マーガリン、ショートニング)には、トランス脂肪酸が含まれるという認識も欧米では広がりつつある。そもそも、どんな油でも採りすぎれば体に悪いのだが、メディアの流す健康情報に、消費者が踊らされている面は否めない。

♦ パームオイル自体には、酸化し難さや栄養価、高い単位収穫性など、優れた特性があるし、地域経済への貢献も大きいので、単純に避けるのではなく、環境や社会に悪影響を与えないようにしながら利用することが大切。単純な不買運動では問題は解決しないのではないか。

♦ RSPO(持続可能なパームオイルのための円卓会議)は、認証の方法でまだ議論が分かれており、世界的に見てもほとんど認知されていない。

♦ オーストラリアの団体が、地理的に関心が深いためか、パームオイルの問題に積極的に取り組んでいる。ヨーロッパの団体も積極的に活動しており、インドネシア・マレーシアに圧力をかけている。日本では、パームオイルの問題はあまり知られておらず、関心が低い。

 詳しくは、共同リサーチ・レポートを参照のこと。

パームオイルに関する政策提案(たたき台)

 さらに私たちは、共同リサーチを単にリサーチに終わらせてしまうのではなく、この問題を解決するために、自分達にも何かできないだろうかと考え、政府に提案する政策提案(たたき台)を考えてみた。

政策提案1)食品の原材料生産地での環境配慮をグリーン購入法に明示する

政策提案2)植物油(植物油脂)の原材料表示を義務化する

 しかし、この政策提案を持って、あるフェアトレードの団体を訪問して意見を伺ったところ、特に提案2)の「植物油の原材料表示の義務化」について、現場からの次のような厳しい指摘を頂いた。

 もし油の種類まで表示しようとすると、油が替わる度にシールを張り替える作業が発生する。その作業のための人件費と材料費、また流通の遅れなどのコストが跳ね上がり、そのコストは弱小の流通業者を直撃する。「生産や流通の立場に立って考えようとしない『消費者』というあり方は、本当に社会を良くすることができるだろうか。」

 このときに、流通の現場から頂いた意見は、パームオイルの問題に留まらず、レアリゼの今後の方向性を考える契機になった。

 私たちは、政策提案をするためには、消費者の側から一方的に考えるのではなく、パームオイルの生産や流通の現場をもっと良く知る必要があると考え、少人数の有志グループであるパームオイル・リサーチ・ユニットを立ち上げ、継続リサーチを行うことにしたのだった(2008年8月)。

パームオイル・リサーチ・ユニット(PRU)での継続リサーチ

 パームオイル・リサーチ・ユニット(PRU)では、三つの課題からリサーチを進めることにした。

 課題1)パームオイル生産・流通現場からのヒアリング
 課題2)環境・社会に配慮したパームオイル生産の可能性はあるか
 課題3)パームオイルの代替となるようなオイルはあるか
 課題4)NGO・NPOからのヒアリング

 まずは、ちょうどパームオイル問題に関するDVDを作成中だったPARC(アジア太平洋資料センター)の制作担当者に、環境・社会に配慮した「オルタナティブな方法で生産されているパームオイル」というものが存在しているのかどうか質問してみた(2008年8月)。

 するとPARCが取材を行なった村では、先住民自身がオイルパーム農園を営む、社会的な意味ではオルタナティブな実践を行っているということだった。ただし、環境的には疑問が残る点があり、作ったオイルパームは結局、大規模精製工場に売るしかなく、全工程を通じてのオルタナティブにはなり得ない、とのことだった。

 パーム油を作る精製工場は、大規模化によってコストダウンをしているため、近隣の小さな農園からパームオイルを集めている。もし小さい農園が環境・社会に配慮したパームオイルを生産したとしても、精製の段階で他の農園のパームオイルと混ぜられてしまうのだ。

 次に私たちは、パームオイルを含む製品を取り扱う製菓会社、加工食品会社、石鹸会社にメールを出して、パームオイルを含む製品を扱う場合に、どのような基準で選んでいるか質問をしてみた。

 環境を破壊せず、先住民の土地を奪わず、労働者の権利を守って作られたパームオイルを、私たちは見つけることができるだろうか?詳細は次回から、ご報告します。

(とりまとめ/三沢健直・伴昌彦)


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