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パームオイルの流通現場からのヒアリング (中間報告 Vol.2)

パームオイル・リサーチの中間報告

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三沢健直 松本市
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2010-03-16
 

 パームオイルについて調べ始めた私たちは、次に、パームオイルを含む製品を取り扱う会社(油脂加工メーカー、製菓会社、加工食品会社、小売店)にメールを出して、パームオイルを含む製品を扱うときに、どのような基準で選んでいるか質問をしてみた(2008年9月~)。問合せを送った会社は、次の17社。

●明治製菓、森永製菓、江崎グリコ、カルビー、日清食品、日清製粉、日本製粉、敷島製パン(Pasco)、フジパン、森永乳業、雪印乳業、味の素、生活クラブ、らでぃっしゅぼーや、生活の木、マルセイユ石鹸、大地の会

 このうち回答が来たのは、次の9社。

●森永製菓、敷島製パン(Pasco)、日清食品、らでぃっしゅぼーや、味の素、森永乳業、江崎グリコ、生活の木、カルビー

 回答が来なかったのは、次の8社。

●明治製菓、日清製粉、日本製粉、フジパン、雪印乳業、生活クラブ、マルセイユ石鹸、大地の会

 問合せに回答を頂いたのは、主に製菓会社・加工食品メーカーだった。これらの会社はパームオイルを購入しているのではなく、パームオイルを加工したショートニングを原料メーカーから購入している。そのために、ほとんどの会社が、パームオイルが生産される地域の環境や社会状況について、把握していない。原産地がどこなのかも正確に把握していなかった。

 回答の内、「会社独自のグリーン調達ガイドラインに基づいている」とした会社が1社(味の素:油脂加工メーカー)あった。また、RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil:持続可能なパームオイル生産のための円卓会議)の基準に基づいていると回答した企業が、2社(江崎グリコ:製菓会社、生活の木:小売店)あった。

 製菓会社の「江崎グリコ」は、主要な原料購入先である三菱商事がRSPOに参画している、とのこと。小売店の「生活の木」では、レッド・パームオイルについてはRSPOのガイドラインに沿って生産する工場のものを使用しているとのことだった。「生活の木」は、流通の下流に位置していながらパームオイルの問題について最も意識している様子が伺えた。

 メールでのヒアリングを通じて、私たちが日常生活で購入する加工食品や石鹸に含まれるパームオイルに関しては、トレーサビリティが存在しないことが分かった。私たちが食べているパームオイルは、どの国のどの農場で作られたものなのか、誰にも分からない状態だ。
 しかも、オーガニック食品を扱うような意識の高い会社ですら、パームオイルのトレーサビリティを確保することができないほど、難しい問題だということが分かってきた。

パームオイルの流通・加工過程の現状

 次に私たちは、パームオイルをショートニングなどに加工し、製菓会社やファーストフード店などに卸す「油脂メーカー」から、パームオイルの流通の現状について話を聞きたいと考えた。大変有難いことに太陽油脂株式会社の家庭品販促・開発部の長谷川部長が取材に応じてくれた(2008年10月)。

 太陽油脂の売上げの8割は食用油脂からだが、合成界面活性剤を使用しない石鹸の販売に力を入れている。生協や自然食品店などに石鹸シャンプーなどを卸しているので環境に関心のある人には良く知られた会社だ。長谷川さんは合成洗剤を批判して石鹸の普及運動をしている人で、レアリゼでも以前紹介したことがある(関連記事「地球環境を守って」を参照)。

 横浜市の京急子安駅近くの工場を訪問(2008年10月)すると、石鹸の製造工程や工場の中を案内してくれた。その後で、パームオイルが生産地から日本に輸出され、加工されて製菓会社やファーストフードに出荷するまでの過程について真摯にご教示いただいた。

 商社が現地から輸入したパームオイルは、8000トンのタンカーでフィリピン・マレーシア等から運ばれる。横浜港から200トンの艀(ハシケ)で、工場裏の水路まで運ぶ。ハシケから工場のパイプに接続し、オイルを入れる。パームオイルには、オレイン・ステアリング・Wオレイン・TMFなどの種類があり、タンカー内でも別々の槽に入れられて運ばれる。

艀(ハシケ)が工場裏の水路まで運び、工場のパイプに接続してオイルを入れる。中央下の白いパイプ。


 工場内に巨大なオイルタンクが三つ立っていた。228トンが二つ。その他にも、小さなタンクが数十個並んでいる。オイルのうち、約15%がパームオイル、約15%がココナッツ(ヤシ油)、15%が菜種オイルだそうだ。

パームオイル(オレイン、ステアリング、Wオレイン、TMFなど)やココナッツオイルなど各種オイル用のタンク


 パームオイルは、この工場でショートニングなどに加工され、四角いアルミ缶に入れて全国のファーストフード店などに配送される。フライなどが専門の店舗であれば、月に600~700kgのショートニングを使用する。乳業会社では、コーヒークリームやホイップクリームに使用する。

ショートニングのアルミ缶


 パームオイルを加工してショートニングなどの「植物油脂」にするために、以前は水素転換を行っていた。しかし近年、水素転換によって生じるトランス脂肪酸への批判が高まったため、水素転換を止め、最近ではエステル交換を行っている。
 これは脂肪酸(オレイン酸とステアリン酸)の位置を入れ替える方法で、加熱もせず、何も添加せずに加工するという。トランス脂肪酸は、日本人の食生活では、さほど気にすることはないとされてきたが、消費者の健康意識が高まり、小売店等からトランス脂肪酸のない油が欲しいという要望が出るようになったために対応したという。

加工のために添加する水素のタンク


 「植物油」の表示について聞いたところ、やはり、原料となる油の種類と配分が、その都度異なるという。主な原因は、温度だそうだ。パーム油は温度が低いと固まってしまう。だから植物油の配合は季節によって異なり、「植物油」と表記せざるを得ないという。また油の価格変動にも影響されるそうだ。

トレーサビリティの可能性

 次にパーム油のトレーサビリティの可能性について質問してみた。同社では、シカゴの先物市場の価格を見ながら、商社からパーム油を購入する。商社も市場価格を見ながら高く売れるタイミングを待つため、自社でタンクを持っており、そこで各工場からのオイルが混じってしまうという。

 前回説明したようにパーム油の精製工場では、近隣の複数の農場で搾油された油が混ぜられる。そして商社のタンクや輸送用タンカーでは、さらに複数の精製工場で精製された油が混じってしまう。トレーサビリティの確保は、現在の流通方法では不可能なのだ。

 もしタンカーではなくドラム缶で特定の農場から購入・輸送すれば可能かもしれないが、価格が3倍になってしまうという。長谷川さんが心配しているのは、このことだった。同社が販売しているような自然由来の石鹸は、合成洗剤との競争に絶えず晒されているため、価格が3倍になってしまっては太刀打ちできないという。そうなれば、合成界面活性剤を使わない石鹸は駆逐されてしまう。

 ところで、昔と比べると合成洗剤も改良が進んでおり、合成洗剤と石鹸の環境負荷について検索すると専門的な論争が百出する。私たちには到底判断がつきかねるが、いずれにしても、私たちは石鹸を排斥するつもりは毛頭ない。パームオイルに対して一律に不買運動をするのではなくて、環境・公正に配慮したパームオイルの生産と管理について考える必要を改めて感じたのだった。

この問題への対応

 現状ではトレーサビリティの確保は難しい。とは言え、同社もこの問題について強い感心を持っており、マレーシアの農場へ毎年社員を派遣して現地視察をしている。この農場はRSPOに加盟しており、有機肥料の実践をしている先進的なところだそうだ。また、主な購入先の三菱商事がRSPOに参加しているという。

 パームオイルの代替オイルの可能性について質問してみた。牛脂は狂牛病でイメージが悪く、売れなくなる。国産オイルは1%もなく値段が3倍もする。米油は臭いが悪く、量が少ない。菜種油は外国産のものは品種改良されているが、日本のものは心臓病に悪いと言われるエルシン酸が含まれる。
 「菜の花プロジェクトから購入しては?」と聞いてみると、菜の花プロジェクトは地域での油の循環を目在してるので、主旨が異なるだろう、ということだった。やはり難しい。

 ところで太陽油脂では、九州のグリーンコープとオルタートレードと組んでパレスチナオリーブオイル石鹸の製造を始めるということだった。オリーブオイルは、アフリカ北部などで生産され、イタリア等で加工され、価格が上がったものが輸入されるのが一般的だ。そのため、パレスチナから直接オリーブを購入すると、スーパーなどで販売する一般的なオリーブオイルと比較しても価格がさほど高くならない。そのため、オルタナティブな石鹸として販売が可能なのだ。この点がパームオイルとは違うという。

 次回は、環境・社会に配慮したパームオイルについてご報告します。


カリマンタンにおけるプランテーション開発/BIN (中間報告 Vol.7)
オーガニック認証のパームオイルとは?(中間報告 Vol.6)
サラワク州におけるプランテーション開発と先住民との関係/FoEジャパン(中間報告 Vol.5)
ボルネオ島のプランテーション開発/BCTジャパン (中間報告 Vol.4)
パームオイル代替オイルの可能性/バイオディーゼル燃料編 (中間報告 Vol.3)
パームオイルに関する政策提案の試みからリサーチ・ユニットへ (中間報告 Vol.1)

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