パームオイルについて調べ始めた私たちは、次に、パームオイルを含む製品を取り扱う会社(油脂加工メーカー、製菓会社、加工食品会社、小売店)にメールを出して、パームオイルを含む製品を扱うときに、どのような基準で選んでいるか質問をしてみた(2008年9月~)。問合せを送った会社は、次の17社。
●明治製菓、森永製菓、江崎グリコ、カルビー、日清食品、日清製粉、日本製粉、敷島製パン(Pasco)、フジパン、森永乳業、雪印乳業、味の素、生活クラブ、らでぃっしゅぼーや、生活の木、マルセイユ石鹸、大地の会
このうち回答が来たのは、次の9社。
●森永製菓、敷島製パン(Pasco)、日清食品、らでぃっしゅぼーや、味の素、森永乳業、江崎グリコ、生活の木、カルビー
回答が来なかったのは、次の8社。
●明治製菓、日清製粉、日本製粉、フジパン、雪印乳業、生活クラブ、マルセイユ石鹸、大地の会
問合せに回答を頂いたのは、主に製菓会社・加工食品メーカーだった。これらの会社はパームオイルを購入しているのではなく、パームオイルを加工したショートニングを原料メーカーから購入している。そのために、ほとんどの会社が、パームオイルが生産される地域の環境や社会状況について、把握していない。原産地がどこなのかも正確に把握していなかった。
回答の内、「会社独自のグリーン調達ガイドラインに基づいている」とした会社が1社(味の素:油脂加工メーカー)あった。また、RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil:持続可能なパームオイル生産のための円卓会議)の基準に基づいていると回答した企業が、2社(江崎グリコ:製菓会社、生活の木:小売店)あった。
製菓会社の「江崎グリコ」は、主要な原料購入先である三菱商事がRSPOに参画している、とのこと。小売店の「生活の木」では、レッド・パームオイルについてはRSPOのガイドラインに沿って生産する工場のものを使用しているとのことだった。「生活の木」は、流通の下流に位置していながらパームオイルの問題について最も意識している様子が伺えた。
メールでのヒアリングを通じて、私たちが日常生活で購入する加工食品や石鹸に含まれるパームオイルに関しては、トレーサビリティが存在しないことが分かった。私たちが食べているパームオイルは、どの国のどの農場で作られたものなのか、誰にも分からない状態だ。
しかも、オーガニック食品を扱うような意識の高い会社ですら、パームオイルのトレーサビリティを確保することができないほど、難しい問題だということが分かってきた。
パームオイルの流通・加工過程の現状
次に私たちは、パームオイルをショートニングなどに加工し、製菓会社やファーストフード店などに卸す「油脂メーカー」から、パームオイルの流通の現状について話を聞きたいと考えた。大変有難いことに太陽油脂株式会社の家庭品販促・開発部の長谷川部長が取材に応じてくれた(2008年10月)。
太陽油脂の売上げの8割は食用油脂からだが、合成界面活性剤を使用しない石鹸の販売に力を入れている。生協や自然食品店などに石鹸シャンプーなどを卸しているので環境に関心のある人には良く知られた会社だ。長谷川さんは合成洗剤を批判して石鹸の普及運動をしている人で、レアリゼでも以前紹介したことがある(関連記事「地球環境を守って」を参照)。
横浜市の京急子安駅近くの工場を訪問(2008年10月)すると、石鹸の製造工程や工場の中を案内してくれた。その後で、パームオイルが生産地から日本に輸出され、加工されて製菓会社やファーストフードに出荷するまでの過程について真摯にご教示いただいた。
商社が現地から輸入したパームオイルは、8000トンのタンカーでフィリピン・マレーシア等から運ばれる。横浜港から200トンの艀(ハシケ)で、工場裏の水路まで運ぶ。ハシケから工場のパイプに接続し、オイルを入れる。パームオイルには、オレイン・ステアリング・Wオレイン・TMFなどの種類があり、タンカー内でも別々の槽に入れられて運ばれる。

艀(ハシケ)が工場裏の水路まで運び、工場のパイプに接続してオイルを入れる。中央下の白いパイプ。

パームオイル(オレイン、ステアリング、Wオレイン、TMFなど)やココナッツオイルなど各種オイル用のタンク