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パームオイル代替オイルの可能性/バイオディーゼル燃料編 (中間報告 Vol.3)

パームオイル・リサーチ・ユニットの中間報告 

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三沢健直 松本市
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2010-05-12
 

 パームオイル・リサーチ・ユニットによる継続リサーチの第3回。今回は、環境・社会に配慮したパームオイルについて報告する予定だったが、取材時点と状況に変化があったので、先にパームオイル代替オイルの可能性(バイオディーゼル燃料編)について報告する。

 バイオディーゼル燃料について考えるために、NPO法人バイオマス産業ネットワーク(BIN)の泊みゆき理事長、NPO地域づくり工房の傘木宏夫代表理事、シャロムヒュッテの臼井健二さんを訪問してお話を伺った。

バイオディーゼル燃料(BDF)について

 近年、地球温暖化対策としてバイオマス燃料が注目されているが、バイオディーゼル燃料(BDF)の原料としてパームオイル需要が増大しており、これもパームオイル・プランテーションの拡大に拍車をかけている。

 EUでは、2008年12月に「再生可能エネルギー指令」を公布し、その中で、2010年までに輸送用燃料の5.75%、2020年までに10%をバイオ燃料とすることを定めた。
 ただし、導入を義務付けるバイオ燃料が持続可能な方法で生産されたものであることを定めている。この指令では、「生物多様性の高い土地、炭素貯留の高い土地で原料生産されたものは持続可能としない」と定めている。

 しかしFoeヨーロッパの2010年3月のプレスリリース(関連サイト参照)によると、オイルパーム・プランテーションも「持続可能な森林」として認定される可能性があるらしい。注視する必要がありそうだ。
 2010年2月には、世界最大のバイオディーゼル消費国のドイツの政府は、「バイオ燃料と植物油の認証に関するガイドライン」を公表し、植物油に関する「持続可能性の認定」手続きを制度化した。

 ただし、日本の燃料消費はガソリンに大きく偏っているため、経済産業省が導入を検討するバイオ燃料はディーゼルより、むしろエタノールである。そのためパームオイル由来のバイオ燃料の導入が政府によって促進される可能性は低いようだ。
 BINの泊さんによると、パームオイルは食用としてのほうが高い値段が付くので、バイオディーゼル燃料(BDF)にすべきではなく、食用にすることが前提とのことだった。

 とは言え、日本でも2007年から、バイオディーゼル燃料(BDF)を導入したことで話題となった都バスにおいて、利用されたBDFはパームオイル由来のものだった。
 私たちはそこで、BDFとして利用するためのオイルとして、パームオイルに替わるものがあるのか、調べてみることにした。

菜の花プロジェクト

 菜の花プロジェクトとは、耕作放棄地などを利用して菜の花を栽培し、菜の花から取れる菜種から菜種油を作り、それを食用やバイオディーゼルに使用して、地域内での資源循環を目指す活動だ。1998年に滋賀県から始まって全国に広がっている。調べたところ、菜種油をそのままBDFに変換して車両などを動かしているところはほとんどなく、一旦食用とした後で、他の食用油と一緒に廃食油として回収し、それをBDFにするのが一般的なようだ。

 2008年9月、長野県大町市で「大町菜の花プロジェクト」を行っている「NPO地域づくり工房」を訪問し、代表の傘木さんのお話を伺った。大町市には2008年、全国の菜の花プロジェクト団体から、610人もの人々が集まって、「菜の花サミットin信州・大町」を開催している。大町菜の花プロジェクトでも、菜種油は食用として利用されており、それと平行して廃食油の回収とBDFの精製が行われている。

 食用の「菜の花油」のほうは、当初天ぷら油として利用できるか試験してみたところ、あまり上手く行かず、珍しい日本産ヴァージンオイルとして利用されている。

 廃食油については、NPO地域づくり工房が、市内の旅館・ホテル、飲食業などから回収し、粘度の高いグリセリンを取り除いた脂肪酸メチルエステル(BDF)に精製して、月2000~2500㍑を提供している。その用途は、建設業や農林業などの重機や、山小屋の発電機などが多い。車両の燃料にもなるが、税制の関係で重機・農耕機などに利用されることが多いようだ。

 パーム油の使用を完全に代替するものではないが、地域での油の循環を目指す試みとして大変面白い。旅館などの「油田」が近くにないと難しそうだが、旅館と農業とは大抵は、近くにあるのでまだ多くの地域で応用可能だろう。(詳しくは関連記事を参照)

WVOというバイオディーゼル燃料

 大町菜の花プロジェクトのように、廃食油から脂肪酸メチルエステルを精製する装置は、数百万円程度するので、廃食油を回収して、スタンド等で一般向けに販売するためには事業者が必要だ。

 これに対して、植物油を精製せずに、そのまま燃料として利用する方法もある。植物油を直接使うのはSVO(Straight Vegetable Oil)、廃食油を使うのがWVO(Waste Vegetable Oil)と呼ばれる。これなら高価な装置は不要で、資金のある事業者も要らない。個人にもできるのである。

 このような、WVOを実践している人々のネットワークの拠点の一つとして、安曇野市のペンション、シャロムヒュッテを経営する臼井さんと、そのネットワークの山野さんから2008年10月に、お話を伺った。

 山野さんは、廃食油を100㍑/月程度を自分で回収して車を走らせている。油の回収、交換、ろ過に非常に時間と手間がかかるが、楽しみながら運転しているそうだ。(詳しくは関連記事を参照)

 廃食油を精製するにせよ、WVOとしてそのまま利用するにせよ、分量から考えて現在の軽油に置き換えることは難しい。したがって、海外から輸入される可能性のあるBDFの代替にもならない。しかし、多少なりともその使用を減らすことはできることは重要だ。

 いずれにせよ、燃料を大量消費する現代社会のあり方を前提としてバイオ燃料を導入することは、どう転んでも持続可能な方法には成りえない。むしろ彼らの試みは、油を別のものに置き換えることよりも、循環型の経済とコミュニティを創ろうとする試みとして大きな価値があるだろう。

バイオマス燃料について

 バイオマス燃料に関しては、安部首相当時の2006年、年間600万㌔のバイオエタノールの国内生産を目指すべきと指示し、工程表が作られた。600万㌔は日本の潜在的なバイオマスの半分に当たり、日本の国内ではまったく自給できない到底不可能な話だった。本気で実現するなら輸入する必要があるが、東南アジアの食糧生産と競合する可能性があり、持続可能な形にはならないという。

 東南アジアでは、ヤトロファが食料と競合しないとして注目する向きがあるが、大量に生産すると、やはり問題が起きるという。泊さんによれば、ヤトロファを植えるならオイルパームの方がましかもしれないとのこと。生産性では、オイルパームはヤトロファの5倍。それにパームオイルは食べられるが、ヤトロファは食べられない。ヤトロファは、アフリカで大きな問題になっているそうだ。

 エタノールを休耕田で作るという案も継続的に出るが、コストもさることながら、トラクターなどを使用するために、バイオ燃料を作るために投入する化石燃料が高くなり、エネルギー収支の観点から、気候変動対策としてはまるで意味がないそうだ。日本ではそもそも適した原料がないのでエタノールは無理だと泊さんは言う。米は、飼料米にしたり酒でも作った方が高く売れるし、よほど良いと。

 バイオエタノールのエネルギー収支(出力エネルギー/入力エネルギー)はケースバイケースで、ブラジルのサトウキビでは9~10倍くらい。しかしセラード(熱帯サバンナ地帯)を開発した場合などは、CO2排出量がエタノールで相殺出来る部分より遥かに多い。バイオ燃料は石油の代替燃料としては良いが、どうやら気候変動対策にはならないという雰囲気になりつつあるという。

 アメリカではバイオエタノールが進んでいるが、むしろ農業対策、あるいは中東への原油依存の対策として行われたもので、気候変動対策ではないとのことだった。

 2010年3月、政府は「バイオ燃料導入に係る持続可能性基準等に関する検討会」報告書(経済産業省)を発表した。これは、今後のバイオ燃料の持続可能性基準についての方向性を取りまとめたもので、上記の泊さんも参加している。
 民主党政権が、野心的な温暖ガス削減目標を達成するために、原産地での持続可能性を軽視してはいけないと考えていたが、報告書の定める持続可能性基準はかなり厳格なもので、現時点ではパームオイルは持続可能性の基準を充たさないようだ。

 ただし、今春(2010年)から、バイオエタノールを1%程度混合したバイガソリンが販売され始め、バイオ燃料の利用が本格的に始まりつつある。今後も、バイオ燃料の持続性基準について、絶えず注視していく必要はあるのだろう。

(とりまとめ/三沢健直・伴昌彦)


カリマンタンにおけるプランテーション開発/BIN (中間報告 Vol.7)
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関連サイト
パームオイル・リサーチ・ユニット
Foeヨーロッパ・プレスリリース
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク(BIN)
NPO地域づくり工房
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