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ボルネオ島のプランテーション開発/BCTジャパン (中間報告 Vol.4)

パームオイル・リサーチ・ユニットの報告

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伴昌彦 東京都
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2010-06-20
 

 ボルネオ島(インドネシアではカリマンタン島の呼称を用いる)にはマレーシア領、インドネシア領、ブルネイ領がある。近年まで豊かな熱帯雨林が残されていたが、現在はプランテーション化や伐採により森林破壊が進んでいる。

 ボルネオにおける開発や先住民の状況、生態系保全の試みについて、前出のNPO法人バイオマス産業ネットワーク(BIN)に加え、ボルネオ保全トラストジャパン、FOEジャパンに聞き取りを行なった。

 BINの泊さんは、2008年11月にインドネシア側の町を視察した。ボルネオ保全トラストはマレーシア側のサバ州で、緑の回廊作りによる生物多様性保全を目指している。FOEジャパンは、違法伐採等の森林問題に取り組んでおり、現在マレーシア側のサラワク州でも森林の現状を調査している。

ボルネオ保全トラストの試み

 ボルネオ保全トラスト(以下BCT)は、「ボルネオ緑の回廊」を作ること、生態系保全のプラットフォームを作ることを目的としている。マレーシアサバ州の行政、資本家、NGO、などを中心に2006年10月に設立され、同年12月にはマレーシア政府から免税団体として認可された。本部はサバ州のコタキナバルに置かれている。日本からは理事として更家雄介さん(サラヤ社長)、COOとして坪内俊憲さん(野生生物管理専門家)が参加している。

 2007年1月にNPO法人ゼリ・ジャパンが日本でのBCTの支援窓口となったが、2008年5月にゼリジャパンからBCT支援窓口が独立し、BCTジャパンが設立され、2008年12月にNPO法人として認証された。

 2009年6月、BCTジャパンの事務所のあるサラヤ株式会社を訪問し、事務局長の森井真理子さんにお話を伺った。サラヤは、ヤシノミ洗剤の売上の1%でBCTの活動(内15%がBCTジャパンの運営資金)をサポートしている。

 「緑の回廊」とは、パームオイル農園開発や違法伐採で分断化された保護区(森林)と保護区(森林)の間の土地を確保し(購入、収用など)し、生態系を連続させる活動。「回廊」を通って、孤立した森林に取り残された野生生物が他の森林に移動できるようになる。

市民の寄付で獲得した1号地(Photo:BCTジャパン)


 野生生物は、生息地が分断されて個体群が孤立してしまうと、遺伝子の多様性も失われ、絶滅の恐れが強まる。例えばオランウータンは、森と森が50mでも途切れると、その間を移動できなくなってしまう。たとえ狭い地域の森が保護されていても、周りをプランテーションに囲まれてしまうと種を維持することが難しい。

 生物多様性保全のための回廊作りは、政府、企業、農園、地元の人などすべてのステークホルダーの参加が必要である。理事長にサバ州元官房長官、理事に野生生物局局長が参画する等、地元の行政との連携が実現した。購入した土地はBCTの名義となる(サバ人でないと所有できない土地についてはBCTのサバ人の理事の名義とし、理事辞任の際は他の理事に名義変更される)。

 「緑の回廊」作りが進められているのは、ボルネオ島の北東部を流れるキナバタンガン川下流域とセガマ川流域。ボルネオゾウやオランウータンなど野生動物が多く生息している。しかし保護区周辺は既にプランテーション開発、違法伐採が進み、保護区は分断されている。BCTでは緑の回廊として2万ヘクタールの土地を確保する計画だ。

 緑の回廊対象地は「二次林」と「パームオイルのプランテーション」「違法伐採の地域」などが混在している。BCTは、違法に開発された土地については「法の遵守」を政府に働きかけている。現地の土地の管理は複雑で不明瞭なことも多く、土地購入の際も法的に境界線を確定する必要がある。

開発・保全と地域住民

 この地域の人々は、森や川に依存して(手長エビや貝の漁など)で生活していた。しかし、開発の影響等で漁獲量が減少したこともあり、今は町に働きにいったり、土地をパーム農園に売らざるを得なくなってきている。プランテーション開発には問題も多いが、パームオイル自体は単位面積あたりの収穫量が多い有用な食物だ。

 森井さんはパームオイルを使わないことが問題解決につながるとは考えておらず、日本人を含めてパーム油の消費者が原料生産地で何が起こっているのかを知り、生物多様性保全のためのコストを負担する=消費者主体の生物多様性保全活動が必要であること、地元の人々がその土地で多様な生物といっしょにずっと暮らしていけるシステムをつくることが重要であると主張していた。

 BCTジャパンではモデルケースとしてエコツアーなども行なっており、持続可能な形で地域住民に現金収入をもたらすことを目指している。
 セガマ川ぞいにあるダカット村にはホームステイを行っている家が約10軒があり、エビ漁など村での生活や村人との交流が体験出来る(エコツアーは6~7人で実施可能。費用は1回16~20万円)。

オランウータンのための吊り橋を2008年から架けている(Photo:BCTジャパン)


 また、BCTジャパンはKOCP (Kinabatangan Orang-Utan Conservation Project)というオラウータンの保全活動などを行なう現地NGOなどとも連携しており、共同でつり橋の製作などを実施した。KOCPは現地の人々に、生態系を守ることに価値があると認識してもらうことが重要だという意識を持ち、地域コミュニティと協力して活動し、村人を雇用している。

(とりまとめ/三沢健直、伴昌彦)


カリマンタンにおけるプランテーション開発/BIN (中間報告 Vol.7)
オーガニック認証のパームオイルとは?(中間報告 Vol.6)
サラワク州におけるプランテーション開発と先住民との関係/FoEジャパン(中間報告 Vol.5)
パームオイル代替オイルの可能性/バイオディーゼル燃料編 (中間報告 Vol.3)
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パームオイルに関する政策提案の試みからリサーチ・ユニットへ (中間報告 Vol.1)

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