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サラワク州におけるプランテーション開発と先住民との関係/FoEジャパン(中間報告 Vol.5)

パームオイル・リサーチ・ユニット中間報告

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伴昌彦 東京都
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2010-06-27
 

 FoE(Friend of Earth)は、日本市場を流通する木材を環境や社会に配慮した「フェアウッド」に変えることを目指す活動を行っている。FoEの森林担当の三柴淳一さんより、サラワク州でのプランテーション開発についてお話を伺った。三柴さんはサラワクに通い、現地の状況を調査している。

パームオイルとアカシア・プランテーション

 パームオイルとアカシアなどのプランテーションの開発には、実は密接なつながりがある。マレーシア・サラワク州の森林開発はシンヤン、サムリン、リンブナン・ヒジャウ、KTS、WTK、タ・アンの6大企業が殆ど牛耳っており、パームオイルも木材も同系列の企業が扱っているのだ。

 樹木を植えた場合、アカシアのような早成樹であっても、8年目までは収益が上がらない。しかしオイルパームは植え付け後、3年目から収穫が始まるため、より早くから収益が得られる。過去にサラワク州政府は企業に対して人工林・パームオイルプランテーション合わせて260万haの造成許可を与えているが、最初に面積の25%をパームオイルプランテーションにして、残りの区画にアカシアを植えるというローテーションが組まれていることが多い。植えられた木はMDFやパーティクルボード(いずれも木材の繊維や破片を接着剤で成型した板材)として使われている。

アカシアの海-ビントゥル/(C)FoE Japan


係争事例

 サラワクでは、州政府が土地開発を推進している。政府が企業に土地開発の許可を与えて、アカシアなどの人工林を拡大しているが、その殆どに先住民の土地が含まれ、企業と先住民との間の係争事例は多い。

 サラワク州沿岸部の都市ビントゥル付近では、イバン族と企業の土地をめぐる諍いがある。この事例ではAPPの子会社のBPP(ボルネオパルプ&ペーパー社)の開発によってイバン族の住民が移住させられ、補償金は支払われていないか、支払っても小額であった。

 移住と同時に先住慣習権を失ってしまうため、当初は移転を拒否する住民が多かった。しかし、パルプ工場が作られて水質悪化するのではないかといった話が流れたこともあり、多くの住民が移住した。この諍いは裁判沙汰にはなっていないが、BPPの係争で先住民の土地の権利を認める判決が下ったケースもある。

 州都クチン近くでは、リンブナン・ビジャウ社(木材伐採企業)系の企業が、住民を甘言でたらしこんで開発権を取得したが、契約書が英語だったり、補償額が少なかったりと、問題の多い事例がある。また、住民同士を仲たがいさせたり、不在地主の土地を開発したりもしている。この企業はオイルパームを植えようとしているが、住民はブロッケードを築いて2ヶ月ほど開発を止めている。

プナン人のブロッケード活動-バラム/(C)FoE Japan


 こうした開発に対して、抵抗した住民が投獄されるケースもある。しかしサラワクでは他国(例えばフィリピンなど)のように殺害に至るまでの暴力沙汰は非常に少なく、三柴さんは、その点では「他国に比べるとましなのではないか」としていた。

開発と先住民の関係

 住民の主張は、基本的には、彼らが従来から使用してきた土地に対して先住慣習権(NCR)を認めてほしい、というものであるが、その一方で妥協を受け入れている人々もいるため、一概に住民が何を求めているのかは言えない。奪われた土地を返せという主張をする人もいるが、開発されてしまった土地に関しては、もう返還を争っても仕方がないので、経営権の一部譲渡を要求するケース等もある。このように、企業と対立するのではなく、企業を使って発展しようとし始めた人達もいる。

 パームオイルプランテーションが地域住民にもたらす影響についても色々な側面がある。例えば開発によって道路が作られることで、先住民が福利を享受している面もある。しかし、大企業のプランテーション労働者のうちマレーシア人は2~3割で、多くはインドネシアからの出稼ぎ労働者である。勿論賃金の安さもあるが、三柴さんによれば、マレーシア人は気位が高く、インドネシア人のやる仕事を自分達が出来るかといった意識もあるように見えたと言う。

 企業側の言い分の一例を紹介すると「工場や伐採現場の周辺に住む先住民にも仕事をオファーしていないわけではない。しかし彼らは賃金への要求は高いのだが、スキルが伴わないこともある」とのこと。そうした場合は、スキルがあって賃金にも不満をあまり言わない出稼ぎ労働者が選ばれてしまうようだ。

 これに対し、先住民側は「スキルがないのは仕方ない。学んだことがないためだ。企業にはそうした基本的なトレーニング等も提供してほしい」と主張している。

山土場での丸太仕分け作業-バラム/(C)FoE Japan


 第三者としては、どちらが正しいとも言いにくいところだが、三柴さんはNGOとしてあえて意見を言うならば、とした上で「企業サイドは、住民よりも後発で森林に関与し、森林から利益を得て財力もあるのだから、住民側の意向をできるだけ取り入れて、譲歩していくべきだと思います」とコメントしていた。

 インドネシアでは、スマリンド、エルナ・ジュリワティ、イントラカ、アラスクスマグループなど、こうした悩ましい課題を少しずつ克服していってFSC-FM認証を取得している企業があるという。
 これらの企業には、オイルパーム農園などでは批判を受けているところもあるが、認証森林地域に限定すれば、多大な努力を重ね、インドネシア人同士、落としどころを探して上手くやっている。これらの企業では経営者や資本自体は華人系だが、実務は必ずインドネシア人が担っているのに対し、サラワクでは、企業サイドは資本も経営も華人系が独占していて、マレー系や先住民族系などマレーシア人があまり参画できていないという。森林を巡る問題には、マレーシアの複雑な民族の構成も絡んでいるようだ。

悪名高き巨大な水力発電ダム-バクン/(C)FoE Japan


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