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フィンランド小学校事情

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靴家さちこ フィンランド/ケラヴァ 
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2010-11-06
 

小学校入学編

 フィンランド人の夫と長男と共にフィンランドに移り住んできたのは、2004年3月のこと。当時はPISA(OECDの学習到達度調査)についてさえ、ロクな知識が無かった私だが、幼少期や青年期の海外経験の中から、日本の教育には疑問を抱いていた。ゆえに、夫の仕事の都合でフィンランドに移住することを決めた時には、寒いところは嫌だなぁと渋い顔をしつつも、「教育ならフィンランドの方が良い」という夫の言葉を信じて、一路北を目指すことにした。

 こちらに来た当時は7カ月だった長男が、今年は7歳になり、8月には小学一年生になった。日本にいれば同級生となるはずだった、かつての幼馴染達は、既に4月から学校生活をスタートさせている。まだ私達が日本に住んで「たら」、「れば」という好奇心からも、日本のママ友達ともメールで情報交換をしつつ、長男の学校生活に熱いまなざしを送り続けている。

 フィンランドの教育に関心を持つ人は多いと思うので、これから一年間の予定で、フィンランドの小学校事情を中心に、現地の実情をお伝えしていくつもりである。

必需品は何?

 それにしても、入学前の準備は何をしたらいいのだろう?日本だったら、ランドセルに机を買って、ありとあらゆる学校指定の必需品にペンで名前を書く大仕事が待っているはずだ。ところが、筆記用具もノートも学校で支給されるフィンランドでは、買うべきものが学習机とリュックサックぐらいしか思いつかない。

 プリスクール在学時に、学校見学に行った時のことを覚えている長男は、「鉛筆とか消しゴムは学校にあるんだよ」と私に教えてくれた。が、夫に「それでも自分のを使いたい人は持って行ってもいいんだよ」と知らされると、喜んで日本で入学祝に貰ったポケモンの筆箱に、新しい鉛筆を詰め込んだ。

 学校からは、これといって買うべきものが記されたリストが送られては来なかった。就学前の子どもを育てているフィンランド人のママ友も「そういう指示は一切無いの?」と不安がっていた。フィンランドの全ての学校が同じではないので、息子が通う学校は少々のんびりしているのかもしれない。通い始めてから慌てて準備したものもある。


 入学後一週間して、時間割が配られると、週に二回、体育の時間があることがわかった。が、「体育の授業がある日は、動きやすい格好をしてくるように」という指示があっただけ。体育着を買う必要はなく、学校で着替えをするわけでもなく、息子はそのまま「動きやすい格好」で一日を過ごして帰ってくる。(※11月からは体育館を使う為、着替えが必要になった)

 それと同じ頃、「学校の中では靴を脱ぐので、上履きを買ってくるように」と書かれたプリントが配られてきた。特に学校指定のものがあるわけではなく、そこら辺のスーパーで売っているもので良い。

 入学して間もなく、帰ってきた長男のリュックサックの中には、母国語(=国語)の教科書とワークブック、算数の教科書とワークブック、小さな連絡帳が入っていた。これらの教材各種も全て無料。

 この時点ではワークブックや教科書に直接書き込むのでノートの必要はないが、いずれノートも学校から支給される。ただし、この教科書と連絡帳が痛まないようにビニールのカバーをつけるよう、先生からの指示があった。カバーは、裏側全面が粘着テープになっている透明のビニール生地を各自で購入し、保護者がつける。

 つまり、フィンランドの小学校入学に際しての必需品は、1)学習机と椅子、2)リュックサック、3)上履き、4)教科書カバー、の4点だけ。教科書カバーについては、学校や先生によって必要としないところもある。これ以外に、買う必要があるものはまったく無い。

 ただし、別の小学校の先生の話では、効果的な教材があればコピーして使うので、紙代として予算を上回る費用が発生すれば、保護者から2ユーロ前後の小額を要請することはあるそうだ。

 それ以外で、学校でお金が必要となるのは、遠足や社会科見学などのイベント時だ。そういうときにはクラスでバザーを催して資金調達をする。それが面倒ならば、各家庭から頭割の費用を集金することになる。――が、フィンランドでは「教育は無料」という概念が徹底しているので、ちょっとでもお金がかかるとなると、とたんに保護者の顔が曇ると、先生は語っていた。給食費も無料だし、日本と比べると――お金は全然かかっていないのだが。

入学式編

 入学の前、長男が通う小学校からは、保護者宛てに入学の詳細が記された手紙が送られては来なかった。代わりに、長男ご本人宛に「8月11日、9時に学校のDのドアの前に集合」という趣旨の手紙が送られてきた。その紙を穴があくほど読み返したが、そのどこにも「親も同伴してください」とは書いてはいない。どうやら入学式が無いらしい。保育園にもプリスクールにも入園式や卒園式が無かったので、あまり驚かなかったが。

 私は、朝からスーツや着物で着飾る面倒から解放された安堵と共に、そういった人生の節目が写真に残らない寂しさも感じた。それでも、保育園からプリスクールまでずっと親の送迎付きで通っていた子ども達が、いきなり学校に初日から一人で歩いて行けるわけもなく、親がついてくるのは暗黙の了解とされていたようである。

 かくして入学の日。一つ良いことに気がついた。入学式が無いと言うことは、格式ばった場面がないので2歳半の次男も連れて行けるのだ。実際に行ってみると、小さい子どもや赤ちゃん連れで、家族全員で新一年生を送り届けていく家族も少なくはない。
 朝9時になると、Dと書いてあるドアから先生らしき女性が二人現れて、手短なスピーチの後、A組、B組の子ども達の名前が読み上げられ、クラス分けが終わった。クラスは二つ。生徒はそれぞれ15名前後と少ない。


 呼ばれた順に子どもたちが整列すると、先生を先頭にドアの向こうへ吸い込まれて行った。それを合図に、家族達は家路に着く。学校名が刻まれた校門なども無いので、門前での記念撮影も無し。写真は、名前を呼ばれる我が子の姿を、他のお母さん達と共に背伸びをしながら、ぱちりぱちりと撮るぐらいだった。あまりのあっけなさに驚きつつも、2ヶ月半にも及んだ長い夏休みの後、やっと家の中に日常が戻ってきて、私は束の間、ほっとしたのである。


フィンランド小学校事情 Vol.4
フィンランド小学校事情 Vol.3 ~時間割と教科編(母国語)
フィンランド小学校事情 Vol.2 就学前教育編

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