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緑の革命から常緑の革命へ Green Revolution to Ever-Green Revolution

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前田智佐子 オランダ
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2011-01-26
 

 インドの有機農業の歴史は紀元前に遡る。古代サンスクリットで書かれている「リグ・ヴェーダ」では次のように記載されている。

 “地球は母、空は父、空気は魂、太陽はエネルギー、そして、水は生命を支える脈。”

 1960年代、飢饉状態にあったインドを救い、大幅な増産を可能とした緑の革命以前のインドでは有機農業が中心だったのだ。
 しかし、緑の革命によって収量を大幅に増産した穀物は水や肥料を大量に要する。土地はやせ、収量は次第に落ちていった。さらに、近代農業は高価な化学肥料と農薬に依存するため、インドの農民の半数は借金を抱えているという。近年、農民の自殺が社会問題として取り上げられている。

 インド有機農業の父、アルバートハワード氏は次のように述べている。
“Nothing effective has been done to replace the loss of fertility involved in this vast increase in crop and animal production, and it brought two hungers to India; the stomach and the machine”
(インドは空腹と機械の欠乏という2つの飢えにさらされている。)

 こうした緑の革命の功罪を振り返り、Ever-Green Revolution(常緑の革命)を提唱したのは、インドで緑の革命を導きアジアのノーベル賞といわれるマグ・マサイ賞を授与されたスワミナタン(Swaminathan)氏その人だったのだ。氏は80歳になってからスワミナタン財団を立ち上げ、技術に頼らず、誰にでも小規模な投資で実践できる、先端と伝統を融合させた「エコ・テクノロジー」を推奨している。ever-green、永続する緑のために-。

オーガニックは貧困を救う

「私はオーガニックで救われた」

 こう語るのはインド、マイソール市郊外で有機農業を営むビラムさん。ビラムさんが有機農業に転換したのは5年前。それまでは売上が年15,000 ルピー(約3万円)のところ生産コストに年10,000 ルピー(約2万円)かかっていた。この収入では家族を養うことはできない。

 こうして、大都市バンガロールへと出稼ぎに行く農家は絶えない。しかし、物価の高いバンガロールでは、自分が生きるのが精一杯。リキシャ運転手、ペンキ塗り、大工など日雇いの仕事を繰り返したが、その日自分が食べる分しか稼げなかった時もあったのだという。

 有機農業に転換してからは、生産コストは10 分の1になった。オーガニック・スプレーや自家採取した種を有機農業組合員で共有管理を行うことにより、市場に頼ることなく、有機農業に適した品種の選別や技術の普及を農家自身で行うことができるようになったのだ。

オーガニック認証を受けた黒砂糖。輸出向けではなく、近年バンガロールでの需要が増えているという。


 私が訪問した有機農業組合、Savayava Krishikara Sangha (SKS) では、組合員である136 の綿農家のうち、4 つの農家は綿花の種の採取を専門に行っていた。育種を担当する4つの農家が1 acre あたり800kg の種を生産し、136 の農家が生産する綿花の種を提供している。緑の革命後に普及したBt Cotton(病害虫耐性を持った品種改良コットン)は自家採取できず、1,500/kg かかる種を毎年購入する必要があった。農家自身による種の生産は大幅なコスト減に成功した上、収量はBt Cottonと大差ないという。

コットンの等級分けをするビラム氏(左がA 級、右がC 級)


 「有機農業は、見た目が悪いとか、慣行農法に比べ収量が落ちるといわれているけれど、それはやり方が悪いだけだ。」

 と、マネージャーは言う。組合員の多くは有機農業に転換してから土の状態が良くなり、逆に収量が上がったと答えている。

 有機農業に転換すれば化学肥料も農薬もいらない。。農薬をやめ、有機物を入れてやることで農地に生命がもどり、肥沃な土へと変わっていく。収量の改善、コストの削減、自然環境への尊重、そして、さらには農家が古来から受け継いできた伝統的な知恵と自信を取り戻すものが有機農業なのだ。

 2000年、インド政府は、地域資源や伝統知識を活かし低投入を中心とする有機農業の推進を開始した。National Programme for Organic Production(NPOP)では、有機認証制度について定められ、約250 万ha の農地が有機農地として認定をうけている。

 今、インドでは太古の昔より祖先が築き上げてきた伝統技術が見直されている。

参考文献:
Howard, S. A, (1943), An Agricultural Testament, Oxford, UK, Oxford University PressSud S., (2009), The changing profile of Indian agriculture, New Delhi, Business
Standards Lt.

参考WEBサイト:
Swaminathan Research Foundation (リンク参照)


インド有機農業レポート Vol.3
インド有機農業レポート Vol.2

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