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イベント報告「サラワクの先住民は今~森林伐採、オイルパームと熱帯雨林」

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三沢健直 松本市
day
2011-02-19
 

 先月26日(水)に、インディペンデントメディア[レアリゼ]の主催で、昨年9月にマレーシアのサラワク州の森林に暮らすプナン族の取材を行ってきたフォトジャーナリストの前田実津さんと、昨年9-10月に、サラワク州のカヤン族の取材を行ってきたライターの伴昌彦さんによる、現地報告会を行いました。また、導入部として、5年前に旅行者として移動プナン族と暮らした経験を持つ、せんだしおさんのお話をお聞きしました。当日は30人以上の聴衆が集まり、熱心に話しに聞き入っている様子でした。

せんだしおさんのお話

 せんださんは移動プナン族と共に暮らした経験があるそうです。少ない鍋などのごくわずかな道具と動物達をつれてジャングルを移動し、山刀一本で木を切り出して、2時間程度で家を建てて暮らす彼らに家を建ててもらったとのこと。

 せんださんのお話は、ボルネオのジャングルに暮らす、移動プナン族の息遣いが聞こえてくるような臨場感があり、写真とはまた違った雰囲気の中で、先住民達の暮らしに思いを馳せることができました。

 移動するプナンの人々は、30人~40人くらいの集団で、小さな魚でも山菜でも、その日取れたものを皆で分け合って食べるそうです。大人と子供の区別や、政治的な上下関係も明確でなく、各人が、その日したいことをして、緩やかな補完関係のなかで暮らしている。時間も決まっているわけではなく、朝靄と共に火がともり、会話が始まる。

 ジャングルの中で暮らす人は、視覚よりも聴覚や皮膚感覚が発達しているそうです。裸足で音を立てずに。目ではなく気配を感じながら。森の中で暮らす。自分の気配を消す。そういう暮らし。
 彼らには、「ありがとう」という言葉がないそうです。助け合うことが当然だから。また、「家族」という言葉も存在しないのだそうです。

 「農耕ではない人々の暮らしでは、何が違うのだろう」、と見ると、自然をコントロールして富を最大限にする欲望が育たない。他の半農耕部族のような首狩や奴隷もない。
 そして「あなたは何者か?」、という質問をされない。自分達の歳も知らない。人と競い合うことがない。何か別のものになろうとせず、ありのままの自分として生を全うする。

 彼らの家には壁がないそうです。なので、一つの家で笑い声が起きると、それが隣の家に伝染して、薄暗い森の奥まで笑い声が伝染していく。それがまた、森の奥からこだまのように帰ってくる。くったくなく良く笑う。そういう日々が何千年、何万年と続いてきた。

 ところが最近、アルジャジーラの番組に、その彼らが写っていて、見たら、家に壁ができていたそうです。森は少しずつ小さくなり、彼らの暮らしは、確実に変わりつつある。せんださんはそう感じたそうです。

 せんださんの話す先住民たちの生き生きとした息遣いをもっと聞きたかったのですが、時間の都合でこれ以上聞けませんでした。今後もお話をされる予定があるようですので、ぜひチェックしてください。

前田実津さんの報告

 前田さんのフォトレポートは、すでにレアリゼで発表をしています(ボルネオにおける森林伐採が先住民族に与えてきた影響/下部リンク参照)。写真も載っていますので、ぜひ見てください。今回は、レポートで掲載しなかった写真も多数交えて発表をしていただきました。

前田さんの発表


 ほとんどのプナン族は1980年代から定住を始めていて、移動生活を続けているのは現在は200人くらい。前田さんは、今も移動をするプナン族、定住先を探している“プレ定住”のプナン族、定住プナン族のそれぞれの暮らしを見てきて、その暮らしの変化を報告してくれました。

 サゴ椰子からでんぷんを取る作業、食事の風景、食料の写真や、水浴びの風景、狩の風景など、移動プナン族の暮らしなど。
 狩猟は“吹き矢”が主ですが、動物が減っているため、銃も併用しているそうです。もちろん、銃を購入するためにはお金が必要になります。また、元々は固有のアニミズムがあったのに、現在では、クリスチャンになっているそうです。

 定住コミュニティの暮らしでは、現金収入のために、良い香りのする香木、ラタンから作る籐製品などをエコツーリズムの観光客に販売するそうです。コミュニティでは、年代間の意識ギャップがあり、年配の人は米も食べない。塩もあまり取らないが、若い人はミルを食べるそうです。

 75年に定住したコミュニティには、自家発電でテレビもあるし、シャワー、トイレもあるそうです。しかし、今でも狩にも行くし、採取もする。森と共に暮らしている。しかし、定住することで、「蓄える」、「所有する」という意識が少しずつ生まれているとのこと。学校や教会もあります。プナン族が定住を考える理由は、子供に教育を受けさせるためだそうです。

 定住プナン族の暮らしも、様々な問題を抱えています。58年に先住慣習権法が制定されて、先住民が定住している土地の所有を認められたそうですが、プナン族はその後で定住を始めたために、土地の慣習権を認められていないそうです。そのため、プナン族の土地は、州政府がいつでも伐採して良いことになっている。プナン族には、IDカードも発行されない。教育も受けていないから、年をとった人が街へ行っても、現金収入を得るような仕事はできない。

オイルパーム・プランテーション

 イバン族の地域では、パームオイル・プランテーションによる川の汚染を見たそうです。人々は汚染された川で暮らしていて奇形児が増えているとのこと。
 また、先住慣習権法として認められている土地にも、プランテーションは作られているそうです。サラワク州政府は、先住民の権利を守ろうとしない。マレーシアではメディアも政府関係者の会社なので、「外国人に扇動された一部の先住民が騒いでいるだけ」と報道しているとのこと。

 政府は現地視察もまったくせずに開発許可を出してしまう。伐採をやめさせるために、先住民は道路封鎖を繰り返している。州政府はその都度「学校を作る、ロングハウスを作る」、などの約束をするが、守ったことはないそうです。

 昨年公表された日本の木材輸入協会によるプレスリリースでは、サラワク州政府の認証があれば、木材の輸入を認めるそうです。日本の木材輸入協会は、違法伐採を認めているようなものです。

伴昌彦さんからの報告

 次に伴さんが、パワーポイントを使って、マレーシアの歴史と先住民の状況について概論と、カヤン族の暮らしの様子を報告してくれました。

質疑応答の様子


 サラワク人口の50%は、プナン族、イバン族、カヤン族などの先住民で、先住民の大多数は森林資源に依存して生きているそうです。
 ほとんどの先住民の生業は焼畑農耕で、米を主食としているそうです。焼畑農業は環境を破壊するイメージがありますが、先住民の伝統的な焼畑農業は、森林を循環して利用する持続的な農法として知られるそうです。

 カヤン族もロングハウスに暮らしています。主な蛋白源は猪だそうです。昔は、取れたものを皆で分け合って食べたそうですが、今は獲った人にお金を支払って分けてもらうのだそうです。魚も減り、お金なしに暮らせなくなっている。人々は町に移住し、人口は減り続けている。

 プナン族に比べると、森林伐採の影響は少なく、先住民のすべてが森林伐採に抵抗しているわけではないそうです。しかし、やはり先住慣習地はないがしろにされているとのこと。

 先住民は、サラワク州政府に不満を持っているそうです。タイブ・マハムド首相は、30年もサラワク州の首相を努めている。森林産業と密接な関係にあり、親族企業を優遇していると批判されているとのこと。

 1987年に、企業の違法な森林伐採に抗議して林道封鎖を行ったウマ・バワンの住民が、ウマバワン協会(UBRA)という住民組織をつくり、森林再生やラタンの育成など、様々なプロジェクトを行っているそうです。特に、GISを使った地図作りは、企業の森林伐採に対抗する効果的な方法になっているそうです。

 先住民が作っているアグロフォレストリーやオイルパーム・プランテーションなど、興味深いお話がたくさんありました。
 ウマ・バワン協会については、伴さんに詳細レポートを書いてもらっていますので、もうしばらくお待ちください。

 3人のお話を聞いて、サラワクの先住民たちの暮らしをより身近に感じることができました。読者から要望が多ければ、再度企画することも可能です。彼らのように、先住民と共に暮らすのは少しハードルは高いですが、ボルネオ保全トラストのように、スタディツアーを実施している団体もありますので、関心を持った方はぜひ現地を訪れてみてください。


ボルネオにおける森林伐採が先住民族に与えてきた影響
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