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フィンランド小学校事情 Vol.3 ~時間割と教科編(母国語)

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靴家さちこ フィンランド/ケラヴァ 
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2011-02-27
 

 息子の小学校では、8月中旬に新一年生の新学期が始まると、最初の一週間は“慣らし通学”であった。9時から8時45分へと、一週間かけて登校時間が徐々に早まり、下校時間も11時45分から12時へと遅くなっていく。

 登校班などが組織されないので、児童一人一人が慣れるまでは、保護者が送迎する。その期間に、担任の先生は、各生徒の母国語や宗教などを確実に把握し、入学後一週間にしてようやく時間割が配布された。今回は、フィンランドの一年生の時間割と教科、そしてフィンランド語では「母国語」と呼ばれる国語の授業について触れてみたい。

教科名が未記載の時間割

 入学二日目。息子が早速、母国語と算数の教科書とワークブックを持って帰宅し、初めての宿題も出た。宿題は、母国語はアアコセット(フィンランド語のアルファベット)の書き取りや単語の音読など。算数は、1から10までの数を数えることや、塗り絵も交えた「数遊び」が主だ。
 宿題は一日に、母国語か算数のいずれか、もしくは両方からで、所要時間も30分弱と少量だ。

 入学1週間後。息子が持ち帰ってきた時間割は、以下の通りだ。

時間割 ―― 1年A組 息子のクラスの場合 ――


 一見して理解できないのが、宗教と体育の時間以外のほとんどに書かれているaやbのアルファベットだ。一体何の略称かと慌てたが、もう一枚のプリントを読んで、このクラスでは、全体の17人をaとbの2つのグループに分けており、abとは、合同の授業であることを示していることが分った。

 月曜日の宗教の時間は、前述の通り、キリスト教のグループと、それ以外のグループに分けられている。息子は無宗教とはいえ、キリスト教文化に触れておくことはこの国で生きて行く上で重要だと判断したので、多数派であるキリスト教のクラスに入れてもらった。水曜日と木曜日の体育の時間は、1年生のもう一つのクラスである、B組との合同だそうだ。

 また、水曜のaグループとアラビア語の部分は、aグループが母国語を学んでいる間に、アラビア語圏の児童は教室を移動してアラビア語の授業を受けることを表している。フィンランドでは、同じ校内に同じ母語の児童が5名以上いる場合には、通常授業の母国語の時間に、文字通り自分の国の母国語の授業を受ける権利が保障されているのだ。

担当教師の裁量の大きさ

 それでも、この時間割を見ただけでは、それ以外の授業が何曜日の何時間目に入るのかがわからない。そこには、1)国語、2)算数、3)自然環境、4)宗教、5)体育と6)楽しい時間(1年生から3年生が一緒に遊ぶ)という6つの教科が入り、先生が様子を見ながら、その都度指定していく。小学1~2年生のうちは、そのような授業の進め方をしているところが多い。

 教科も、宗教と母国語、算数は1学期の一番最初から始まったが、自然環境(交通ルールや身の回りの生物などを学ぶ、理科と社会を混ぜ合わせたような教科)の授業は、入学後3カ月目から始まり、教科書も後から配られた。英語も母国語の様子を見ながら、翌年に授業を開始する予定だそうで、進行に応じて開始時期が担任教師の判断に任されている。

進度別の「母国語」授業

 PISAテスト(OECD世界の学力調査)で読解力の強さが際立ったフィンランドでの母国語の授業の特色として、「外国語のように教えられる」と報じられることが多いが、確かにそう感じた。

 まず、エシコウル(プリスクール)で子ども達が習った、アアコセットの大文字をおさらいしながら、小文字の書き取りが始まった。それと同時にアアコセット一つか二つ以上の組み合わせの発音を、英語のフォニックスの手法で教わり、音読の宿題も出る。息子の部屋からは連日、「アア、アイー、アウー、アオー」と演劇部の発声練習みたいな声が聞こる。ちなみに、夫が子どもの頃には、このような丁寧な発音指導は無かったそうだ。

 入学1カ月後の父母会で、母国語の授業では進度に応じてグループ分けがあることが知らされた。すらすら読める子は「カラス」、普通に読める子は「ネズミ」そして、まだ読めない子は「バイク」というように、教科書に登場するキャラクターの名前からとったグループに分かれているのだ。

 宿題は、それぞれのレベルに応じてグループ別に指定される。息子は入学当初は「バイク」のグループだったが、これが悔しかったらしく、私が父母会で情報を仕入れるまで、このグループ分けの話はしなかった。

教科書としおりと書き取り帳。教科書左上の会話文はクラス全員用、左下のネズミのマークは「ネズミ」グループ向け、右半分の長文は「カラス」グループ向け。

教科書は一冊の本のように、架空の地域に住む登場人物が物語を織りなしていく。教科書中央に描かれている地図は息子のお気に入りで、このページを何度も開いては場所を確かめる。


 日本語も話す家庭の言語環境がいけないのか、フィンランド人なら誰でも知っているはずの基礎単語の意味が分かっていない、さらにはLD(学習障害)の問題があるのでは、と夫が心配したので、個人面談の際に担任の先生に聞いてみた。
 すると実は、入学間もなくLDの判定テストを行っていて、その結果息子は問題が無かったと言われ、安堵した。その後、息子は、入学3カ月目にして、「ネズミ」のグループに、6カ月目にして「カラス」のグループに昇格した。

美しい教科書と発表重視の指導

 母国語の教科書は、WSOY社製のもので、カラフルな動物と子ども達とバイクと豊かな自然の絵がたくさん描かれており、類似音の単語がひとまとめに並べられたもの、登場人物の会話文、短いお話か詩の三つで一つの章が構成されている。章のテーマはABCD順にではなく、フィンランド語の中で使われる頻度が高いアアコセットの順に並んでいる。

アアコセットはABC順ではなく、使われる頻度が多い順に。発音練習に、単語を音読する宿題が出る。

教科書の登場人物のパペット達。これを右手に、左手に教科書を持って、子ども達は人形劇をしながら会話文を読む練習をする。


 教室には、人形劇の舞台セットがあり、会話文を読むときに使う。児童は教科書を片手に、パペットでお芝居をしたり、黒板の前に立って教科書の音読をすることもあるそうだ。

 これもまた、先生が教壇に立ち、生徒は受け身という親世代の頃のやり方とは大きく違う点であり、父母会でこの説明を受けた父母達は、口々に「うちの子もみんなの前に立つんですか?」と先生に聞いていた。先生は、「シャイで寡黙と言われる伝統的なフィンランド人を刷新する、新しいフィンランド人の育成を心がけているのです」と胸を張って答えた。読解力の土台は、しっかりとした発音と読み方、そして人前で発言する練習で培われている、ということらしい。


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