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東日本大震災

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東日本大震災:エコツーリズムネットワーク、NGOリーダーの提携による支援と復興への取り組み

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江崎絢子 オレゴン州ポートランド市
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2011-03-30
 

「民間の強み」を生かした迅速な対応

 3月11日の地震と津波による大規模な被害を受けて、全国各地でエコツーリズムなど、地元コミュニティーに根ざして「地域を元気にする」取り組みを行っているNPO法人日本エコツーリズム・センター(通称エコセン)は、 野外活動・環境教育分野で活躍する全国のプロとの繋がりを活かした災害救助ネットーワークを設立した。
 数日間のうちに、東京の事務局、宮城県登米市の支援活動本部、そして各地のパートナーとの提携による救援・支援活動(仙台以北の沿岸部を中心に行われている)が展開された。

 エコセンの呼びかけで立ち上げられたこのネットワークは、エコツーリズムの団体に限らず、様々なNGOや教育機関との提携により成り立つため、「 RQ市民災害救援センター」(*RQはレスキュー)と名付けられた。

 エコセンのモットーは、「専門家による効果的なアクションの実践」。そして「即戦力」が何よりの強みだ。震災への対応にも、普段から活動に取り入れている全国に広がる横のつながりと、行動力を上手く活かした草の根組織の底力が見受けられる。

オンラインで随時更新される「RQ活動地図」。赤:RQの活動拠点。緑:RQで活動するエコセンの世話人、他の野外活動・環境教育団体。水色:災害支援に関わるNGO、青:行政、自衛隊の駐屯地


多様な被災地、刻々と変わる現場のニーズ

 「福島県相馬市からのレポート」で述べられているように、被災地と一概に言っても、支援を必要とする人々の現状やニーズは避難所ごと、地域ごと、同じ県内でも場所によって異なる、というのが今の現実だ。

 例えば、地震発生から1週間ほど経ち、広範囲に渡る被害の様子がだいたいつかめてきた時点でも、宮城県女川から気仙沼市にかけての沿岸部(入り組んだリアス式海岸)の小さな集落(の跡地)では、橋の崩壊や道路の寸断により避難所すら形成できていない、という報告もあった。

 一方で、体育館などの避難所に身を寄せた人々が寒さをしのぎながら支援物資を待っているうちに、基本物資の不足による凍死や餓死などという、目を覆いたくなるような報告もあった。

 震災から2週間が経ち、救援物資や支援人員が届いているところでは、最も必要とされる優先事項が、人命に関わる「水や食料、防寒具の確保」から「 ストレス対策」に少しずつ変わってきている。RQ市民災害救済センターに参加するメンバーによる報告には、「避難している人たち、特に若い人たちがあまりにヒマそう」という声もあった。

 避難生活の長期化に伴い、先が見えないことによるストレスと、「やることがない」というフラストレーションがだんだん大きくなってくる。遊び相手や遊び場がないこと、話し相手が少ないことなどが被災者本人も気づかないストレスになる。被災者にとっても支援者にとっても、長期戦を見据えて、できるだけ「普通」の生活のルティーンを取り入れるなどストレス対策が必要になっていく。

 エコセン関係者の中には、阪神淡路大震災や中越地震の経験がある人も少なくない。各地からの情報が行き交う中、過去の災害対策・支援の体験をいかしたアドバイスが RQネットーワークを支えている。

 直後の緊急時を過ぎた時点では、物資供給を慎重に行うことが重要になる。震災後、被災者に提供しきれず余ってしまう物の保管や処分にかかる費用を長期的に負担するのは被災地の地元行政なのだ。全国から集められる善意の贈り物も「ありがた迷惑」になってしまうこともある。

 今回の震災でも、一部ですでに物資は足りている、という声もあり、物資が足りず本当に必要とする地域にも届くようにするための効果的な方法は、お金を集めて送り、現地が本当に必要なものに絞って購入する組織を支援することかもしれない。
 実際、必要以上に物資が集まってしまい、避難者に配ることなくバザー形式で希望者に持って行ってもらったり、場合によっては配給センターなどに送り返す例も出てきている。

エコセン、RQ市民災害救援センター代表の広瀬敏通氏(写真右)は「柔軟で機動性のある対応を」と呼びかける。(写真提供:RQ市民災害救援センター)


 観光関係のネットワークを生かした支援活動で、現地で喜ばれている例のひとつは、「温泉バス支援隊」だ。ラフティング協会(RAJ)などにより、地元地域の人脈・リソース・ボランティアの協力を通して、被災者を避難所から最寄りの温泉施設(旅館、日帰り温泉など)に送り迎えをする活動が続けられている。
 一方でそのようなサービスがまだ届かない地域では、アウトドア生活や「サバイバルスキル」のプロが、その知恵と経験を発揮し、限られた道具で作れる簡易風呂や、凍傷を防ぐための対策などのアドバイスを行っている。

中長期の支援:移住者の受け入れとサポート体制

 全国で、自治体による被災者の短期・中長期の受け入れ表明が多数行われ、日々その数は増えている。そんな中、 RQに参加しているエコセンのメンバーは、エコツーリズム、自然教育、地域振興などの活動の特色を生かした中長期の支援に関する話し合いを進めている。

 今回の大震災で壊滅的な被害を受けた地域の中には、いわゆる「限界集落」と呼ばれる種の海岸地域のコミュニティーも多い。働き手がもともと少ない集落においては、年月と労力を要する地域の復興が、現実的な目標でない場合もあるかもしれない。
 そんな場合には、被災された住民の方々が別の土地に移住した場合の適切な支援体制が必要になってくる。岩手県や北海道などで、行政・地元NPO・教育団体等が力を合わせて、被災者の移住と長期の生活支援に関する準備が急速に行われている。

 新潟県南魚沼市で活動するRQメンバーの話によると、一時的な「避難所を提供する」のではなく、「新しい地域の住人を受け入れる」という形で被災者の移住を支援する、という方針で対策がはじまっており、田んぼや畑の共有、教育設備の充実など「暮らしの基盤を支える形での受け入れ」を目指す。

 また、地震、津波、そして原発事故の長期的な影響により、多くの失業者が出ると想定される中、長期の移住を視野に入れ、新たな職の創出も重要な課題となっていく。
 岩手県釜石・鵜住居・片岸地区で支援活動を展開しているNPO法人ねおす(北海道)ぶなの森自然学校 代表の高木晴光氏は、「各自治体が興味を持っているが、なかなか推進できない有機農法の就農を支援するとか・・・、そんなことも、ひとつの解決の方向かもしれません。」と提案する。

 遠方のメンバーは、東北地方で進むRQ市民災害救済センターの「前線」活動を通して現地の最新情報に耳を傾けながら、将来に目を向けて支援準備を整えている。
 地元行政との提携はもちろんのこと、地域の活動的な人脈を最大限に生かし、 観光協会、商工会や野外活動団体から、地区婦人会まで多角的に協力を要請し、受け入れ態勢の準備を被災地支援と並行して進めることにより、今後増え続けるであろう疎開や移住のニーズに備えている。

 例えば、高知県柏島のNPO法人黒潮実感センターでは、被災者の子どもとその家族の避難受けいれプロジェクトを立ち上げ、中長期を見すえた「教育活動を通しての災害支援活動」を始めた。
 環境教育や体験学習を通じたノウハウを活かし、子ども達を心的ストレスから開放し、いち早く平常時の生活を取り戻し、学校での授業が受けられる準備の手助けを目指す。

黒潮実感センターによる受け入れプロジェクトのお知らせ。 「あたたかい高知へきてください。」


救援→復旧→復興

 エコセン代表で、RQの現地本部代表として活躍されている広瀬氏によると、現時点での現地の支援状況は、以下の災害援助の4段階のうち2段階目の「被災者支援期」の初期段階ということだ。

1.救命救急期:生存者の救出など、近隣住民や専門団体の活動期
2.被災者支援期:支援物資の配布、避難所・ボランティアセンターの設立と避難生活支援
3.生活復興期:災害地の片付け作業や仮設住宅への移設など、生活を復興していくための支援
4.生活再建期:日常生活の再建、地域コミュニティの復活再生、風評被害への取組み

 広瀬氏は3月25日付けのレポート*で、「緊急的な物資支援から継続的な消耗品などの物資需要に移り、さらに、人による対面的な支援である被災現地でのボラセン設置と、細やかなケアの実施が必要な段階に入ってきました。」と述べている。
 今後2、3、4段階の支援活動を進めて行く上での課題は、臨機応変に次々と変化する現場のニーズに対応していくと同時に、現在進行形で、体験による学習を生かし、 RQ市民災害救援センターという全国組織として情報の整理を徹底させること、そして組織内の役割を確立させていくことだという。

 RQのように、多様な経験を持つ団体と草の根活動のプロによる組織が持つ「柔軟で機動性のある対応力」がまさに試される時だ。想像を絶する被害を東日本各地にもたらした震災の傷跡に、心が締め付けられる思いと同時に、日本国内の市民グループ、NPOや草の根ネットワークの底力を感じる。RQ市民災害救援センターの活動は、日本の将来への希望を象徴すると確信している。

*エコツーリズムセンターの掲示板より。 http://www.ecotourism-center.jp/forum/index.php


福島県相馬市からのレポート

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