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オランダにおける電力自由化とグリーン電力について

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伊藤 愛 セルトーヘンボス、オランダ
day
2011-04-02
 

 私は電力専門家ではないので、オランダに生活する一人としての目線から、電力自由化とグリーン電力、オランダにおける原子力発電について、実際に話を聞いたり、調べたりしたことを書いてみます。

電力自由化とは何か

 日本にいたときは、あまり意識しないで暮らしていたのですが、現在の日本では住んでいる地域によって、それぞれの地域で営業している電力会社と契約を結ぶしか選択がない、電力独占状態であるようですね。
 今回の東日本震災で初めて、いかに日本のエネルギーが原子力発電に支えられていたか思い知った、という方もいたようです。

 私の暮らしているオランダでは、日本と違って、ちょっと調べただけでも28の電力会社があり、オランダ国内なら、どの地域に住む人でも自由に電力会社を選ぶことができるしくみ、つまり“電力自由化”が行われています。

 当然、電力会社間での価格競争もありますし、発電方法もグリーン電力(風力や太陽発電など)か、グレー電力(火力や原子力)かを選ぶこともでき、各社ごとに割引やサービス、最低契約期間などを工夫して顧客獲得にいつも必死のようです。

 電力自由化のメリットとしては電気料金の低価格化、消費者が電力会社を選べる、誰もが電力会社を起こせる、などが挙げられるでしょう。デメリットとしては、供給安定性が低下する可能性(太陽光発電・風力などは季節等により供給にムラがあるため、バックアップ発電が必要)などか挙げられますが、オランダでは他国から輸入するなどして供給を安定させているようです。

オランダでの電力個人契約

 オランダでの電力個人契約は実際にどのようになっているのか、うちの契約を例に挙げながら具体的に見ていきたいと思います。

 うちではエセントという(去年ドイツに買収されましたがそれまではオランダ大手だった)会社と、電気・ガスの契約をしています。オランダでは一般的に電気とガスがセットになっています。
 この会社は、本社が近所にあるので、ご近所では地元のビジネスを応援しよう、と契約を結ぶ家庭も多いようです。ちなみにうちのエセントの電力契約も、グリーン電力と普通の電力が選べます。グリーン電力には課税割引がきくため、使用料金は2011年現在どちらも一緒でした。

エセントの火力発電所

エセントの請求書。一年に一度の支払いです。

エセントの2011年グリーン電力契約の内訳


 オランダでは水道、ガス、電気は一年ごとに使用料を見積もってまとめて先払い、一年が終わって実際の使用料が支払った額より多いときには追加で支払い、下回ったときには差額が払い戻される仕組みになっています。

 そのため、「お金が返ってくるのなら去年よりもうちょっと節電、節水してみよう!」と、多くのオランダ人の節エネルギーのモチベーションを上げる効果もあるようです。オランダでは天然ガスが沢山とれるため、キッチンと暖房はガス、という家庭も多く、うちもガスストーブはいつもちょっと低めに温度設定してあります。

 周りのオランダ人にも契約の状況を少し聞いてみたので紹介します。

 ゴーダチーズでも有名なゴーダに住むケイスさん一家は、イーオンと電力・ガス契約をしています。理由は、一番安い契約だったから、とのこと。
 オランダには天然ガスが沢山埋蔵されているけれど、値段的には電力より高いので、グリーンかグレーかというよりは、ガスの値段の一番安いところを選んだそうです。しかし、今回の日本の原発のニュースなどを聞いて、長期間で見たときのグリーン電力の有効性,重要性について以前より考えるようになった、とのことです。

 近所に住むアナマリさんは100%グリーン電力を供給するグリーンチョイスと契約しています。グリーンチョイスでは、電力は太陽発電・風力発電・バイオマス発電から、ガスは家庭の生ゴミから作るバイオガスから供給されています。

 値段のほうは、エセントのグリーン電力が0.2218ユーロ(25.5円)/kwhなのに対して、グリーンチョイスは0.2193ユーロ(25.2円)/kwh。ガスもエセントは0.5613ユーロ(64.6円)/m3なのに対して、グリーンチョイスは0.5588ユーロ(64.3円)/m3と、いずれも若干安めの価格です。

 大きい会社はグリーン電力といってもどのように供給しているのかあまり信用できない。100%グリーンな電力会社を応援していきたいとのこと。

 アナマリさんは、日々のお洗濯にも洗剤の代わりにエコボールというチタン球の入ったプラスチックのボールを入れて節水・節電をしたり、雨水タンクを使って雨水を再利用するなど、日常でできる節エネルギーはなるべくしているそうです。

ヨーロッパ、オランダでの電力自由化の歴史

 ヨーロッパ連合では1990年代、加盟各国に対して電力自由化の基準(2003年までに電力市場の33%を自由競争市場に移すこと、2007年7月までに完全自由化を果たすこと)を定めました。 これを契機に各国では電気自由化の導入、発電・配電会社の民営化や再編成などが行われました。

 オランダでは1995年に、はじめてグリーン電力(風力などによる再生可能エネルギー)が市場に導入され、電力自由化に先駆けて1999年には12の電力会社すべてがグリーン電力を供給していました。
 2002年にはグリーン電力の購入者が100万人を超え、2003年時点で既にオランダ国内の全家庭の32%がグリーン電力を購入していたというデータがあります。

 2000年には大規模消費者が電力供給者を選択できるようになり、2001年からはグリーン電力の自由化、そして2004年7月からはヨーロッパ全体の目標に先駆けて、電力完全自由化となりました。

 その結果、電力会社を選べる”電力自由化”とともに、一般家庭でも発電方法の種類を選べるようになり、少し高めの料金を払えば風力や太陽光、水力などの再生可能なグリーン電力を購入することができるようになりました。

 そして政府が補助金や税金免除の政策を行っているため、現在ではグリーン電力の値段はグレー電力と同価格、としている電力会社がほとんどです。オランダ政府の政策のおかげで、消費者は、より安い価格の電力を選ぶことや、電源の種類を安心して選べるなどの利点を得ています。

 このように自由化大成功とされているオランダでは、いろいろな公共政策による支援が、大きな成功要因として挙げられると思います。グリーン電力が市場でグレー電力と競争できるのも、グレー電力にかかる環境税がグリーン電力購入者に対しては免除されたり、グリーン電力会社にも免税があったりすることが大きいと思います。
 
グリーン電力とグレー電力について

 グリーン電力に関してもう少しお話しすると、オランダでは政府も民間企業もグリーン電力をサポートすることに、とても力を入れています。国会でも2010年には公共プロジェクトやインフラ(高速道路の電灯など)における電気使用料のの25%をグリーン電力でまかなう計画が提案されたり、防衛省をはじめ各省でもグリーン電力を購入しているほか、国内唯一の鉄道会社であるNSでも消費電力全体の10%をグリーン電力でまかなっているそうです。

 2000年には全体の2.5%にすぎなかったグリーン電力での発電でしたが、2009年には電力使用量の10%(バイオマス5%と風力5%)を供給しています。今のところ需要の半分しか国内で供給できていないのが課題のようですが、バイオガス大型施設や風力発電の投資、開発も年々進んでいます。

オランダではこんな光景も見られます

 
 原発に関して言えば、日本とは状況が少し違うかもしれません。なぜならオランダには前記したように天然ガスが豊富に埋蔵されており、同国にとって重要なエネルギー資源となっているからです。

 EU内では、英国、ノルウェーに次ぐ第3のガス生産国であるとともに、唯一実質的なガス輸出国でもあるため、ガスを中心としたエネルギー自給率も80%台を保っている現在、原子力ではボラセラ発電所1基のみが稼動中のようです(原子力による発電は全体の5%程にすぎません)。

 かつて総発電電力量の3分の1を原子力発電により供給することを目指し、1985年には2基の新規発電所の建設が提案されましたが、1986年のチェルノブイリでの事故のあと、住民の大反対などが相次ぎ建設は撤回となりました。

 以後、新規発電所の建設はなく、デルフトなどにある研究用の原子炉も使用期間のさらなる延期はないようです。また今回の東日本大震災では、オランダでもデモが行われるなど、原子力の安全性について住民の意識がさらに高まっているので、2033年まで操業許可のあるこの発電所も、この先どうなるかは誰にもわからない状態になってきています。

 2011年現在、オランダ国内の電力会社は28社。そのうち、16社ではグリーンとグレー電力が選べます。2社は100%グリーン電力です。残る10社がグレー電力のみを供給しています。

オランダでの省エネ生活について

 天然ガスという安定したエネルギーの供給がある中、オランダでは省エネの動きも大きいです。日常生活でも、皆さんご存知のように沢山の人が自転車に乗っています(会社で支給されるところも多いそうです)。

 その他に、建築構造の断熱化(これも一般家庭向けに政府から補助金が出ます)、朝晩は火を使った料理はしない、食器洗いにもできるだけ水を使わない、などなど、節ガソリン・節電・節水など、細かく挙げるときりがありません。

 オランダ人は堅実な性質があるので、省エネというよりは一円でも節約できるところは進んでする、という意見もありますが、日本で言う「もったいない精神」のようなものが隅々まで行き渡っているのには、いつも驚きます。

 今回の東日本大震災で日本にいる友人が、節電で街が暗く、電車にも暖房がついていないし、お店もヨーロッパのように早く閉まってしまう、と言っていました。彼女いわく、これくらいの電力でも良いのでは?とあらためて思っているそうです。

 言われてみれば、コチラではコンビニはないし,会社はもちろんお店も週末は閉まっているし、高速や国道の街灯もまばら。電車も一社しかないのに遅れることも多く、雪が降れば運休もある。

 街も全体に暗くて、室内も消費電力のとても少ない電球の間接照明やLEDを使います。雰囲気があるということで、いまだにロウソクを使って過ごす夜の時間もあります。

 日本と比べてとても不便な生活に聞こえますが、暮らしている人々を見ていると、あるものをとっても楽しんで、おおらかに生活しているように思われます。私自身オランダにきた当初は暗いのと、あまりにも静かなので夜眠れない程でしたが、一度慣れてみるとこのテンポがとても健康的だな、と思うようになりました。

(余談)3月28日付けのvolkskrant紙より

 3月28日付けのvolkskrant紙に次のような記事が掲載されました。

 「オランダのエネルギー会社グリーンチョイス社は、無料でソーラーパネルを配布する。同社は無料配布によって、オランダでの太陽エネルギー発電を推進するのが狙い。これまで多くの消費者がソーラーパネルが高すぎると感じていた。 グリーンチョイスは今年、まず500軒にソーラーパネルを配布し設置する。
 ソーラーパネルと設置で通常は8000ユーロ(約100万円)かかる。同社は政府からの助成金も申請している。 ソーラーパネルは1年間に1950キロワットの電力を生産する。これは、一般家庭での1年間のエネルギー消費量平均の約半分。」

 グリーンチョイス社のサイトを見ると、契約者は20年間の契約を結び、使用量に応じて0.23ユーロ(26円)/kwhを支払い続けなくてはならないようですが、オランダでは大変話題になっているようです。


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