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アメリカの地熱エネルギー、3つの利用法について

~今こそ地熱利用を推進しよう~

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江崎絢子 オレゴン州ポートランド市
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2011-04-14
 

アメリカでの再生エネルギー利用

 再生エネルギー開発の分野において、アメリカは、ヨーロッパ各国をはじめ、中国などの新興経済諸国に比べても「後進国」。現在、アメリカのエネルギー市場で再生エネルギーが占める割合は8%ほどでしかない(下記参照)。

 しかし、「国産」再生エネルギーは、アメリカでまだまだ開発の可能性が多くある。近年、技術の発展によりコストが下がってきているため、少しずつ投資が増え、1995年以来、地熱エネルギーの利用は27%ほど増えている。

アメリカのエネルギー供給/消費量統計(2009年のデータ、Geology.comより) 石油37%、天然ガス25%、石炭21%、原子力9%、再生エネルギー8% 再生エネルギーの詳細は、バイオマス50%、水力 35%、風力9%、地熱5%、太陽熱1%


 最近では、石油の値段の高騰により、地熱によるスペース・ヒーティングのコストは、石油使用の場合とほぼ同等のレベルになった。今後、土地や地熱の条件が整っている多くの地域が、地熱利用を経済的に理にかなう選択肢として開発される可能性がある。(参考:Trends in Renewable Energy Production and Consumption in the USA

地熱利用の可能性
 
 地熱(Geothermal ジオサーマル:地球を意味する「Geo」+ 熱を意味する 「thermal」をあわせた言葉)は、まだ十分に活用されていない自然の(比較的環境への悪影響が少ない)エネルギー資源である。アメリカで地熱のたくわえがあるのは主に西部の州、アラスカとハワイ。(参考:U.S. Department of Energy

 地熱利用の方法は現在、主に以下の3種類がある。

1.発電

 1マイル(約1.6キロメートル)以上の深さの地熱貯蔵地からの熱を利用して発電所のタービンを動かすことにより電力を発生させる。カリフォルニア州北部のGeysers地熱発電所(世界最大の地熱発電所、アメリカ国内最大の地熱エネルギー源)は自然に地中に存在する熱を発電に利用した施設の代表的な例。Geysersでは70万世帯(サンフランシスコくらいの人口の都市)の電力需要をまかなうことができる。

 現在周辺の三つの郡(ソノマ、レイク、メンドシノ)の日常的な電力使用、そしてその他二つの郡(マリン、ナパ)の需要の一部もまかなっている。これは、カリフォルニア州の再生可能エネルギー生産の5分の1の量である。(参考:The Geysers http://www.geysers.com/) 

2.熱湯の利用

 地中で暖められた水を特設パイプを通して送り、農地や都市部で熱源として利用。例えば、野菜や植物を育てる温室、食物の乾燥、栽培漁業の養殖場、そして北部の都市では、道路の雪を溶かす作業などに利用されている。

 都市での利用の例として、「Geo-Heat Center」(オレゴン工科大学によるジオサーマルエネルギーの研究所)があるクラマス・フォールズ市で、高速道路の凍結防止などに使われている。その他、ワイオミン州でも、一部この技術を利用しているところがある。(参考:Geo-Heat Center

3.ヒート・エクスチェンジ

 地表から10フィート(3メートル)くらいのエリアは、大抵どこでも10~16°Cくらいの安定した温度が保たれている。この性質を室内温度の調整に利用する仕組み。
 建物の近くに埋められた「ヒート・エクスチェンジャー(熱交換器)」を通して、冬場は室内に比べて温度が高めの地中の熱を室内に送り、夏場は室内に比べて温度が低めの地中に室内の熱を逃がすことによって温度調整をする。アメリカ国内ではだいたいどこでも、家庭、学校、自治体などの単位でこのように地熱を利用するのに適した環境にある。(参考:Renewable Energy World


The Energy Blogより


 これは、「The Energy Blog」によるアメリカ合衆国のKGRA(Known Geothermal Resource Area /地熱資源の存在が確認されているエリア)の地図。赤は、地下6キロ地点の温水の温度が100℃以上で、発電(利用法1)の可能性があるエリア。オレンジは、100℃以下で熱湯利用(利用法2)の可能性がある。灰色のエリアはヒートエクスチェンジ(利用法3)の可能性があるところで、「全米どこでも」とある。

州レベルの取り組み:オレゴン州の例

 オレゴン州南部のクラマスフォールズは、数十年前から地熱利用をしている自治体の例として知られている。
 クラマスフォールズ市における地熱ヒーティングの供給は、1981年に14の政府関連の建物と120の住宅を対象に始められた。当初は使用可能なヒーティング能力に対して売り上げが少なすぎ、システム自体を維持していくことができなかったため、地元自治体で費用を安くする(地熱ヒーティングがガス利用に比べて約50%のレートで一律の料金を導入)などのインセンティブを加え、一般世帯と企業の両方で地熱利用を広める努力を行った。(参照: Northwest Community Energy

 現在クラマス・フォールズには、市の「地熱ヒーティングシステム(Geothermal Heating System)」用に、行政が管理している2つの地熱源泉の他に、民間企業により管理されている地熱源泉が600以上ある。
 市の地熱ヒーティングシステムは、24の商業・政府用の建物の暖房、4箇所の野菜や種苗飼育用の温室(合計面積約1万8580平方メートル)、そして道路や橋(合計面積約5570平方メートル)の融雪のために使われている。

 また、「行政区ヒーティング・システム(District Heating System)」(約2.8キロの温水パイプラインと市内3箇所にある熱交換器による熱の供給システム) を通して、市の中心部のほとんどで施設の暖房や歩道の融雪用の熱を提供している。

 クラマス・フォールズ市による地熱に関する概況報告書によると、現在地熱ヒーティングと天然ガスによる同等のヒーティング効率を比べると、地熱の1サーム(熱の単位)あたり約$0.87に対し天然ガスは$1.37と、60%ほどの費用削減効果がある。

 2009年のデータによると、人口21000人のクラマスフォールズで地熱ヒーティングを使用しているのは1000世帯で、各世帯の地熱ヒーティングにかかる費用は年間100ドル。オレゴン工科大学とSky Lakes Medical Center(医療施設)でも地熱ヒーティングを利用していて、天然ガス使用の場合に比べて年間50万ドル近くの費用をうかせている。(参考:AssociatedContent「Geothermal Energy Resource Area - Klamath Falls」)

 2010年に発表されたインタビューで市政担当官のJeff Ball氏は、「地熱がグリーンな(環境に優しい)エネルギーだなんて、当初は知らなかった。ただ、理にかなっているから利用しているんだ。」と述べている。(参照:シアトルタイムズ「Oregon town uses geothermal energy to stay warm」)

クラマス・フォールズ市の公式ウェブサイトより。歩道に積もった雪を溶かすために地熱による融雪システムが使われているエリアで、「サイドウォークで目玉焼き」。


 クラマス・フォールズ市で融雪システムなどに活躍している地熱エネルギーだが、オレゴン州全体では、州や郡の自治体のいくつかの建物、公営プールやリゾート地での使用、そして工業用の使用に限られている。

 地熱エネルギーを発電に生かす方法は、州内の数箇所で検討されてきたが、環境・野生動物保護地域への影響に関する懸念や、開発に必要な費用の確保が遅れたことなどを原因に、まだ実現にはこぎつけられていない。持続可能なエネルギー資源の開発を、自然保護、野生の生態系の保全と両立させることも、州政府が直面している課題である。

 一方、2010年以降の合衆国連邦政府による奨励金*を通して「国産の」エネルギー資源開発を支援する動きは引き続き見られる。クラマス・フォールズの例を参考に、KGRA地域の自治体は、地熱利用を本格的に取り入れていくインセンティブがあるのではないか。

*連方政府の奨励金は3.3億ドル(約2.7兆円)以上地熱利用の分野に投資している。


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