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森を壊さないカレーを食うために ~パーム油フリーカレー~

森なしに生きられない Vol.1

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伴昌彦 東京都
day
2007-03-30
 

 固形のカレールーは安くて調理も簡単。しかし、ふと原材料に「牛脂」が入っているのを見て気になった。産地表示がない牛脂に米国産のものが混入している可能性はないのか?カレーを食って狂牛病になる確率など宝くじで一等が当たるより低いだろう。とは言え、米国牛輸入再開が決められた過程の怪しさを思うと、素直に米国牛を食わされるのも悔しい。

 では他に選択肢があるのか?と探してみると、わざわざ「牛肉関連原材料不使用」と銘打ってパーム油を使用しているものもある。しかし、この「パーム油」がまた問題なのだ。パーム油の原料になるオイルパーム(油ヤシ)のプランテーション(農園)は以前から熱帯雨林破壊の原因の一つとして批判されている。BSEも熱帯雨林も気にせず食べられるカレーはないのか?

 パーム油の現実

 そんなカレーを探す前に、パーム油と熱帯雨林の関係を見ておこう。カレー、ラーメン、アイスクリーム、チョコレート・・・市販の食品の多くにはパーム油が使われている。洗剤などにもよく使われ「植物性=生分解性が高い=環境に良い」という連想から「地球に優しい」と宣伝されることもある。

 しかしパーム油は意外と人と地球に厳しい。オイルパームのプランテーションは熱帯雨林の破壊、汚水による河川の汚染、地域住民との土地を巡る紛争、労働者の人権侵害などを引き起こす環境・社会問題の見本市なのだ。
 パーム油は食品や工業製品などに広い用途に使われ、安価で年間を通じて収穫できるため世界中で消費が増えている。昨年の生産量は3300万トンに達し、大豆油を抜いて世界の植物油生産量1位となった。日本でも1996年の36万819tから2005年の47万8979tと、10年間で輸入量は10万t以上増えている。※1

  油ヤシの栽培には高温多湿の熱帯地方が適している。マレーシア、インドネシアが世界の2大生産地となっているが、ここは減少し続ける熱帯雨林が分布する地域でもある。油ヤシのプランテーションには広大な面積が必要で、平均面積は東南アジアでは100~250k㎡。最低でも30 k㎡が必要とされる※2。 30 k㎡と言うと東京都だと府中市くらいの広さ。そんな巨大なプランテーションがバカスカ作られれば、当然森もなくなる。

 また、プランテーション開発による火入れが森林火災を引き起こすことや、開発の名目で違法な森林伐採が行われることも多く、森林の喪失に拍車をかけている。
 熱帯雨林には多くの絶滅危惧種を含む多様な生物が生息しているが、プランテーションには勿論、オランウータンもゾウもトラもサイも住めない。熱帯雨林がプランテーションに転換されると8割から10割の哺乳類、爬虫類、鳥類がいなくなると言われている※3。

 こういう話には、「人間と動物とどっちが大切だ」とか、「発展を犠牲にして自然を守れなんて言うのは先進国のエゴだ」とか思う人もいるかもしれないが、熱帯雨林の破壊は、「地球環境」問題であると同時に、現地の人々にとってはダイレクトに自分達の命を脅かす問題でもあるのだ。

プランテーション


 マレーシアやインドネシアには現在も森林の資源から生活の糧を得ている人々が大勢いるが、先住民族など社会的立場の弱い人が多い。彼らの土地に対する権利は国内法でも認められているが、プランテーション開発の際にはしばしば軽視される。インドネシアでは開発に反対する地域住民と開発企業との諍いが頻発し、命に関わる紛争に発展することもある。

  1998年から2002年の間だけで、インドネシアではプランテーション開発から共同体の権利を守る争いのために479人が拷問を受け、土地保有権を巡る紛争で数十人が命を落としている※4。

 また、油ヤシプランテーションが導入されると、農村の人々の生活は大きく変わってしまう。小規模農家が油ヤシ農園自立的に営むのは難しく、搾油工場を持つ大資本の企業に依存せざるを得ない。事前に十分な情報を得た上で住民がプランテーション開発を望むのならやむを得ないが、必ずしもそうではない。更にプランテーションではしばしば労働条件が劣悪だったり、労働者に農薬による深刻な健康被害が出ていたり、児童労働などの問題があることも指摘されている。

 全てのプランテーションに問題があるわけではなく、まともな経営をしているところもあるが、どんな農園で作られたパーム油も製油の段階では一緒くたにされてしまう。

 パーム油フリーカレー

 さて、ここで話を冒頭のカレーに戻すが、この問題山積みのパーム油を使っていないカレーを食べる方法はあるのだろうか。ネットで検索してみると国産小麦にこだわった商品でもパーム油が使われていたりして、なかなか油にまでこだわったルーはみつからない。フェアトレードのカレールーにさえ、パーム油が使用されている。

 ようやく無農薬や無添加にこだわって国産菜種油を使用したカレールーを販売している会社をみつけたが、会員にならないと購入できない等、ハードルが高い。パウダー状のカレールーも殆ど牛脂かパーム油入り。それならもう即席のルーには頼るまいとカレー粉を買ってみた。まず肉、野菜を炒め、続いてレシピによれば、炒めた具にブイヨンを加えて煮る。だがブイヨンは勿論パーム油で固めてある。

 というわけで代わりに煮干と醤油で煮込む。次にいよいよカレールー作り。フライパンにしいた油に小麦粉を入れて弱火で炒め、きつね色になったらカレー粉を加えて混ぜる。このルーを入れるとさっきのスープがカレーに早変わり。最後にケチャップや塩、ソースなどで味を整えて出来上がり。適当に色々ぶちこんだので一期一会の味だが、そこに即席カレーとは違った味わいもある。


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都市農地を活用する試み(2)-こだいら菜の花プロジェクト
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空飛ぶモニョンゴロ村

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