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東日本大震災

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フィンランドで福島原発事故はどう見られたか

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靴家さちこ フィンランド/ケラヴァ 
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2011-04-23
 

 東日本大震災の発生間もなく、日本人である私に「大丈夫?ご家族は無事?」と声をかけ、抱きしめてくれる人が多かったフィンランド。国民の約9割がキリスト教というこの国では、「既に傷ついている人は責めない」という博愛精神の元、東電福島原発事故に関して、日本の責任を個人に問うような人は一人もいなかった。

 しかし、事故の経緯が報じられるにつれ、福島からの放射能の飛来を恐れた市民が、ヘルシンキなどの薬局から安定ヨード剤を買い占めるパニックが生じ、改めて25年前のチェルノブイリの放射能が森のきのこから検出され続けているという事実も報じられるにつけ、「もはや日本だけの問題ではない」と硬い表情で放射能汚染を話題にする人が増えてきた。

 余談だが、フィンランド在住のベトナム難民によると、ベトナムでは福島原発から大量の汚染水が海に放出された際、塩の買占めのパニックがあったそうだ。「黙って流しちゃダメじゃない」とベトナム人は憤る。

 過剰反応かもしれないが、これだけの国際問題に発展する事故を起こした国の国民として、肩身が狭く感じる日々が続いた。3月11日以来、原発関連の日本とフィンランドの報道を見比べながら情報を追う日々が続いている。

フィンランドのメディアの反応

 事故発生後、まず、フィンランドの原子力保安院(STUK)のラークソネン所長は、日本政府の危機管理の甘さと東電の官僚主義を非難。フィンランドのマスコミ各社では、日本の行政は「体面を守る為に情報を隠ぺいするだろう」という見通しが付けられた。

 民放のMTV3はSTUKの見解を元に、日々危機感を煽る報道を繰り広げてきた。STUKからは局員一人が、広島に移動した在日フィンランド大使館に派遣されており、日々刻々日本からの最新情報や新しい見解をアップデートしている。STUKは炉の水が空炊きになることも想定して、日本のメディアよりも早い段階で塩の結晶が冷却の妨げとなることを指摘し、炉の冷却に海水を用いることへの警告を発していた。

 フィンランド国営放送(YLE)からは、MTV3より少しトーンを落とした中立な報道が続き、全国紙ヘルシンギンサノマットは、「日本の行政を信じる」と言う、在フィン邦人に取材したり、「実は良く似ている、日本とフィンランドの国民性」などという特集記事を出したり、ちょっと日本に寄り添った記事も出していた。
 その一方で同紙は、前IAEA事務次長のオッリ・ヘイノネン氏にも取材しており、氏は3月14日の時点で日本の状況を分析し、「フィンランド人は国外退去した方がいい」とコメントしている。

 日本にも住んでいたことがあるヘイノネン氏は、損傷があるとされる日本の原発全てを訪問した経歴があり、余震でさらにそのダメージが大きくなることを懸念しているとも発言。現在在籍中のハーバード大学の学内ニュースの動画※で、氏は「放射能に国境は無い」「いずれは日本だけの問題ではなくなる」と穏やかながらも、厳しい口調で日本政府の対応を非難している。まるで全てを見透かしているような、鋭い眼光が印象的だ。


※3月15日のハーバード大学政治大学院のホームページに掲載されたオッリ・ヘイノネン前IAEA事務局長の動画

フィンランドのエネルギー事情

 北海道の総人口よりやや少ない530万人が住むフィンランドには、日本の約9割の国土面積に2か所の原発、4基の原子炉が設置されている。長い冬の寒冷な気候と暗さと、製紙・パルプ産業に支えられた国の経済事情からしても、国民一人当たりおよそ16,000 kWhという大量な電力が必要とされ、電力の30%は原子力に頼っている。
 フィンランドは、欧州ではフランスと並ぶ原発推進国であり、3.11以前から予定されていた1基の原子炉も、現在建設計画がされている原子炉2基も建設は予定通り続行されている。

 放射能の危険は良く知られているものの、原子力ベースの電力は廉価であるという考えが広く共有されているフィンランドでは、北緯60度前後と高緯度な地形でオゾン層破壊の脅威にさらされている為、CO2を排出するエネルギーへの後戻りは許されない。
 ウランも国内に埋蔵しており、天然ガスや石油をロシアの輸入に頼るのは、政治的にもできるだけ避けたいという事情がある。さらに硬い岩盤に覆われ、体感できないほどの地震が年に数十回起こるだけという地形上、地震への脅威は無い。

 ゆえに、地震大国の日本では原発はすぐにでもやめるべき――でもフィンランドの事情は別の話、というスタンスを取っている。福島原発事故直後には、フィンランドの既存の原子炉には安全装置(電源)が日本の2倍から3倍取りつけてあるので安全性が高いことと、フィンランドの岩盤は固く、日本のように大きな地震や津波は起こり得ないということが繰り返し報じられてきた。

 しかし、地震が無くても、動作ミスや故障が全く起こらない保証はどこにもない。テロの標的に原発が選ばれたらと、地震が無くても原発は危険という認識を持つ人は少なくない。北部のオウルでは小規模な反原発デモがあり、追ってグリーンピースの職員3名が、オルキルオト原発内部に潜入する過激デモも発生した。これまでにも反原発の立場を取ってきた緑の党も、ヘルシンキ中央駅の広告塔に反原発を訴えるポスターを表示し、改めて反原発の意を表明した。


 福島原発事故後まもなく、ハロネン大統領が示唆していた通り、フィンランド政府は原発に代わる再生産エネルギーの開発に力を入れ始め、3月末には総発電量のわずか0.3%を占める風力発電を、2020年までには総電力量の6%の2500MWまでに引きあげる目標を掲げた。ドイツほど脱原発の動きは際立っていなくても、新エネルギーの模索の動きは前進中だ。


フィンランド小学校事情 Vol.4
フィンランド小学校事情 Vol.3 ~時間割と教科編(母国語)
フィンランド小学校事情 Vol.2 就学前教育編
フィンランド小学校事情

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