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デンマークのエネルギー供給について

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荒川美和子 コペンハーゲン、デンマーク
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2011-06-30
 

 デンマークでは環境に対する意識が非常に高く、国民1人1人の意識に根付いていると感じる。デンマークと言えば、風力発電やソーラ(太陽光、太陽熱)発電が非常に盛んなことでも有名である。そんなデンマークでのエネルギー供給について紹介したいと思う。

 デンマークでは元々、約90%の電力を海外のアラブ諸国からの石油による火力発電に頼っていた。しかし、1970年代のオイルショックに対して、脆弱な供給構造であった苦い経験と、1960年代に開発された北海油田(イギリス、ノルウェー、デンマーク、オランダ、ドイツ諸国の経済水域内)の採掘作業が思うように進まなかったことが相重なり、自然エネルギーを中心とした電力供給へと方向を変えてきた。

 その結果、現在のデンマークのエネルギー使用は、石炭42.5%、天然ガス18.5%、風力・水力・ソーラー(太陽光、太陽熱)20.5%、家畜肥料などバイオマス燃料11%、北海油田からの石油3.5%、原子力が4%という比較的バランスの取れた構成になっている。

 実際にデンマークで生活をしていると、北欧は、EUという枠の中にありながら、日常品や街にあるお店などを始め様々な面でスカンジナビア諸国との結束がより強いと感じることが多い。エネルギーに関してもお互いに、国の余剰電力分を輸出し、不足分を輸入しあっている。デンマークの大凡の年間発電量は391億kwhで(日本は約1兆1337億khw)、近隣諸国からの電力輸入量は約1.64億khwである。

 現在、国土の狭いデンマークに対し、北海油田からのオイル供給率は100%を越えているため、多くは海外に輸出されている。

 デンマークは原子力発電所を持たないが、原子力発電が40%以上を占めるスウェーデンや、90%以上が水力発電であるノルウェーから電力を輸入している。こうしてノルウェーやスウェーデン、隣国ドイツも加えて、上記のようなエネルギーの輸出入を行い、デンマークでは、2000年以降、従来の2倍に電力輸入を増やしている。

 こうすることにより、デンマークは自国の総発電力を押さえ、CO2排出の減少に成功している国でもある。しかしながら、このCO2排出減少に対するデンマークの政策はEU圏内からは賛否両論がでており、デンマークが国内発電力を減少させ、電力輸入量にいっそう頼ることにより、近隣諸国のCO2排出量を増加させただけだと批判する声もある。

デンマークのエネルギー企業

 まず最初にデンマークには、電力企業について133以上の送電会社(送電組合を含む)があり、消費者と契約を行う電力契約会社が50社ある。デンマーク最大の電力契約会社である、DONG Energyは、DONG、 Elsam、 ENERGI E2、 Nesa、 Copenhagen Energy、やFrederiksberg Forsyningといったエネルギー会社の公社と私企業の合併によって2006年に設立された。

 DONG Energyは本社デンマークを始め、ノルウェー、スウェーデン、ドイツ、オランダ、ポーランドやイギリスなどヨーロッパを中心に拠点があり、オイルや天然ガス、風力、原子力といった様々なエネルギーを供給している。

 2005年には電力の自由化が本格的に始り、自由競争による電力価格の低下、エネルギー供給の効率化や多様化が期待された。しかしながら実際には、DONG Energyの一人勝ちというのが現実である。

 ただ、インターネットで郵便番号を元に各エネルギー会社の単価や年間見込み額が、検索出来るなど、少しずつ競争が出て来ている。デンマークでは、それまでの慣習を変えたくないという人々がとても多いのだが、徐々にその意識も変わっているのかも知れない。

 実際の生活の中で、どのようになっているか、我が家のDONG Enegyを例にして説明してみようと思う。まず前年の電力消費量をもとに、今年度の消費量見込み額が決定する。そして実際に消費した金額が、見込み額を上回る場合には、追加に請求され、下回る場合には、返金される仕組みになっている。

 デンマークでは、国全体で電気消費量が多い時間帯は、単価が下がり、反対に消費量が少ない時間帯には単価が上がる少々複雑な価格設定になっている。加えて、居住地域により多少の電気代の平均単価の違いはあるが、イメージしやすいよう実際の数字で見てみると、電気使用料が0.62 DKK (デンマーク クローネ)/kWh(キロワット時)で日本円で約10.12円/kWh、年間の電気接続料が、150DKK(約2,410円)となっている。

 我が家のアパートメントの屋根には1980年代に設置された太陽熱温水器があり、現在修復中である。この設備は、洗面や家事などの給湯時の加熱に使われる。ソーラーに繋がっている大きなタンクが地下室にあり、太陽熱でも通常の電力でも水を温められるようになっている。このソーラーはアパートメントの共同体が所有している。共同体はアパートメントの住人で構成されているので、住人が共同所有していることになる(デンマークでは風車やソーラーの90%弱を、個人や共同体が所有している。)

 アパートメントのソーラーの修復が終ると、天候には左右されるが、アパートメント全体で1ヶ月につき約30%~60%電気料金が安くなる見込みだという。夏以外は天気が余りよくなく、冬が長いデンマークではソーラーだけに頼るのは、なかなか難しいが、通常の発電形態の補足として充分に活躍してくれる。

エコタウンで有名なサムソ島

 デンマークの気候では、風力やソーラーの発電のみに頼るのは難しいと前述したが、風力・ソーラー・バイオマス燃料などの自然エネルギーのみで100%発電している地域がある。サムソという小さな島だ。昨年の夏に休暇で訪れたのだが、面積114平方キロメートル、人口4300人程度のとても小さな島で、海の水が本当に綺麗だったのをよく覚えている。

 デンマークでは高値で取引のされるサムソというブランドジャガイモや、苺の産地、また歴史的にはヴァイキングの会合場所だったり、イギリス艦隊を撃退した拠点としても知られている。近年では100%電力自給のエコタウンとして世界中に知られるようになり、エネルギー関係者や研究者などの専門家のみならず、環境に対して高い意識を持つ一般の人々も訪れている。

 島のホームページや観光用の小冊子では、全面的にエコタウンを打ち出している。サムソでは、テーマパークや観光土産店などで短期的経済効果を求める代わりに、ジャガイモ狩りや苺狩り、釣りや乗馬、地元の展示館や史跡見所など、地元の歴史に根付きつつ、自然との共存を楽しめるような観光誘致をしているのが印象的だ。


 この島では、非常に多くの家の屋根にソーラーパネル(太陽光と太陽熱)が設置されている。また陸洋上に建設された21基の風車や、酪農地域ならではのバイオマス燃料による自然エネルギーで島全体の需要をまかなっている。
バイオマス燃料では、化石燃料を使用しないことで、CO2の削減に成功した上に、暖房料金が半減したという。こういった風車、ソーラー(太陽光・太陽熱)やバイオマス燃料などの装置は、全て島民が所有している。

 風車で発電した電力は、電力会社が全て、法に基づいて買い取り、その後配当として所有者に還元している。小さな島だからこそ強い島民の絆と、島民一人一人の環境に対する積極的な姿勢、そして、国や自治体の支援が、いっそうサムソ島民一人一人の意識を高めていくのではないかと感じる。

デンマーク人と風車

 コペンハーゲンの都心部・人口海岸や、コペンハーゲンから電車で30分程離れたスウェーデンのマルモに行く途中の洋上では、力強く回る沢山の風車を見ることが出来る。

 デンマークの風力利用には200年の歴史がある。デンマーク人に、何故デンマークでは風力発電がここまで発達しているのかを聞くと、皆口をそろえて言うことがある。第一に、デンマークの国土はオランダ同様に起伏のない、見渡す限り平坦な地形をしているから。丘や山があると、自然風が山に当たり、風力を一気に落としてしまうが、平地で自然風を最大限に活用できるのが利点だそうだ。

 第二に、デンマークでは風の方向が70~80%一定であり、同じ方向からの風が確保できる地理的条件が揃っている。しかしその低平な地形は、ノルウェーのような水力発電には向かないという。


 風力発電が身近であるデンマーク人は、風力発電の利点をふまえた上で風力発電の問題点も指摘する。都市部では、風車の騒音や、回転軸から発生する低周波音で周辺住民の体に悪影響を与える。また、洋上に風車を建設する際には、海中深くまで建設作業を行わなくてはならないため、国をあげての環境対策の一環として風力発電を進めているが、実際には環境に優しくないのではないか、と疑問を呈するデンマーク人も少なくない。

 これは風力発電に関してパイオニアの国々の国の一つとして、深い知識や技術、そして経験が揃っているからこそ、長所短所を客観的に捉えて発言できることなのかも知れないと感じる。

注:デンマークでは、オランダ等と異なり、消費者はグリーン電力を選択することはできません。デンマークのエネルギーシフトは、電力自由化以前に実施された、炭素税(環境税)や自然エネルギーへの助成金によって推進されたものです。


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