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バンコクについて、手短に

leader from from
Carbusters Czech Republic 香野美里 東京
day
2011-08-25
 

  短い休暇を過ごすために滞在しているバンコクのホテルで私はよく、窓の外の狭いソイ(タイ語で「車線」のこと)をゆっくりといく往来の流れを眺めている自分に気付く。タクシー、乗用車、トゥクトゥクやバイク、驚くほど沢山のバンやSUV、ランブータンを積んだ荷車を引く行商人、自転車に乗った人々、そして 多くの歩行者たち(大抵は雑貨を抱えて歩いている)が見える。歩いている途中ふと立ち止まって、私のいるホテルの真横にある寺社へお参りをする人々がいる。

Bangkok - Debra Efroymson


 長い白髪を頭の片方へ横分けにしている太りすぎの老人が、外に出してあるテーブルでの朝食を終えて立ち上がり店内へとのんびり戻っていく姿が見える。手押し車を押している男性を女性が呼びとめ、アイスコーヒーを作ってもらっているのが見える。

 犬がぐるぐると弧を描きながら走り回り用を足し、餌用の米の入った葉皿を持った女性を後をついて猫が現れる。人々の国籍は様々で、当然のことながらタイ人が大半を占めているとはいえ、アフリカ人、イ ンド人、アラブ人、その他アジア人そして時折、西洋人も見かける。

  こんな風に眺めていると、そこに車のない光景を想像するのは難しいことではない。なにせほとんどの人が車に乗っていないのだ(子供を見かけることはあるが、おそらく学校との登下校にバンに乗ってソイを通り抜けるだけだろう。それにしても、彼らは週末はどこにいるんだろう?)。近所は雑多で活気に満ちていて、た いていの外出は徒歩か自転車で済ませられることはたやすく想像できるし、バス、スカイトレイン、それに最新の「BRT」バス・ラピッド・トランジットなど、様々な交通手段が近場に整備されている。

  交差点には問題がある。車が通過するタイミングがきちんとあるような場所もあるがそれはカオスの中のごく一部で、複雑に入り組んだ交差点にはたくさんの分岐点がある。それなのに、歩行者が渡るタイミングを知らせる信号などそこにはなく、交差点に曲がってくる車の流れが止まることはなかなかない。すきを見つけて「よし安全だ」と思って渡ろうとしても、タクシーやバイクが別の曲がり角から飛び出てくる。

 大通りを渡らないようにすれば人生はずっと安全なものになるだろうに、とは思うが、そうしてしまうと素敵な南インド料理のレストランやスカイトレイン、それに楽しくて人気のルンピニー公園など、全て歩いて20分程で行けるそういった場所への道が閉ざされてしまう。(公園へは、メトロの駅地下を通り抜けて地上へ上がるというのが私の見つけた最も安全な行き方だ。数分余計にかかってしまうし、途中、金属探知機を通過しなければならない。公園の入口に歩行者用の歩道を設けるべきだと、誰も考えなかったのだろうか?)

  こんな現状にもかかわらず、私はこの町を楽しんでいる。主要道路を渡った先にはインド寺があり、道路のこちら側にはチベット聖歌をひっきりなしに流しているCD ショップがある。行商人やありとあらゆる小売店、そしてレストランは至る所にある。これがないとどうにも一日が始まらないくらい毎日飲んでいるちょっと すっぱいマンゴージュースや、ジューシーなカンタロープ・メロンにはいとも簡単にありつける。

 車やタクシーに乗らずして街を歩き回るのは朝飯前。私としては、熱心な車信仰、安全な歩行通路の欠如、ルンピニー公園内の駐車場、立体駐車場の馬鹿馬鹿しさを受け入れる方が簡単だ。なぜなら、私の知る限りバンコクはずっとこんなだし、第一、私はここではただの訪問者なのだ。

  だからある面、その高架上の高速道路や駐車場の存在をもって、バンコクは救いがたい街だなと感じる。その反面、密度が濃く多様な構造であるという点では、バンコクは車いらずの街としての仕組みをもっている。通勤距離を縮めることで住居の価格が下がると、何層もの駐車場が手ごろな値段の住宅にとって変わるだろうと想像できる。BRT制度が拡大されると、中心街での車の利用が減るだろう。平らな街だから自転車を乗るには適しているし、事実、すでに多くの人が車道を走っている。

 ガソリンの価格はここでは大した影響力をもたないかもしれないし、もつかもしれない。肥満は増加の一途を辿っているが、それを問題視する人が増えているかは定かではない。 交通渋滞は金のかかる問題だと長くとらえられてきたが、政治家たちはもっと低コストで気の効いた解決策を講じるのを避けてきた。より安価なBRTの拡充をするのにスカイトレインやメトロよりもはるかに時間がかかったのは、それが車用のスペースを奪ってしまうと理解されてきたからだ。

  何があろうと、私はいつだって希望をもてる。現行の政治的危機は、国家の富を市街地にばかり集中させ地方(または都会のスラム街)を救おうとしないやり方は、平和への良いレシピではないということを示唆している。バンコクで、また、その他の国や町で、政府の補助金の矛先が車ではなく人々に向うようになればどんなことが可能になるか想像してみてほしい。

–Debra Efroymson / Car Busters


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